道を守る者
どうも上沙です!ぜひ読んでください!
恐らく死神の世界では、あの絵に描かれている、ベイジルという男の話をするのはタブー視されているのだろう。
だけど僕には、今目の前にいるゲルティのほうがよっぽど恐ろしいものに思えた。
ゲルティとベイジルの間に何があったかは知らない。けど、ただただ純粋な殺意だけがゲルティの目に映っていたんだ。
「まあ、あれだ。確かにベイジルはいかれた野郎だが、ここ十五年は目撃すらされてねえよ。だからそう心配すんな。多分、どこかで野垂れ死んでると思うぜ」
いつの間にか完食していたアロイシャスが、僕の皿からベーコンを取り去っている。どうりで量が少ないと思ったわけだ。
「そういえば、何でそんな死神の絵が飾られているの?」
「俺は一応、『道守』だからな。掟上、あの絵を家の中に貼らねえと駄目なんだ。そんなことしなくても、ベイジルのことを知らねえ死神なんかいねえと思うが……、まあ掟だからしょうがなく飾ってんのさ」
また、知らない言葉が出てきた。やはり僕は、死神について何も知らない。いや、教えられていない。
僕だけが知らないという事実が、心に、孤独感という小さな染みをつくる。
「あ、そうだった。シッドには『道守』のことは教えていなかったな。アロイシャス、教えてやれ。」
……ちゃんと分かっている。死神について、何も教えられていないのではない。僕が聞かなかっただけだし、ゲルティも教える必要がなかっただけだ。別にゲルティは、僕が罪人だから教えていなかったとかじゃない。
そんなこと、ゲルティの僕に対する態度からも分かるだろうに。
……それでも、どうしても、僕だけ仲間はずれにされているような感覚に陥ってしまう。…そんな自分が、心の底から、大嫌いだ。
「あー、そもそもこの道が『ハルシア』へ行く道の一つってのは分かるよな? 『ハルシア』へ続く道は世界中に何百とあるんだ。まあ、死神を捕らえた場所に近い道を使うのが普通だな。んで、『道守』ってのはそれぞれの道に一人ずついてな、その道の安全やらを守らなきゃいけねえんだ。わりと楽しい仕事なんだが、今みたいに死神を泊めなきゃいけねえのが嫌なとこだな。あ、アニカならいつでも泊まりに来てもいいからね!」
「つまり、『リリー』など同じ名前の宿が世界中に沢山あるのですよ。どこの道でも宿の数と名前は変わらないのです」
綺麗なほどのスルーだ。きっと、慣れっこなんだろうな。
死神社会について少し詳しくなったところで、アロイシャスが薪を取りに行った。お風呂を沸かすようだそうだ。
そういえば、ここ何日かまともに体を洗っていないな。『リリー』でも結局入れなかったし。今日は、念入りに体を洗うとしよう。
しばらくして、家の奥から聞こえてきたアロイシャスの声が、お風呂が沸いたことを伝える。
お、どうやら、一番に入って良いそうだ。皆が、気を使ってくれているのがひしひしと伝わってきた。その優しさが、心に染みる。
少しだけ、ほんの少しだけ、孤独感がその優しさで上書きされたような気がした。
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