プロローグ
久しぶりの日曜日。久しぶりと言っても、日曜日は週に一度やってくるのだ。それでもなかなかゆっくり出来なかったから、日曜日がずいぶん久しぶりにやってきた気がした。
せっかくの休みなのにこのままベッドの上でゴロゴロしてるのは、ちょっともったいない気がした。時計を見ると午前十時をさしている。そう言えば、朝ごはんも食べてない。
私はゆっくりとベッドを抜け出した。窓の外はまぶしい太陽の光を桜の若々しい葉が受け止めていた。今日は気温がずいぶん上がりそうだ。
部屋を出て一階の台所で朝食を探す。しかし、朝食はもう食べた後なんだろう。食べられそうな物はなにもなかった。私は仕方がなくコップに牛乳を注いだ。
「あらあら、遅いお目覚めですこと」
後ろから声をかけられた。母だ。
「おはよ。まだまだ眠いんだけど、なんか食べるものないの?」
母は冷蔵庫を開けるとにこやかに笑いながら
「ご覧のとおり、すっからかんよ。後で買い物に行かなくちゃ。今日から麻衣ちゃんも来るのにこれじゃ」
「麻衣ちゃん?誰、それ?」
私は初めて聞くその名前にきょとんとした顔で聞いた。
「この間話したじゃない。今日からこの家で一緒に暮らす家族よ。そうだ、お母さんは買い物に行くから真由美ちゃん、迎えに行ってくれる?」
なんかめんどくさそうな事を私に押しつけようとしている。
「私が?無理だよ、会ったこと無いんだし。向こうだって私のこと知らないでしょ」
「大丈夫よ。とっても可愛い子だからすぐわかるわ。十一時半に駅で待ち合わせしてるから、よろしくね」
「ちょっと・・・」
かなり強引に押しつけられてしまった。時計を見ると十時半を回っていた。駅までバスで三十分かかる。つまり支度をする時間は三十分ある計算になる。ただ、この計算はバスの待ち時間がない場合の計算だ。
「時間ないじゃない」
私は慌てて支度をはじめた。