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産まれたときから共に

どうも上沙です!ぜひ読んでいってください!


「シッド様からどいてください!!」


「キューーーーーーー!!!!!!」


 ――アニカだった。いや、丸太と言うべきか。アニカが、丸太をワピチに向かって投げたのだ。丸太はワピチの体に命中し、僕の真横落ちてきた。だから、あの体のどこに丸太を投げる力があるんだ?


「危ないじゃないか、アニカ!」


「助けたのだから感謝してください!」


 ……結局助かってしまった。いや、助けられてしまった。まただ……、また、死に損なった。この短い期間で、何度も命の危機にさらされている。しかし、生き残ってしまう。どうも、運命が僕を死なせないようにしているらしい。


「とりあえずワピチの動きを止めてください! 足を狙うのです」


 そうだ、まだ狩りの途中だ。自分の運命を呪っている暇などない。素早く石を構える、落ち着け、狙いを定めるんだ。一度成功している、むしろ獲物が大きい分当てやすいじゃないか。


「ピャッ!!!!」


 短く鳴いたと思ったら、背中を向けて走り出した。二人には勝てないと思ったのだろうか。


「早く足を!」


 分かってるよアニカ。遠ざかり続けるワピチの後ろ足に狙いを定める。なんだか、周りが静かだ。あれ、なんでワピチは歩き出したんだ? アニカ? なんでそんなゆっくり動いているの?


 ……そうか、違う。ワピチもアニカもゆっくり動いているわけじゃない。遅く見えているんだ。時間が、ゆったりと流れる。滑らかに、液体のように大気を流れている。今なら確実に当たる。なぜだか、そう確信できたんだ。


 そして、僕の手から石が放たれた。シュッと鋭い音を立てながら、真っ直ぐと何物にも邪魔されることなくワピチの後ろ足に命中した。……時間の流れが元に戻り、ワピチは地に崩れ落ちた。


「すごいですシッド様! よくあの距離を命中させましたね」


 改めて見ると、ワピチとの距離は三十メートルはあるだろうか。自分でも驚く距離だ。あの時は全てが遅く感じた……。あれは、何だったんだ。


「とどめを刺してください。ナイフは貸します」


 アニカに借りたナイフを持ち、ワピチに向き直る。予想外なことに、暴れたりはしていなかった。ただ、静かに、死を迎えるのを待っている。力強い、死を恐れぬ目が僕達を……いや、僕を見ている。


(なんだ、面白くないな)


「……え?」


 思わず口から声が溢れる。なんだ今のは? なんでそんなことを思ったんだ? いや、前もあった。ママを殺したときも聞こえたあの声だ。脳に直接語りかけられるようなあの声。……お前は、誰なんだよ。


「どうかされましたか? 様子がおかしいですよ」


「え、ああ、大丈夫だよ。とどめを刺すのをためらってしまっただけさ」


 勿論、そんなわけがない。頭の中に、いくつもの疑問が浮かんでは消えていく。僕は本当に死神なのだろうか。本当はもっと残虐で、恐ろしい別の生き物なのではないかと思ってしまう。


「狙うのは鎖骨の中心です。心臓上部の頸動脈を切ってください。暴れる可能性があるので最後まで気を抜かないように」


 雑念を振り払い、目の前のワピチに集中する。今はとどめだ。鎖骨の中心にナイフを当て、一息に突き刺す。心臓のあたりから血が噴き出した、うまく頸動脈が切れたのだろう。なのに、ワピチは暴れなかった。目をつむり、静かに死を受け入れようとしている。


「キューーーーーーーーウ」


 最後に一度だけ高く鳴くと、ワピチの命は完全に消え去った……。終わったんだ、狩りの成功だ。隣を見ると、アニカのほうが嬉しそうにしている。


「シッド様、狩り成功です! ハイタッチしましょう!」


「……『はいたっち』って何?」


「嬉しいことがあった時にするものです! 手を前に突き出してください」


 アニカの真似をして、手を前に出す。すると、アニカは手を合わせてきた。これが、『はいたっち』なのだろうか。


「へへ、楽しいですね」


 アニカが満面の笑みを浮かべる。ああ、この笑顔だ。僕が、世界の何よりも大事だと思った笑顔を浮かべながら、アニカはワピチを担ぎ出した。


 しかし、ワピチのほうが大きいので、体の半分以上が地面をこすっている。僕が担いだところで同じだろう、どうやって運ぼうか。


「お、今日はすごいな。ワピチではないか」 


 ゲルティが、草をかき分けながら現れた。そうだ、ゲルティの身長ならワピチを運ぶことも出来るだろう。


「あのさ、ゲルティ。これ運んでくれない? 僕達じゃ身長が足りないんだよ」


「ん、まあ仕方ない。二人とも頑張ったようだしな。だが、今日だけだ。次からは、自分が持って帰れる獲物を狩れ」


 ゲルティが担ぐと、ワピチが小さく見える。頼もしい、大きな死神の背中だ。心の隅にもやもやを抱えながら、僕はゲルティの後ろを歩き出した。







読んでいただきありがとうございます!

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