狩る側と狩られる側
どうも上沙です!ぜひ読んでいってください!
この地球にいる人間で、狩りをしたことがあるという人は何人ぐらいなのだろう。僕は今、狩りをしている。趣味でしている人のそれとは違う、生きるための狩りだ。
「狩りの基本ですが、音を立てるのは駄目です。それと、武器が必要ですね。死神といえど、武器がないと大きい獲物は仕留めきれません。出来るだけ鋭い石を拾ってください」
運が良いことに、足元に鋭い石が何個もあった。二つは握り、あとはポケットに詰める。アニカは何も拾っていないが、いいのだろうか。
ゆっくり、ゆっくりと足を進める。音を立てないようにすり足で。多分、いくら遅く動いても意味はないのだと思う。野生動物の感の鋭さは、キツネで嫌というほど学んだ。分かっていてもゆっくりと進まずにはいられない。五分ほどかけて進むと、ワピチの姿がはっきりとしてきた。
(いけるっ……!)
人生は、上手くいっていると思っているときほど良くないことが起きる。きっと、上手くいっているときこそ油断してしまうのだ。……分かっているはずのに、良く知っているはずなのに、このときの僕は油断してしまった。
軽い感触が足に伝わり、乾いた音が森に響いた。体中から汗がふきでる。まずい、何か踏んだ。恐らく木の枝だと思うが、確認している余裕はなかった。
動けなかった……。違う、僕は何かを踏んだ体勢のまま動かなかったんだ。僕のこの行動は正しかった。ワピチは、音の出どころを探そうと辺りを見渡していたが、すぐに顔を振るのをやめた。もし、隠れようとしゃがみ込んだりしていたら、見つかって逃げられていただろう。
呼吸を整え直す。といっても深呼吸は出来ないので、浅く早く呼吸を繰り返す。まだ、大丈夫だ。せっかくアニカが見つけてくれた獲物だ、逃がすわけにはいかない。
今さっきまで夕方だと思っていたのに、もう暗くなってきた。夜になってしまうと勝ち目はない。自然と早足になってしまう。
もう目の前だ。獣独特の臭いが辺りに立ち込める。ワピチが振り向けば、目が合ってしまうだろう。アニカは追い詰めろと言っていたが、どうしたものか……。
「キューーウ!!」
しまっ……。もう遅かった。考えている時間が長過ぎたさせいでワピチに気づかれてしまった。逃げるのかと思ったが、違った。まさかの、僕に向かって突進してきたのだ。ワピチ特有の枝状に伸びた大きな角がこちらに向けられている。刺さったら大怪我ではすまないだろう。
とっさに左に回避するが、ここは森だった。木の根っこに、足が引っかかってしまう。そして、そのまま後ろにひっくり返る。
まずい、まずい、まずい、逃してしまう。いや、逃げてくれたらどんなに良かったことか。そのまま、ワピチは僕にのしかかってきたのだ。角が顔ギリギリまで近づく、荒い鼻息が顔にかかる。石をぶつけようにも、石を持っている手が足で押さえられている。誰が見ようと絶望的な状況だ。
狩るはずなのに逆に狩られるなど、間抜けもいいところだ。本当に情けない……。ここぞというところで、いつも上手くいかない。一度として上手くいったことがあっただろうか、……なかったな。
「…………もう、いいや」
静かに目を閉じ、体の力を抜く。どうせ死ぬなら感覚が麻痺している間がいい、早くしてくれ。
しかし、痛みの代わりにおとずれたのはワピチの悲鳴だった。
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