変わり者のアロイシャス
どうも上沙です!ぜひ読んでいってください!
「ねえ、どこに向かっているの?」
ゲルティが黙々と歩き続けるものだから、流石に心配になってきた。時間が経てばワピチの鮮度が下がってしまう。
「もう少し待て、もうすぐそこだ」
ゲルティの『もうすぐ』は信用できないと、アニカが言っていたので、まだまだ歩き続けなくてはいけないのだろう。しかし、その予想はすぐに裏切られた。
ゲルティの『もうすぐ』から十分ほど歩いただろうか、急に視界が開け、川が現れた。
「ついたぞ、川だ」
大きい川だ、助走をつけて跳んでも飛び越えることはできないだろう。今日はここで寝るのだろうか。
「アニカ、縄持ってるか?」
「いえ、持っておりません。急いで作ってまいります」
アニカは、さっさと森の中へ消えていってしまった。もう慣れっこだが、一人で行くのはやはりすごいと思う。
「ほらシッド、さっさとワピチを沈めるぞ。早く冷やさなければ、雑菌が増殖してしまう」
「血抜きしただけじゃ駄目なの?」
「そもそも、肉が臭くなるのは雑菌のせいなのだ。血液は、雑菌によって腐敗しやすいから血抜きをするが、新鮮な血なら飲めるぞ」
――この会話中、僕は森に背を向けていた。そのせいで、反応するのが少し送れてしまったんだ。
背後からビュッっと音がしたと思えば、右耳のすぐ横を『何か』が疾風のごとく通り過ぎていった。体中に鳥肌が立つ。驚きより、恐怖が勝ってしまう。逃げたいのに、体が動かない……。
「……おい、アロイシャス。こんな子供を驚かすな!」
「いやあ、すまんな。つい撃っちまった。許してくれ、な?」
森の中から、清潔感のあふれた爽やかな青年が現れた。しかし、その手には、アニカほどもある大きなクロスボウが握られている。矢が装填されていないことを見ると、『何か』はこれだろう。
青年のにこやかな笑顔に思わず顔を縦に降りそうになったところで、ゲルティに止められた。
「よせ、どうせあと四、五回はやられる。こいつには謝る気なんて毛程もないぞ。私もこのイタズラには困っておるのだ」
そのとき、タイミングが良いのか悪いのか、アニカも帰ってきた。その手には、ゲルティがぶら下がってもちぎれないであろう、丈夫そうな縄が握られている。
目的は達成したはずなのに、アロイシャスと呼ばれた青年の顔を見た途端に表情がくもった。この男とも顔見知りなのだろうか。
「おお! 助かったぞアニカ! やはり仕事が早……」
「やあ、アニカ! 久しぶりだね! 元気にしてた? 俺は元気だよ! 最近はさ、クロスボウに凝ってるんだ。見てよこれ、すごいでしょ! 見た目より軽いんだよ、持ってみる? え、いいのか……。まあいいや! それじゃあさ、俺の家こない? 野宿するのも大変でしょ、アニカなら何泊でもしていいよ! むしろ、一緒に過ごしちゃう? いや、流石に早いかー。ごめんごめん! そんなことよりもさ、今から釣りに行くんだけど一緒に来る? 行こうよ! きっと楽しいよ!」
ああ、なるほど。変な人だ。できれば関わらずにいたい人だ。皆の周りにもいるだろ? そんなやつ。けど、ただの変な人ならいい。関わらずにいればいいだけだ。
しかし、今回は違う。アニカが困っている、助けなければいけない。助けて、男として見てもらうんだ!
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