転の発想!禁止されたら“出張販売”で勝負!? 王都地下市場で異世界フリマ爆誕!
王都・商業地区。
バルク堂王都支店は、貴族系パン屋と王都商会連合からの営業停止通告を受け、事実上の閉店状態となっていた。
街には妙な噂が流れている。
「あのバルク堂ってとこ、規制されたらしいぜ」
「ああ、“転売パン”で有名だった店か。王都で未登録営業って、まぁ仕方ないわな」
「やっぱり正規の商会じゃないとダメよねぇ~」
そう、俺たちの商売は“王都では禁止された”──
まるで罪人扱いだ。
「くっそ……このままじゃ、王都の市場で何も売れない……!」
リーネは拳を握りしめていた。
一方、俺は──めっちゃニヤニヤしてた。
「……なによ、その顔」
「いや、だってさ──“表で売れない”ってんなら、“裏で売ればいい”じゃん?」
「……え?」
「つまりこういうことだ」
俺は、カウンターに一枚の紙を置いた。
企画名:
『異世界フリマ in 王都地下』~あなたの価値、掘り起こします~
「ちょっと待って!? フリマって、あのフリーマーケット!?」
「そう、現代社会で最も合法的な物々交換所……それがフリマ」
「って、でも王都の市場に出店できないんじゃ──」
「表の市場に出せないなら、場所を“変える”だけだ」
***
王都には、闇取引や情報屋が集まる“地下通り”がある。
迷宮跡を活用したゴチャゴチャした路地裏スペース。普通の商人は近寄らないが、冒険者や非合法商売人には人気のスポットだ。
そこに──
「うぉおお!? な、なんだこの店並びは!?」
「見ろ! パンがある! 薬草も! 魔導具まで!?」
「異世界の、フリマ……?」
【バルク堂プレゼンツ:非正規出張販売所 in 地下通り】
──開店!!
「よっしゃあ! リーネ! “スタミナパンセット”残りいくつある!?」
「80個! 今朝の分がまだ焼きあがるけど、これ以上は追いつかない!」
「薬草班は?」
「薬草50束、今夜に追加分50! 薬師のミーナさんが協力してくれてる!」
「いいぞ、売りまくれぇえええええッ!!」
売れる。売れまくる。
地下通りにフリマ文化がなかっただけに、客が面白がって次々に買っていく。
しかも、ここには“王都商会連合”の規制が及ばない。
出店料:ゼロ
税:ゼロ
販売申請:不要
誰でも参加OK
完全なる自由市場。
もちろん俺は抜かりなく、【販売誘導】スキルを全開にしている。
「このパン、表じゃ買えないらしいよ?」
「えっ、まさか“禁制パン”!?」
「持ってるだけで自慢できるってよ」
「なにその“プレミア感”の出し方!? 悪徳転売のノウハウを変な方向に使わないでよ!」
リーネのツッコミが飛ぶが、効果は抜群だ。
完売した商品も多く、地下通りはちょっとしたお祭り騒ぎに。
そしてその夜──
「す、すげぇ売上……! 一日で金貨150枚突破してる……!」
「売れすぎたな……いいぞ、もっとやれ……」
「顔がもう完全に“悪徳商人”になってるよ!?」
でも、リーネもどこか楽しそうだった。
あの堅物なパン職人の少女が、いまや「地下市場の看板娘」だ。
ツンデレ、恐るべし。
***
だが──当然、全てが順風満帆とはいかない。
次の日、地下市場に現れたのは──
「バルク堂の関係者はどこだ?」
鋭い声とともに、フードをかぶった謎の少女が現れた。
従者らしき騎士二人を引き連れ、堂々と俺たちのフリマにやってきたのだ。
「……おまえたちが“あのパン”を売っていると聞いた。真偽は?」
「ええ、そうですけど……」
俺が答えると、少女は少し目を細め──
にっこり笑って言った。
「そうか。それでは今後、うちに“専属供給”してくれないかしら?」
「……へ?」
「私は──王都第二王女、アレシア・レイングラム」
「「…………は?」」
俺とリーネは、見事に声を揃えた。
***




