17 平穏な日
日刊で3位に入って恐れ多いけど嬉し限りです
つたない作品ですがよろしくお願いします
朝部屋をノックされる音で目が覚めた。
「おはようかずくん起きてるー?」
「今起きた。着替えるから少し待っててくれ」
「わかったー」
いつも起きるのは8時ぐらいなので、いつもより1時間も早い。
どこか行かないか心配してたからなぁ、と思い手早く準備した。
「おはよう」
「おはようかずくん」
ドアを開けるとそこには楓も居た。
「おはよう水木君……」
何故か、楓の顔が赤い。
「神崎も居たのか、おはよう」
あかりが楓を促している。
「ほら楓ちゃん」
「でも……」
あかりが、楓に耳打ちした。
「もう……じゃ、あ楓ちゃんは不戦敗ね」
「そんな……でも」
こそこそ二人で話をしている。
このままでは、らちがあかないと思い、
「あー2人共どうしたんだ?」
と、こっちから聞いてみた。
「あのねかずくん」
あかりが声をかけて来たが
「ん?」
楓があかりにストップをかけて、一歩前に出た。
「あかりちゃん自分で言うよ」
決意を込めた目であかりにそう答えた。
「頑張って」
またあかりが、楓に耳打ちしてから一歩下がった。
「あのね水木君……地下でしばらく一緒に居たじゃない?」
「ああ」
「それでね私達前より仲良くなったと思うんだ……だからね、今度から名前で呼んで良いかな?」
「えっ!?」
いきなりの問いかけに驚いて思わず声をあげた。
「ダメ?」
上目づかいでこっちを見てくる。
(神崎よそれは反則だ……)
「いやダメとは言わないけど……みんなが何て言うか」
チラっとあかりを見る。
「かずくん私は良いと思うよ。それにみんなは関係ないよ、本人達の意思だし」
ハァとため息をつく
「分かったよ神崎好きに呼んでくれ」
「ありがとう和也君!」
ぱあっと花が咲いた様な笑顔になる。
「それと、私の事は楓って呼んでね?」
「……いやそれは流石に」
(そっちまでOKすると、色々大変な気がする……もう遅いかも知れんが)
楓を名前で呼ぶことに躊躇していると、あかりの雰囲気が変わった。
「かずくん……なんで呼んであげないの」
なんだか視線が怖い
「いやだってそれは……」
楓は上目づかいでこっちを見ている。
あかりは、鋭い視線でこっちを見ている。
「……わかった呼ぶよ」
和也は二人の雰囲気に気おされてこう答えるしかなかった。
「じゃあはい。呼んで?」
「楓……これで良いか?」
「うんありがとう!」
さっきと同じ良い笑顔で楓が嬉しそうに答えた。
(あれ?これって尻に敷かれるってやつか?……まあいいか)
「じゃあこれから、三人ご飯食べに行こう?」
「ああ」
するとあかりが右腕、楓が左腕に腕をからめて来た。
「おいこれは流石に!」
「「良いから良いから」」
実に嬉しそうな笑顔で、ずるずると引きずられて食堂に連行された。
食堂には人はまばらだったが、こっちを見た奴はみんな目を丸くしてた。
絶対噂が広まるんだろうなー
朝飯を食った後、少し食休みを挟んで訓練を開始した。
「かんざ……楓は光チームの方は良いのか?」
あかりと楓、二人に睨まれたので言い直した……怖かった
「別に、絶対あっちでやってるわけでも無いから平気だよ」
「そうか」
「邪魔?」
また上目づかいでお伺いを立ててくる。
「いやそんなことは無いぞ。ただ、ちよっと気になっただけだから」
(だから神崎さんそれは反則だってば)
「じゃあかずくん訓練はじめよ。どんな訓練するの?」
「そうだな。レベルで強くはなるんだろうけど、スキル使っても負けない持久力と、頭がついていけるように使い込む感じかな」
俺は自分の訓練方法を答えた。
「私は、仲間にした魔物をもっと上手く操れる様にかな……チロ以外にも仲間も増やしたいし」
(あかりはやっぱり魔物関連か。もう少し色々使える様になったら、どっか行ってみるのもありかな?)
「私は……攻撃魔法とかは里香ちゃんとかに聞くから、和也君生活魔法教えてくれない?」
(そう言えば生活魔法覚えたいって言ってたよな)
「ああ良いぞ。でも使えるかは知らないぞ?」
「うんそれは練習してから考えるよ」
「あっそうだあかり。これやるよ」
と、30層で手に入れた王女様の鞭を、異次元ポケットから出した。
「これは?」
疑問に思いあかりが聞いてくる。
「30層の宝箱で手に入れたんだ。王女様の鞭って言って、魔物を仲間にするときとかに役立つらしい」
鞭の説明をしてあかりに手渡した。
「ありがとう良いの?」
あかりは嬉しそうに鞭を眺めている。
(鑑定した時に見た、調教の文字が色々な意味で気になるが……俺には使えないしな)
「俺が持ってても役に立たないからな」
「うん使わせてもらうね!」
(嬉しそうなあかりも見れたし良いか)
そんな感じでそろそろ訓練を開始しようかと思っていたら、いつも通りの篠塚がやってきた。
「今日は早いね夢野さん!……また水木も一緒か。あんまり俺達の邪魔すんなよ!?」
(まあ面倒だから無視だな)
そう思っていると、二人も同じらしく無視をして訓練する。
「今日は神崎さんも一緒なんて嬉しいな!……そうだ!能代が神崎さんと色々話したいみたいなんだよね。もしよかったらあいつ呼んでも良いかな?」
「いえ呼ばれても困ります」
楓は、この言葉にはつい反応してしまった。
「そんな事いわないでさ!俺と夢野さん。能代と神崎さん。ちょうど数も合うし良いと思うんだけど!?」
(あれ俺は?と、思わず心の中で突っ込みを入れてしまったぞ……しかし相変わらず人の話を聞かない奴だな)
このままではと思い、迷惑そうなにしている二人に声をかけた。
「あかり楓、こいつには何言っても無駄みたいだから、そろそろ行こうか」
少し毒を混ぜて言って、二人を促した。
「うんそうだね。篠塚君そう言う事ですので失礼します」
「私も失礼します」
一応挨拶をして、あかりも楓も俺の方に寄って来た。
「おい水木!夢野さんと神崎さんの名前呼び捨てとか頭平気か!?」
(いや、お前が頭平気か!?……またもや突っ込んでしまった)
「俺は平気だよじゃあな」
「おい待てよ!!」
後ろでギャンギャン騒いでたが、無視して訓練場を去った。
「ふう。これじゃまともに訓練出来ないなぁ」
訓練所を出て思わず漏らしてしまった言葉に
「ごめんね……」
「ごめんさない」
二人は自分に責任があるみたいに謝って来た。
「いや、二人が謝る事じゃ無いさ」
「どっか良い場所無いかな?」
「俺に少し考えがあるから、ちょっと考えてみる」
(まだ出来るとは限らないんだけどな)
「うん。ところで今日はこの後どうする?」
楓が聞いてきた。
「楓は委員長とかに魔法習うんだろ?あかりも一緒にもう行って来たら?」
覚えるなら早い方が良いだろうと思い、あかりと楓にこう促した。
「そうしようかな……」
「かずくんは?」
と言うあかりの問いかけに
「俺はアンリエットさんにお願いあるから最初そっち行って、その後スキルの開発かな」
その言葉を言った途端、二人の眉がピクッと動いた
「「私たちも行く」」
声を合わせて言ってきた。
「は?」
思わず疑問をかえすと
「アンリエットさんの所に私たちも行くから……いいよね?」
二人に上目づかいに見られた。
(二人同時は更に破壊力が……)
「あ……ああ良いんじゃないかなぁ」
思わずこう答えて、なんか冷や汗が出た。
「そう言えばかずくん?アンリエットさんはなんでかずくんを様つけで呼ぶのかなー?」
あかりが少し機嫌を悪くしながら聞いてきた。
「いやだから、この前言った通りなんか期待されてて、最初に様つけで呼ばれて、その後もそのまま呼ばれてるだけなんだよ」
と答えた。答えるしか無い雰囲気だった。
(つーか俺だってなんでだか知りたいわ!)
「「ふーん」」
二人同時に答えてきたがなんか怖い。
「だから彼女にも他意はないだろうと思うぞ」
と、思ったことを口に出したが
「そうかなーまあいいや行こ?」
あかりに促されてアンリエットさんの部屋についた。ノックをして部屋に入る。
「はいどうぞ」
中からアンリエットさんの声がかかったので、中に入った。
「アンリエットさん失礼します」
中に入ると、アンリエットは嬉しそうな顔をしたが、
「カズヤ様!……と、カエデさんとアカリさん」
後の二人を見て、少し残念そうな顔をした。
(そういう顔するから俺が疑われるんだ!)
「「失礼します」」
ドアの前でお辞儀をして二人も部屋に入ってくる。
「今日はどうされました?」
アンリエットが和也を促した。
「えっと禁書庫って入れませんかね?」
アンリエットは少し思案して
「禁書庫ですか……あそこは重要な本がいっぱいありますので、申請すれば入れますが、すぐには無理かも知れません」
こう答えた。
和也は、まあそうだろうなと心の中で思い
「そうですか、ならとりえあず申請だけでもしておいて貰えませんか?国営の方も一緒に」
とお願いしした。
「分かりました。時間はかかるかも知れませんが、かならず申請しておきます」
と、まあ悪くない回答を貰えたので
「ありがとうございます。では今日はこれで」
と部屋を出ようとしたが、アンリエットが訝し気に聞いてきた。
「あら?カエデさんとアカリさんは何も無いんですか?」
二人の方をちらっと見てから
「この二人は、俺がアンリエットさんに用事があるって言ったらなんか着いて来たいって言ったんで」
と、思わず答えたら「あーそう言う事ですかー」とこっちに聞こえない声で呟いて。
「そうですか……お二人共またいらして下さいね?」
と笑顔で答えた……目は笑って無かったが
「「はい失礼します」」
二人も笑顔で答えた。こっちも目が笑ってない。
なんか三人の間で、バチバチと火花が散っているyぷな気がするが、怖いから聞かないでおこう。
アンリエットの部屋を出て、二人は委員長達が居るであろう方向に歩き出した。
「じゃあ私たちは行くね。またお昼に」
「ああまた後で」
二人と別れて歩いていると、前から矢野和樹がやって来た。
矢野の称号は剣士で、有馬とかにはかなわないが、そこそこの戦力のはずだ。
「おう水木!お前も色々大変だなー」
といきなり挨拶された。
こいつとは、学校でもそんなに話したこととか無かったにいきなりだなと思い
「いきなりなんだ?」
と聞き返してしまった。
「いや朝の食堂の話とか色々噂になってるぜ?」
と言われ言葉に詰まりながら
「……マジ?どんな風に?」
と聞き返した。
「マジマジ。夢野さんの事はみんな前からわかってたから良いけど、神崎さんも落としたのかとかな」
噂の伝達はえーと思いつつ、溜息をついた。
「で。実際はどうなん?」
矢野が質問してきて
「え?何が?」
と、素でかえしてしまった。
「神崎さんの事だよ」
和也は少し考えつつ
「いや別になんもないさ。30層にしばらく一緒に居たから、少し仲良くなっただけだよ」
実際の気持ちは、もう少し先に進んでるんじゃないかと自分でも思ったが、無難にこう答えた。
「そうなんか?だけどお前ら見たら、その言葉信じる奴居ないと思うけどな」
そんな事を言われた。もう色々と手を遅れなのかも知れない。
「ところで話は変わるけど、お前縮地出来るって噂で聞いたんだけど本当?」
矢野がこんな事を聞いてきた。
「ああ一応だけど出来るぞ」
「悪いけど、時間出来たら教えてくんねー?」
と頼まれた。
「お前剣士だっけ?レベル上げれば、そのうち出来るようになるはずだけど」
少し疑問に思いそう言ってみた。
「ああ、でも早めに感覚掴んでおきたいんだ」
その気持ちは少しわかるなーと思い
「別に良いけど、でも俺はスキルで強制に覚えたから、教えるとか出来ないかも知れんぞ」
と答えておいた。
「そうか……でもとりあえず頼むよ。見て覚えるって言葉もあるし、見ればなんか掴めるかも知れないから。時間出来たら頼むよ」
(まあ別に時間ある時ならいいかな)
「わかった。時間ある時に連絡するよ」
「サンキューなじゃあ行くわ」
と言って去って行った。
久しぶりにまともな男子と話したなーと思いつつ、和也も次の目的地に向かい歩いて行った。
まともな男キャラを作ってみました