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食休みをたっぷり一時間取った2人はお茶飲みながら向かい合っていた。
「さて、改めて自己紹介をしようか。俺は森 海
[もり かい]だ。これからよろしくお願いします。」
そお言い海は頭を下げた。
「それで君の名前を聞いてもいいかい?」
名前を聞かれた瞬間、男の子の雰囲気が暗くなった。
「奴隷商のおっさんから聞いてるだろ、です」
取ってつけた様なです、だったが確かに海は奴隷契約をする際に言われていた。
……「奴隷契約は主人と奴隷との間に魔法での繋がりを作ります。
ここまでは侍従契約、魔物との契約とさほど変わりません。しかし侍従契約は魔物に【名】を与えて自分との関係を作ります。
それに比べ奴隷契約は名を与えません。その代わり魔法での拘束力は奴隷契約の方が強いです。それに奴隷契約を結べる者は【人、亜人、魔族】の3人類です。」
そお言った奴隷商は男の子を見てからもお一度海を見て言った。「なので奴隷契約には【名】を与えなくても良いんですが……もしよければあの子に《名前》を付けてあげてくれませんか?あの子には名前という名前で呼ばれてきませんでした。詳しい話は今は話しませんが、もしよければ付けてあげてください。」
……「確かになー名前という名前で呼ばれてなかったって言うのは聞いた。」
それを聞いた男の子は[やっぱりこの人もか。]と思った。次に海が言い放った言葉で何かが違うとすぐ気づいた。
「で、それが?」
「!」
その一言は今まで名前で呼ばれなかった奴隷としての男の子にはあまりにも衝撃的だった。
「君が呼ばれたい《名前》はあるの?」
なんて事のない様に聞いてきた主人。
男の子は今まで奴隷や下僕などひどいでは言い表せない呼び名で呼ばれてきたからこそ、その質問には答えられなかった。
「ないなら……俺が付けても良いか?」
それは男の子いや【少年】に対しての人生初めての贈り物だった。