セーブポイントの悪役令嬢
トリエステはアンダイエと会話を交わしてから、ヴァンデミエールにあるスゴンダ邸の自室でぼんやりとしていた。
窓の外は灯りが綺麗に輝いている。
「これで良いのよね?」
誰に言い聞かせるわけでもなく、呟いた。
仮に居るとしたら、”呉羽”に対してだろう。
「もう最期まで進むしかない」
役が終われば、破滅のループから抜け出せる。
トリエステはーー呉羽はこれ以上壊れずに済むのだ。
それ以上の結果になるかもしれないが。
「ねえ、これはいつ機能を停止するの?」
記録用の魔法石は、白く淡く光る。返答したかのように。
でもまだ正規ルートのようだ。
「私はこれで、生き続けて、壊れていく」
トリエステは魔法石に生かされているようであった。
いわばゲームのセーブポイントのように、破滅したら戻ってくる。
間違った選択肢を選んだから戻る、という事がトリエステには起こっていた。
「はぁ……」
いつのまにかトリエステはため息がでていた。
「大丈夫ですか?」
その様子にメイドのカトリーヌが話しかける。トリエステにとって、最初に出会ったこの世界の人間。
でも、呉羽としての事を話したって信じてくれなかったし、むしろ破滅の原因になった。
「いえ、わたくしは大丈夫ですわ」
だから、トリエステは悪役令嬢として返答する。
「明日も保衛委員会へ行くのですから、無理はしないでくださいませ」
「ええ」
にっこりとほほえみながら、会話を終わらせる。
そう、今トリエステは保衛委員でもあるから、この役職から逃げ出せない。
逃げたら破滅する。すでに実証済み。
これまでもこれからも……
少なくとも正規ルートで破滅するまで。




