10, 来た明日
あれから数年が経った。
少し背の伸びたレイナは技術展示イベントに登壇してプレゼンター務めていた。その隣では、いささかこの会場には似合わないような少し旧式のアンドロイドが付き添って、スライド進めていた。それは出会ったときと変わらない見た目の、しかしよく整備され、軽やかに歩く姿はまるで登場直後のようになったネオンだった。
「……によって、制御の効率を大幅に上昇させるとともに、オーバーシュートを平均で10%小さくすることができました。これを応用することによって…」
周囲には、”若手期待の星”とも言われる技術者が旧式アンドロイドをいつまでも使っている様を見て、懐古趣味だ、とか情に流される非効率な技術者だとか、社内では当社の製品を使うべきであって、いつまで倒産した会社の修理部品もないアンドロイドを無理やり動かし続けるのか、といった意見すらあった。
「今日の発表がまとまったのもネオンのおかげだよ〜〜〜。」
「いえいえ、レイナさん自身のの実力ですよ。」
レイナもネオンも、周囲のそのような意見は気にしていなかった。そもそも、ネオンは一つの会社の隆盛と衰退を見守り、レイナ共に学び成長し、入社以来共に働いてきたレイナの唯一無二の相棒であった。少し計算が早いとか、通信可能距離が長いとか、最大出力が高いからといって置き換えられるものではない、圧倒的な経験と絆があった。
「そもそも」
レイナはネオンの修理の際に、一部内部構造にも手を入れていた。部品の入手が困難だったところもあるが、モジュール単位で替えても問題のないところは、思い切って敢えて改造してしまった部分もあった。
「今のネオンのスペックがそこらの量産アンドロイドに負けるとも思えないけどね。」
ネオンは、ほんの少し感情の上昇に従って頬の紅潮機能が働いているのを感じていた。
「さて…まだ早いから直帰じゃなくてあのテスト仕上げちゃおうかな〜〜。」
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「ただいま〜〜。」
「あ、室長、お疲れ様です。発表配信で見ましたよー。」
「あら、そうなの?そもそもうちでやったやつだしそんな面白いもんじゃなかったでしょ?」
「いやいや、スクリーン出してみんなで観ましたよ。面白かったですって。」
「…ぎょ、業務中でしょ!!」
「支部長から今日の午前は配信見てもいいって言われてましたので〜。」
「…………!!」
レイラとネオンが研究室へ帰ると、丁度新型機用の小型アクチュエータの耐久試験が終わったところだった。
「ログは問題なく取れてるね…。うん、そろそろ試作機も並行して作り始めてもいいかもしれない。」
「ついに、初のこの研究室主導の新製品ですね!」
「「「「絶対成功させるぞー!」」」」
昼下がりの空は、2人と、若き研究員たちの夢のようにどこまでも広がっていた。
ここまでお読みくださりありがとうございます!
今回、このお話が初めての投稿でした。もし読みにくいところや分かりにくいところがあったらすみません。
今回、ちょっと難しい言葉を使いすぎてしまったかもしれません。一応わからなくても問題はない部分だとは思うのですが…。
シュワシュワあたたかい気持ちになってくれたら幸いです。