表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/70

ダムナティオの窓辺

 トリエステと別れてから、熱月の風に戻ったアンダイエとストラスは、休憩と言わんばかりに紅茶を飲んでいた。

 窓からは、夕焼けが映り込んでいる。

 通りを歩く人々の影がゆっくりと傾き、テルミドールの街は少しずつ夜の準備を始めている。


「ふぅ……」


 紅茶を飲んでアンダイエは大きく息をついた。

 明日の記事を纏めたりして、出せるような準備は出来ている。今日の大統領との面会に関しても、一応は出すつもりである。

 ただ保衛委員会の検閲が通ればの話だが。


「今日も、色々と濃かったね……」


「ただ明日も同様かもしれないけれどな。記事にすることも山ほどあるだろうし」


 ストラスは帽子を軽く持ち上げて、額の汗を拭った。

 その姿は、いつも通りの彼女。だけどさっき、ほんの短い間だけコルマール・ジュストに対して見せていた”怒りの表情”が、アンダイエの胸に引っかかっていた。


「ねえ……」


 アンダイエはそれが気になって、口を開いた。ストラスは「ん?」と目を向けてくる。


「ストラス。訊きたいことがあるの」


「……どうしたんだ?」


 返ってきたのは軽い調子だったものの、アンダイエはそのまま続ける。


「さっき……ジュスト委員が言っていた、”元王宮保衛室”のストラス・ラザールって……」


 その瞬間、ストラスの目の奥にある光がふっと変わった。

 空気が少し、冷たくなる。


 いつものストラ 辞めるようなことが」


 最初ストラスは何も言わなかった。

 沈黙が、肯定を語っていた。


 やがてーーゆっくりと窓を見ながらストラスは笑った。

 それはどこか、懐かしむように。どこか、悔いるように。


「一つだけ教えてあげる。あたしは、一人の若い令嬢を事実上殺した。名前から記録まで何から何までの全てを消して」


 ぽつりと漏れた言葉に、アンダイエは息を呑んで聞いている。


「ダムナティオ・メモリアエ、それによって彼女は完全に、死んだんだ。それに絶えきれなくなって、あたしは王宮保衛室を辞めた。そこから、数年間放浪していて、このテルミドールで償いの意味も込めて『熱月の風』に入って、今に至るという訳さ」


「そうだったんだ……」


「さて、暗くなっちゃったな。これでこの話は終わりで」


「うん……」


 ストラスの話が終わったら、あたりはかなり暗くなっていた。

 冷めている紅茶を飲みきって、夕食を食べるために立ち上がったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ