夜からの帰還
どうも上沙です!ぜひ読んでいってください!
また三十分ほど歩いたが、何も見えない。勘が外れたか。そろそろ引き返そう、四方向全てが違うくても八方向に増やせばいいだけじゃないか。何も問題はない。
(本当に帰れるのかな……)
心の奥の本音がゆっくりと心を蝕んでいく。できるだけ、何も考えないように歩こう。一歩一歩確実に進んでいくんだ。
先の方に何かが見えた。闇一色の世界に、場違いなほど明るい火が燃え盛っている。
きっとゲルティ達だ! やっと帰ってきた。足が勝手に走り出す。早くあの火の元へ行きたかった。ズタボロのはずの手足が、今までにないほど速く動く。
「ただいま! ……あれ?」
そこにはゲルティはおらず、串に刺さっている三匹の魚と大きいウサギ、そして少女がいた。そうアニカだ。
「ゲルティはどこに行ったの?」
逃げたと思って他の死神でも呼びに行ってしまったのだろうか。そんな嫌な想像ばかり考えてしまう。
「ゲルティ様はなかなか帰らないシッド様を探しに行かれたのですが、会いませんでしたか?」
何だ、僕を探してくれていたのか。あの広い森の中では会うほうが難しい。大人しくここで待っていたほうがいいだろう。
「そっか、それじゃここで待つよ。ゲルティには申し訳ないことしたな」
不意に腹がなる。随分歩いたので仕方がないが、顔に火がついたように火照るのを感じた。
「お腹が空かれたのでしたら、この魚を召し上がりください。ウサギはまだ下処理を済ませておりませんので食べられませんが」
何の魚だろうか。近くの川で獲ってきたであろう魚をアニカが焚き火で焼き始めた。ご丁寧に頭を落としてくれている。良い匂いが辺りに漂う。
「これってゲルティが獲ったの?」
僕が一匹のキツネを狩っている間にゲルティは魚三匹とウサギ一匹を仕留めたというのか。経験の差はやはり大きい。
「いえ、私が獲りました。食事の用意などの身の回りの世話は奴隷がすることになっておりますので」
アニカが獲った? 一人でこの量を? 信じられない。アニカは強いというゲルティの言葉は本当だったようだ。
「一人でこの量を獲ったの? 本当にすごいよ! どこでこの技術を覚えたの?」
「私は、父親が死神だったので小さい頃から狩りの技術を教えられてきました。普通の死神家庭では一般的なことだと思います」
……しまった。死神は人間と同じように暮らしている、家族に狩りの技術を教えてもらうことは想像できる。アニカに思い出させたくないことを思い出させてしまった。けど、顔に出すわけにはいかない。
「そうなんだ。良かったら僕にも教えてくれない? ゲルティは全然教えてくれないんだよ」
「探してやっているというのに陰口とはいい度胸だな」
後ろから、僕が狩ったキツネを担いだゲルティが現れる。全く、少しも足音がなかった。飛び出しかけた心臓を呑み込み、平然を装う。
「あ、ゲルティ! 僕のキツネ持ってきてくれたんだ」
「まあ偶然だ。お前を探していると血の匂いがしたから行ってみれば、人に殺されたであろうキツネがいたからな。しかもご丁寧に毛が置かれている。夜のこの森で狩りをする者なと私達しかいないだろう?」
キツネさまさまだ。僕があそこでキツネを狩れたのは神様が手伝ってくれたのではないだろうか。
……いや、僕は知っている。神様など存在しない。もし神様がいるのなら、僕にこんな人生を歩ませることはしないだろう。もしいるとしたら、それは全て死神だ。
「しかしこの狩り方は駄目だな。血抜きをしていないし、時間もかかり過ぎだ。肉が臭くなってしまう。…アニカ、このキツネも調理してやってくれないか? 明日の朝食べよう」
「分かりました。それでは私は下準備をしてきます」
アニカは森の中へ消えてしまった。僕よりか森のことに詳しいのは確かだが、やはり一人で行かせるのは心配だ。僕がついて行ったところで足手まといだろうが。
「それでは魚を食べよう。アニカの料理は美味いぞ、缶詰とは比べものにならないほどにな」
ゲルティ渡された魚に向かって、大きく口を開ける。そして、ほどよく焦げ目がついた腹の部分にかぶりついた。
確かに美味しかった。ただの魚のはずなのに一口かじるたびに旨味が口に広がる。こんなに脂が乗っている魚は食べたことない。
ここまで美味しく感じるのは、疲れていたせいか、アニカの調理が上手いおかげか、それともその両方か。横を向くとゲルティはもう二匹目に手を付けていた。
「三匹しかないんだから、アニカの分がなくなっちゃうよ」
「心配するな、アニカは一時間ほど前に食事は済ませている。四匹も魚を食べていたぞ」
なんということだ。本当はもっと獲っていたというのか。
「食べたら早く寝ろ、明日も早いぞ。あそこの大きな木がお前の寝床だ」
「え、けどアニカがまだ戻ってきてないよ」
「お前はアニカばっかりだな。心配しなくてもあの子はお前が思っているより大人だ。きっと自分で考えているだろう」
まだ納得できないが、どうしようもないので素直に言う事を聞く。木登りは昔から得意だ。
木の幹にもたれかけ、目を閉じる。そして、耳だけを澄ます。しばらくすると、ゲルティの大きないびきが聞こえてきた。まだ、アニカは帰ってきていない。
僕はカバンから紙と鉛筆を取り出すと、鉛筆を持ち、昨日の続きを書きだした。毎日眠る前に書くことにしよう。この時間なら誰にも見られない。
しばらく書いたところで、眠気が、脳の働きを低下させてきた。今日の疲れが一気に来たようだ。もう寝よう、今日こそしっかり眠りたいものだ。
紙と鉛筆をしまうと、木の上で今度こそ目を閉じる。明日も目が覚めることを願って。
読んでいただきありがとうございます!




