表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

冒険者ギルドからの依頼!?『パンを納品せよ』ミッションがまさかの国家級商談に発展した件

パン屋「バルク堂」が再オープンしてから数日。

順調なんてもんじゃない。

連日、冒険者たちが店に殺到している。

特に人気なのが、俺が提案した新商品──

【スタミナパンセット】

・高カロリーの黒パン×2

・保存性の高いハードパン×1

・リーネ特製スパイスジャム付き

→ 冒険者向け簡易食セット:20G

「保存が利いて腹持ちもいい」と、遠征に出る冒険者たちにバカ売れしている。

リーネのパン作り技術と、俺のマーケティングスキル。

この組み合わせはマジで最強かもしれない。

「これもう……転売っていうより製造販売業じゃね?」

そんなことを呟いていると、店のドアがバン!と勢いよく開いた。

「バルク堂の方ですかッ!?」

現れたのは、黒いジャケットを着た若い男。

腰には剣、胸には冒険者ギルドのエンブレム。

「ああ、俺だが。あ、ここの共同経営者ね」

「ちょっ、勝手に“共同経営者”名乗らないでよ……!」

リーネが小声で突っ込んでくる。かわいい。

「冒険者ギルド・物資管理部のハーリスです! 今、バルク堂さんの商品が冒険者たちの間で大評判でして!」

「まあ、そりゃそうだろうな」

「つきましては、正式に“物資供給契約”をお願いしたいんです!」

「へ?」

「今月末に、ギルド主催の“大型遠征”があるんです! モンスター討伐兼、隣国との国境警備強化……そこに参加する冒険者、約300人!」

「──300人……!」

「彼ら全員に、貴店の“スタミナパンセット”を持たせたいと、ギルド長から直々に依頼を受けまして!」

「ちょ、ちょっと待って! 300人分って、つまり……!」

「900個のパンが必要ですね! ジャムも900個!」

「殺す気か!!?」

リーネの絶叫がパン屋に響いた。

***

「ねぇ、あんた……できるの? ホントに?」

「900個くらい……やってやるよ、なぁに、やってやんよ……」

と口では言ったものの、内心は冷や汗だった。

この規模、もはや「小商い」じゃない。

下手すりゃ失敗して信用も金も失うレベル。

だが、ここで断る選択肢はない。

俺の目標は、異世界で“転売王”になること。

商機を逃すなど、あってはならないのだ。

「リーネ。これを機に、バルク堂の“製造ライン”を組織化しよう」

「……製造ライン?」

「ああ。リーネは今、パンを一人で焼いてるよな? でも、それだと1日100個が限界だろ」

「……うん」

「だったら、近所の主婦や、空き時間のある村人を雇おう。レシピと焼き方はマニュアル化して、担当を分担。そうすれば──」

「最大生産数を10倍にできる、ってこと……?」

「おうよ」

「すごい……それ、ほんとにできるの……?」

「俺の世界じゃ、これ“コンビニ工場”って呼ばれてた手法だ。異世界でも応用できるさ」

リーネはポカンと口を開けて、俺の顔を見つめていた。

「な、なによ……急にイケメンみたいなこと言わないでよ……バカ」

「褒めてるのかそれ?」

「べ、別に褒めてないし! けど……その、いいと思う。あんたのやり方」

ふふん。

これが“企業的思考”ってやつだ。

「じゃ、まずは求人出そう。ついでに、業務用の大窯を追加発注だな。資金は……昨日の売上でいけるか?」

「やること多すぎィィ……!」

とはいえ、やるしかない。

俺たちはその日から、徹夜でパン工房の拡張と人員確保、製造ラインの構築に動き出した。

***

──数日後。

「これが……“パン工場”……!」

「おおぉぉ……! 自分の店じゃないみたい……!」

元・小さなパン屋「バルク堂」は、

いまや完全に**“冒険者支援型パン製造所”**と化していた。

製造スタッフ:12人

日産パン生産量:約1200個

──なんだこれ。もう商会じゃん。

「……これ、俺が一番ビビってるわ」

「ていうか、やっぱり“転売”じゃないよね、これ……?」

「リーネ、それを言うな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ