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序章 断罪者へようこそ

 俺の名前は涼風 零。学園特殊守備隊・断罪者に所属する高校二年生だ。

 今日は俺の通うアッシュフォード学園の入学式。つまり、新しい断罪者のメンバー募集の日である。



「以上で入学式を終了します。」

教師の閉式の合図と共に一人の女子生徒が壇上に上がっていき、新入生の間で歓声が上がる。

「香坂先輩よ!」

「あれが香坂先輩!」

この女子生徒は三年生。俺ら断罪者のリーダーである。この異常なまでの知名度には理由がある。その容姿である。唯一無二と言えるほど整った容姿。この学園のある都市内で知らないものはいない。

「私は三年の香坂 美琴と申します。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、断罪者の現リーダーを務めています。今年も新入生の中から断罪者のメンバーを募集したいと思います。希望する方はこの後『断罪者会議室』へ、お越しください。」

香坂先輩の断罪者代表のあいさつが終わり、新入生は退場していった。

「お疲れ様です、先輩。」

断罪者代表席に戻ってきた先輩に声をかける。

 俺は断罪者の副リーダーを務めている。本来ならば三年生が務めるのだが、高い戦闘能力を買われ、二年で副リーダーとなった。

「一番前に座っていたの、零くんの妹さんよね?断罪者に入ってくれそうな目をしてたわよ?」

先輩が俺の方を向いて微笑んだ。

「あいつはダメですよ。戦えないですし、先輩ほど分析能力が高いわけでもないですから。」

苦笑しながら俺は答えた。

「戦えるだけが全てではないわ。きっとね。」

先輩は意味ありげな笑みを浮かべて俺の言葉を否定する。

「今に分かるわ。」

そう言い残し、先輩は立ち去った。

「戦う以外の断罪者・・・。」

俺には理解が出来なかった。学園を守るものとして、戦えなければ意味がない。そう思っていたからである。しかし、すぐにその考えは改めさせられる。



断罪者会議室に向かうと、他のメンバーは全員揃っていた。

「遅いよ、零くん!」

この人は三船先輩。断罪者の戦闘要員である。右手で炎を、左手で水を操れる女性。背が低いことを気にしている。

「すみません、ち・づ・るちゃん。」

「誰が千鶴ちゃんだぁ!」

子供扱いをすると怒る。

「千鶴ちゃんをあまりいじめちゃダメよ。」

朝日奈 桜花先輩。情報収集能力に長けていて、テレパシーを使う。断罪者唯一のテレパス。三船先輩とは対照的で大人びた女性。

「すみません、朝日奈先輩。」

怒らせると怖いので素直に謝る。

「桜花、零くんがいじめる!」

「あらあら、大変ね。」

ぐずる三船先輩を朝日奈先輩が慰める。姉妹なのだろうかと聞きたくなるほど差を感じる。

「・・・。」

一人無言の香坂先輩。

「どうしたんですか、先輩。」

はっとなり、こちらを向く先輩。

「いえ、三年生三名、二年生はあなただけ。断罪者は学園と学園を取り巻く街を含んだ学園都市を守るための組織とは言えど、人数不足は否めないわ。それで少しだけ考え事をしていたのよ。」

不安げにそう呟いた。いつもは凛とした表情の先輩の不安な顔を見ると、自分まで不安になってくる。

 コンコン。と、ドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ入って。」

香坂先輩が答える。

「・・・失礼します。」

声をそろえ一年生が五名入ってくる。俺は一年生を見て唖然とした。

「あら、零君の妹さん来てるわね。」

香坂先輩が嬉しそうに笑った。

「え、どの子。」

二人の先輩も声をそろえて一年生を見る。

「わ、私です・・・。」

一番小さな女の子がおずおずと前に出る。

「可愛いじゃない!零くん、この子の名前は。」

興味津々の三船先輩。

「美羽です。」

美羽に抱きついている三船先輩に答える。

「美羽ちゃんかぁ。」

自分より小さい子が入ってきたためか、非常に嬉しそうに可愛がっている。

「よ、よろしくお願いします、三船先輩。」

美羽は早くも三船先輩を覚えたらしい。

 二人がはしゃいでいる間に香坂先輩は会議室を適性試験会場へと変えていた。早業に俺も驚いた。

「さ、一年生の皆さんはこっちに来て。今から適性試験・・・、と言っても、能力分析を行って仕事を割り当てるだけだけどね。」

一年生五名は香坂先輩の元へと集まる。各々の能力分析が始まり、断罪者へと登録されていった。

「五十嵐 あやせさんね。あなたはテレポーター。戦闘要員として動いてもらうわ。次は、神崎 琴音さんね。微弱だけれどテレパス。幸い、情報系に強いみたいだから、私の元で動いてもらうわ。テレパスの訓練は朝日奈さんにお願いするわ。」

一年生五名のうち二人は即戦力として割り当てられた。残るのは、美羽を含め三人。

「月本 ヒナさん、電撃を操れるけれど、まだ微弱ね。三船さんの元で訓練をしてから改めて配属させてもらうわ。深瀬 秋音さん、サイキックね。あなたも三船さんの元で訓練してもらえるかしら。」

残ったのは美羽だけとなった。しかし、最後の一人が想像を絶する能力者だったのである。

「涼風 美羽さん。あなた、幻のリミットブレイカーだったのね。非常に強力だわ。」

香坂先輩の言葉に耳を疑った。

「美羽さんは、これから零くんと行動してもらえるかしら。お互いにとって必要な存在のはずよ。さぁ零くん、最後に副リーダーからのあいさつよ。ビシッと決めてね。」

香坂先輩からプレッシャーをかけられた。

「二年、涼風 零です。テレポーターマスターとして戦闘要員に配属されてます。新入生の皆さん、どうぞよろしくお願いします。」

新入生の顔が驚きに満ちた。それはおそらく、テレポーターマスターと聞いたからであろう。テレポーターマスターはその名の通り、テレポーターの上級者。マスターは非常に珍しい能力者で強力である。

「あなたたち兄妹で幻の能力者なのね。心強いわ。お互いをパートナーとして活動してね。」

美羽の方を見たが、自分の能力に唖然としたのか固まっている。

「大丈夫か、美羽。」

静かに聞くと、

「あ、お兄ちゃん。大丈夫、少し驚いただけ。」

無邪気な笑顔で答える美羽。

「そうか、ならよろしくな。」

握手をして微笑みあった。

「それじゃぁ、新入生適性試験はこれにて終了。解散!」

香坂先輩のかけ声と共に断罪者は部屋から出ていく。



断罪者の活動はこれから始まる。

九名の物語はここから始まるのだった。

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