産まれることのできなかった命
どうも上沙です!ぜひ読んでいってください!
謝ったところで許されない罪がこの世にはある。その罪を犯したのが僕だ。
そして、僕によって人生が失われた者の亡骸が目の前にある。謝りたい、許されないとしても。それが僕の答えだった。
「見させてください。それが許されないことだとしても、意味がないことだとしても、謝りたいです」
「分かったぁ。お前が殺したのはいつだぁ?」
ゲルティが日にちと、時間や場所を細かく答えてくれた。僕に気を使ってくれたのだろう。
「お、その日の死亡者は一人だったはずだぁ。おいバート、遺体持ってこい」
バートと呼ばれた男が、ママが入っているはずの箱を地面に寝かせた。僕は、蓋を両手でしっかりとつかむ。手汗が止まらない。寒いはずなのに体中が熱を持ったように体温が上がる。
深呼吸をする。そんなことでこの緊張が和らぐはずがないのに……。息を整え、手に力を込める。そして僕は、蓋を思い切り開けた。
大きな音を立てて蓋が持ち上がったが、中の死体を見た瞬間に蓋を閉じてしまった。誰だあれは? 中に入っていたのはママの死体なんかじゃない。いいや、知っている。この死体のことは、誰よりも知っているはずだ。
箱の中には、クラウスの亡骸があった。忘れるはずもないクラウスの顔、首が切断されたあの死体…。考えたら分かるはずだった、クラウスは死神に殺されたんだ。隠れて生きている死神が、自分たちの痕跡を残すはずがない。死神が殺した人間の死体を、放置するなんてことがあるはずないだろ……。
「すまないシッド……。死神が殺した人間もハルシアで葬儀を行うことを考えていなかった。同じ場所で死んだ二人は、同じ葬儀屋によって運ばれることなど分かったはずなのに……」
「へぇ? この遺体じゃなかったのかぁ? おかしいなぁ、この日の遺体は人間も含めてこの一人だけだぜぇ」
分からない。それならママの亡骸はどこに消えたっていうんだよ。クラウスの死体を見た衝撃で、頭が混乱している。脳が正常に動いていない。
「それなら、ルーダの遺体はどこにあるというのだ。確かにあの日、ルーダは死んだはずなのに」
「殺されたのってルーダなのかぁ? それなら知ってるぞぉ。ルーダが死んだのは、たしかこの遺体が蓄えにされた日の、次の日の昼ごろだったかなぁ。持ってくるかぁ? 箱に日にちがしっかり記されてるぜぇ」
「そんなことありえない、私は確かにルーダのテレパシーを感じとったのだ。クラウスが蓄えられたその日に!」
テレパシー……。さっき話していた死神の力のことだろうか。そうか、だからゲルティはママの死に気がついたのか。
「瀕死の状態でも、テレパシーは発信されるだろぉ? 私はこの目で、ルーダが死ぬ瞬間を確かに見たんだ。クラウスって子の遺体を回収する時になぁ。だから、この子と同じ日に死んだなんて、ありえねえんだぁ」
「しかし、ルーダが、クラウスが蓄えられた次の日の昼に死んだというのなら! 私が、蓄えを無くすためにシッドを一度殺した時の、あの命は! 誰のものだというのだ!」
そうだ、ママを殺したはずの次の日の朝に、僕は一度殺されている。忘れるはずがない、自分の体に突き立てられた、あの鋭いナイフを。あの恐怖を。
もし、本当にママがあの時、鉛筆を突き刺した時に死んでいなかったのだとしたら、僕は誰を殺したんだ? 覚えていない、誰かを殺した記憶などママ意外にあるはずがない。
皆の目線が僕に集まる。知らないんだ、本当に知らない。人を殺したいなんて思うはずがない。
けど、僕の中に誰かの命が蓄えられていたことだけは事実で、間違いなく僕は誰かを殺していたのだ。
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