表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/30

本物じゃないけれど

どうも上沙です!ぜひ読んで言ってください!

 浴槽ギリギリまで張られたお湯に、一息に体を沈める。体が芯まで温まるのと同時に、心に溜まったモヤモヤがお湯に溶け出していくような感じがした。


 何でモヤモヤしてたんだっけ? 僕だって死神の一員だ。ゲルティやアニカ、一応アロイシャスもいるのに孤独なわけないじゃないか。


 もう、グダクダ考えるのは辞めよう。どうせすぐ処刑されるんだ、落ち込むだけ無駄ってもんだよね。


 楽観的な思考にふけっていると、耳が、何か音を感じ取った。自然と、限界まで脱力しきった体に力がこもる。


 なんだか、死神として生活をする内に体全体の機能が上がっている気がする。まあ、気のせいだろう。そんなことより、この音はなんだ?


 そもそもこのお風呂は、あの豪邸とは別の場所にあり、豪邸の裏側の小さなレンガ造りの小屋の中に造られている。小屋の扉を開けると、すぐにシャワーと浴槽があるので、服は扉の向こう側に置いてある。


 そして、僕が聞き取った音は服を脱ぐ音だった。扉の向こうから確かに聞こえる、布がこすれ合うような音。


 刹那、わずかな希望が頭をよぎる。そう……、アニカかもしれないとういう希望だ。もしかしたら、今回もゲルティが共に入るように命令したのかもしれない。


 念の為言っておくが、僕はスケベなやつじゃない。だけど……、好きな子とお風呂ぐらい、入ってみたいだろう?


 そのまま耳を澄ませていると、服を脱ぐような音が完全に止まり、扉がゆっくりと開かれた。


 ガンッと何かが扉につっかえるような音が響く。僕は今、扉に背を向けるようにして入っているので、何がつっかえたのかは分からない。だけど、この小屋の扉はだいぶ大きいので、つっかえる物となれば、だいぶ限られてくる。


 そう、例えばアロイシャスのクロスボウとかだ。さすがに、クロスボウを抱えてお風呂に入る人はいないと思うが……。


 つっかえたような音が二、三度聞こえたと思うと、次は、濡れた地面を裸足で歩く音が響く。……もうここまでくると分かる。音の正体は、アニカじゃない。


 勢いよく振り向く……が、耳元を通りすぎた矢がそれを制止させた。矢尻が耳をかすめ、そのまま小屋の壁に突き刺さる。


「よう、シッド! 俺も入りに来たぜ!」


 アロイシャスだ。まさかの、いや、予想通り、クロスボウを担いでいた。全裸でクロスボウを構える姿は、どう見ても危険な人である。僕じゃなかったら叫んでいただろう。


「ええい、うるさいわアロイシャス! もっと静かに入れんのか!」 


 できればクロスボウで撃たれる前に来てほしかったけど、ゲルティでもアロイシャスの奇行は止められないだろうな。


 アロイシャスの奇行を止められるのは、きっと、アニカだけだ。


「ん? その顔はさては、アニカを期待してたな? 残念だな、アニカは皿洗い中だ!」


「なっ……、違うよ! そんなの期待してないし、足音でアロイシャス達だって分かってたよ!」


 二人は顔を見合わせニヤついている。なんだか、急激に先ほどまで考えていたことが恥ずかしく感じる。僕は、何であんなことを期待していたのだろう。


 恥ずかしさで静かに悶絶していると、二人して湯船に飛び込んできた。一気に水が溢れ出し、あんなに広かった浴槽が狭く感じる。


 ……こうしてみると、まるで家族みたいだ。自分の手で家族を破壊して、僕は一人ぼっちだった。けど、優しい死神達は孤独から僕を引き上げてくれた。


 もう元の家族が戻ることはないけれど、もう少しだけ、この時間に浸っていたい。


 




読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ