一人と一匹の夜
どうも上沙です!ぜひ読んでいってください!
夜が来る——。まずい、このままでは心が折れてしまう。
夜の闇の、
夜の寒さの、
夜の孤独の、
昼とはまるで違う恐ろしさは良く知っている。
一度落ち着かなければ、まずはこの寒さをどうにかしよう。キツネを背負うのではなく、抱くようにして持つ。キツネの毛のぬくもりがジンワリと僕の体に伝わる。とりあえずこれで寒さは大丈夫だろう。
どうやって帰ろう。駄目だ何も思いつかない。さらに陽が沈む。駄目だ、駄目だ、お願いだから沈まないでくれ、夜になると何も見えなくなってしまう。止まってくれ、頼む。ああぁ……。
森は完全に夜に包まれた。何も見えない、本当の闇がすぐ目の前に広がっている。
落ち着け、落ち着け。頭では理解していても、体がいうことを聞かないでガタガタと震えてしまう。
――突如として視界が変わり、気がつくと地面に倒れていた。足を擦りむき、血がにじむ。木の根に引っかかったのだ。夜のせいで足元も見えやしない。なんて情けないのだろう。もう心が折れてしまった。思考が停止し、立ち上がる気力さえもわかない……。
(もういいや。どうせ半年後には死ぬんだ、今死んだところで対した違いはないだろ)
死にたくはないがこの状況では仕方がない。僕が死んだら死体は回収してくれるのだろうか。いや、もう何でもいい。このまま寝むってしまおう。僕は、ゆっくりと目を閉じる。しかし、頭の中の声がそれを邪魔する。
「何死のうとしてるの? 貴方に楽に死ぬ権利はないのよ、貴方は苦しんで死ぬの」
うるさいな、誰だよアンタは。もう黙っててくれよ。もういいから、もうどうでもいいから。
「起きて! 目を開けるの。死神を殺した者が楽に死んでいいわけないじゃない」
あぁ、これはママの声だ。最近まで毎日聞いていたはずなのにとても懐かしく感じる。
てかゲルティのやつ、何が死神は命を神聖視しているだよ。この死神は苦しんで死ねとか言ってるぞ。
思わず笑みがこぼれてしまう。なぜ立ててしまうのだろう。なぜ気力があふれてくるのだろう。地面を踏みしめ立ち上がる。
闇に目が慣れてきた。
体の震えが止まった。
孤独など少しも感じない。
脳を回すんだ、考えろ、ここまでは真っすぐ歩いてきて二五分ほどだった。…どうすれば帰れる。どうすれば、どうすれば。――不意に視界の中にキツネの白い毛が入り込んだ。
脳に電流が走る。なんだ簡単じゃないか。さあ帰ろう、皆がいるところへ。
この時僕が思いついたのはこれだ、現在地から四方に向かって歩くだけ。たったのこれだけだ、思いつくほどのことでもない。しかし、迷子状態の思考ではこれすらも思いつかなかった。
まあ少し工夫したのは、少し歩くごとにキツネの白い毛を一つまみ地面に落とすことだ。白い毛なら夜でも目立つ。これで元の場所が分からなくなる心配もない。
一方向に二五分ほど歩き、何もなかったらキツネの毛をたどって元のキツネが置いてある場所に戻る。これを繰り返すと二百分以内には戻れるだろう。
毛が風に吹かれたり動物に踏まれて消えないかは不安だが、そこは賭けだ。キツネは置いていこう、重くてまともに歩けやしない。
心の中でしっかりと時間を数える。毛を落とすことも忘れない。心の中の時計が三十分経過したことを告げたが、何も見えない。
よし、引き返そう。
……また、少しの不安が心に顔を出す。遠くからよく分からない生物の鳴き声が聞こえる。獣の臭いが鼻を突く。あらゆるとこに気配を感じる。何を心配がってるんだ、まだ三方向もあるじゃないか。大丈夫、きっと大丈夫だ。
少し先に、キツネの死体が見える。先ほどの場所に戻ってきたようだ。
次だ、きっと次の道が正解だ。なぜかそう確信できた。ただの強がりだったのかもしれない、心配を消そうとしていただけかもしれない。
だけどその確信は確かに正しかったんだ。
読んでいただきありがとございます!




