外伝!! ソフィアの休日 前編
仕事が終わり休日を迎える。
誰もが経験したことがあるだろう。
この世界でもそれは変わらない。
…日当たりの良い部屋でゆっくりと目を開けた。
窓を開ける。
風が吹いてカーテンがそっと揺れた。
彼女が窓から顔を出すと風が纏うようにして部屋へと流れ込んだ。
「あぁ…今日も良い天気だ」
彼女はそう呟いて振り向き、扉を開けて部屋を出た。
部屋の外は廊下が続いており少し離れたところに階段が見える。
廊下の左右に、それぞれ部屋があり扉の隣には番号のようなものが書かれていた。
ふわぁ〜っとあくびをし、彼女は首に手を当てながら、気怠そうに階段を降りた。
「あっ!おかーさん!起きてきたよ」
階段から降りてきたのを見て、エプロンをした少女が後ろに向かってそう言った。
階段を降りた先には受付があり、机や椅子といった物も並べられていた。
壁には様々な料理の名前が書かれ、受付の隣には宿泊料や利用規約のような物が書かれていた。
「朝から偉いね」
「もう朝じゃないよ」
「えっ!?マジかー!早めに起きて釣りに行こうと思ってたのに…」
「いっそ寝なきゃ良かったんじゃない?釣りって朝早いんでしょ?」
「最近色々と立て込んでて疲れてたの!」
彼女にとって少女との会話は楽しかった。
日々の疲れを癒してくれる数少ない存在だったのだろう。
「アン!!買い出しあるでしょ、話してないでさっさと行ってきなさい!」
少女の後ろから、声が飛んできた。
「はーい!」
アンと呼ばれていた少女は後ろに向かってそう言うと。
再び前を向いた。
「さてと…買い出しに行ってくる!またね!ソフィア」
「ん…気を付けてね」
アンはすれ違いざまにソフィアの肩をポンと叩いた。
扉の前でくるっと振り向き、手を後ろで組んでニコッと笑った。
「なにかあったら、また助けてくれるんでしょ?」
「…そりゃね」
「ふふふ…じゃ!行ってきまーす!!」
そう言ってアンは扉から外へ出ていった。
「ソフィアさん。ごめんなさいね〜うるさい娘で」
ソフィアは後ろから女性に声をかけられた。
「いやいや、元気なのは良いことですし、私も…元気を分けてもらってますから」
「それなら良いんですけどね」
「レミアさんは心配しすぎなんですよ」
「…夫が亡くなって、生活するためにも私の仕事を増やさないとで、あの子に構ってあげることが全然出来なくて」
ソフィアはそっと静かに椅子を引いてそこに座った。
「今でこそ…こうして宿屋として成り立っていますけど、昔は冒険者なんてこの町に来ることありませんでしたから、畑仕事だったり製糸業が唯一の仕事という感じで」
「まぁ、ここ数年で冒険者が増えたのはダンジョンおかげね。ダンジョンは良くも悪くも物も人も多く行き来するものだから」
「ソフィアさんもダンジョンに?」
「いや…私は休日を楽しむためだよ」
「えっ…?そのためにわざわざ?」
「巨大な生き物がいる幻の湖があるらしいんでね」
「幻の湖ですか…私そういうのには疎くて…」
「いやぁ…気長に探すよ」
「冒険者の方々が戻って来たら色々と聞いてみても良いかもしれませんね。それと、朝食はいつもので良いですよね?」
「いや…今日はピリッと辛い物が食べたいかな?」
「ピリッと辛いもの…カレーならありますけど」
「…カレー?」
「東方の国々から伝わった料理で、ピリッとした辛さとコクのある旨みが美味しいんですよね」
「東方の国々ね…そりゃまた珍しい」
「ですよね!最近この町で商いをしているロハスという人が作り方を教えてくださったんですよ!」
「へぇー、気になるね」
「ソフィアさんも会ってみたらどうです?」
「どこで会えるの?」
「ヘリオトープ市ですよ。今、アンがおつかいで行っている所です」
「あとで行ってみるよ」
そう言ってソフィアは目の前に出てきたカレーを平らげる。
「ふぅっ!美味しいけど辛いね〜」
コップに注がれた水を一気に飲み干す。
「ご馳走様でした」
席を立ち、自分の借りている部屋へと戻った。
ベッドに飛び込み布団に抱きつく。
「東方ね…薰国か、はたまたルドベキアか…どちらにせよ面倒だ」
そのままダラっと過ごし気づけばかなりの時間が経っていた。
モゾモゾっと起き上がり着替える。
ソフィアは部屋の隅に置いてあった釣竿を取り部屋を出た。
階段を降りる。
「あれ?レミアさん。アンってまだ帰ってきてないの?」
「確かに…いつもより遅いですね」
「ヘリオトープ市って言ったけ?これから行くつもりだから、ついでにアンのこと連れて帰るよ」
「ありがとうございます。あの子ったらどこで遊んでるんだか…」
扉を開けて外へ出る。
ソフィアの泊まっている宿は、町よりもダンジョンに近い。
そのため宿泊客のほとんどはダンジョンを目指しやってきた冒険者である。
(冒険者ギルドへ続く道…いつもより人通りが少ないな)
ダンジョンに入るためには冒険者ギルドからの許可が必要となる。
この町では連日、冒険者ギルドに申請をする列が出来ていた。
(なーんか、嫌な予感がするのよね)
レミアさんに教えてもらった通りに道を歩いた。
しばらくすると、人通りが多くなり市場というよりパレードのような感じであった。
「まったく…想像以上に大きいわね。居住地より大きい市場なんてそうそう無いでしょ」
人をかき分けながらロハスという商人を探す。
人混みの中から1人の人間を探すことは到底出来ぬことだった。
「うん!無理だな!とりあえずアンのこと探そ!」
そう言ってソフィアはフワッと体を浮かせ空へと飛んだ。
「ねぇ!お母さん!女の人が飛んでる!!」
少女がソフィアに向かって指をさした。
ソフィアは微笑んで少女に小さく手を振った。
「さて…アンには前回の一件があるからね。私が魔力で生み出した風に追従させてるんだよね〜まぁ…本人は気付いて無いだろうけど、風から出る魔力の残滓を辿って行けば着くでしょ」
しばらくの間、空を飛び残滓を辿っていると、町のはずれにある洋館へと辿り着いた。
「あのさ〜この辺りでこんくらいの女の子見なかった?」
ソフィアは屋敷の警備をしている2人組の男にそう尋ねた。
この辺りでは珍しい袴を着ている。
服にシワが多く着色などもされていないことから麻を使って作られているのだと思えた。
(屋敷は立派なのに…警護に回す金が無いのかな?)
そんなことを考えているうちに男たちから返答が返ってきた。
「この門を通ル者はミナ記憶しているが…そのような女は見たことがナイ」
「なるほどねぇ。な〜んか怪しいけど…まぁいいや」
ソフィアは門を通ろうとした。
男の1人がそれを止めようとソフィアの肩を掴んだ。
「探し物をしないといけなくてね…だからさ…退け」
ソフィアは男の方を振り向き、そう言った。
その言葉を聞いた男は、身体がどっと重くなり泡を吹いて倒れた。
「オイ…何ヲした?」
「さぁね。私にもよくわからないのよ」
「キ…キサマ!!」
残った1人の男はソフィアに向かって殴りかかる。
ソフィアは男の拳の軌道を反らし体勢の崩れたところに蹴りを入れた。
「弱い者いじめは嫌いなんだけど…こればっかりは仕方ない」
そう言って前へと目をやるソフィア。
その視線の先には褐色肌で眼鏡をかけた1人の男と、その周囲に群がる武装した人間達が居た。
「この人数差でも余裕のある表情。流石はあのテアトルム第六席ソフィア様ですね」
「あ゙?」
ソフィアは目の前の男を睨んだ。
「威勢が良くて結構、私はロハス…ロハス・ライアーと言います。私に会いに来たのでしょう?まずは、お茶でもどうです?」
「別に…お前に会いたかった訳じゃないよ。さっきも言ったけど探し物だよ探し物」
「我々は大陸の大都市を往来する商人です。貴女のお探しの物もあるのでは?」
「あーもう分かったから!その品定めをするような目をやめろ」
「…これは失礼」
彼の従者に連れられ屋敷の中を歩く。
しばらくして応接室へと着いた。
言われるままにソファーへと座った。
足を組みロハスを睨みつける。
机を挟んでロハスが座った。
目の前に紅茶が出された。
「それで…探し物というのは?」
「…物というより人かな?」
その言葉を聞きロハスの額から大粒の汗が零れ落ちる。
「ひ…人と言いますと?」
「私ってほら忙しいからさ。私の言いなりになる労働力と言うか、使える駒を増やしておきたいのよ」
「なるほど…我々の中から引き抜き…スカウトをしたいということですか?」
「ふふふ…あはは!違う違う!違うよ!程よく取り繕えてるつもりだろうが、お前ら奴隷商だろ?」
ロハスはガタっと音を立ててソファーから落ちた。
「よ…よくご存知で……」
ソフィアはそっと立ち机に片足を乗せてロハスを見下す。
「チクらないでやるからさ…奴隷を1人寄越せ」
殺気混じりの声色で威圧する。
「ははは…元より貴女とは繋がりを作っておきたかったですしね…いいでしょう」
ロハスは後ろを向き女の従者に声をかける。
「おい!案内して差し上げろ!」
「はい…」
女はソフィアの前へと近づいた。
「こちらです…」
ソフィアは女の後ろを歩いて行った。
「ここから下へと降りますので…」
そう言って女は廊下の壁を押した。
壁が回転しズズズっと音を立てて、人が1人入れるほどの隙間ができた。
その先には螺旋状の階段が下へと続いていた。
(こっちの国々じゃ魔法で隠すことが多いのに、回転扉…いや、どんでん返しとか言ったかな?面白いね)
階段を使って下へと降りる。
降りた先には多種多様な大きさの檻が並んでおり、人間や獣人といった奴隷商が取り扱う商品として代表的なものの他に、エルフや妖精のような珍しい種族、合成獣のような異形までもが居た。
それぞれの檻からヒモが伸びており中心で全てが繋がっていた。
そのヒモの下には赤黒い陣が描かれていて、掠れて消えかかっている事から、かなり昔に作られたものだと分かった。
(思っていた以上に深刻な事になってそうだな…人攫いなんかはしていると思っていたけど、そこらに転がっている道具や床に描かれた魔法陣から見るに、人体実験や魂を使った精霊の強制召喚も行っていたんだろう)
ソフィアの前を歩いていた女が立ち止まり後ろを振り向いた。
「奴隷を1人でしたね…どれになさいますか?」
「少し見させてもらうよ」
そう言ってソフィアは正面にあった檻の前へと歩いた。
ソフィアは従者の女に話しかける。
「ところでさ」
「はい?」
「殺しってなんのためにあると思う?」
「急に何ですか」
「単なる質問だよ。気軽に答えてもらって構わない」
「私にとって…殺しという行為は、自分の持つ力を周囲へ誇示するためのものだと思います」
「なるほどね…悪くない答えだ」
「あの…この質問にどんな意味が…」
ソフィアは女の方を振り向いた。
目の座った非情な目を向ける。
「私にとって…殺しとは自分が人生の中で障害と成り得る存在を排除することだよ」
「排除…貴女は殺した人に家族が居たら…子供が居たなら…どう思うのですか?」
「…何も思わないね。結局のところ罪悪感や悪意といったものは、ルールや倫理観といったものに縛られているから生まれるんだよ。その作られた線をはみ出すと結果、自分にとって不利益になってしまうからね。身体は無意識に理解し一線を超えないようにブレーキをかけているのさ」
ゆっくり近付いて行く。
「人を殺すには、まず優先順位をつけるの」
「優先順位?」
「自分が本当に殺すべき相手…自分の未来を考えた時、1番最初に邪魔となる障害こそが本当に殺すべき相手だよ」
「あの…なっ…なんで私に…こんな話を」
「だって…あの男のこと殺したいんでしょ?」
「えっ…」
「お前もロハスの奴隷なんでしょう?嫌々従っているようにしか見えなかったし、当然殺意も湧いているんだろうなって思ったのよ」
「私をどうするつもりなんですか」
「別にどうもしないよ。元よりロハスのことは殺さないといけなかったからね。お前が殺ってくれるなら、そっちの方が楽ってだけさ」
「人を殺そうとしている私を!見逃すのですか?聖なる者と崇められる…あのテアトルムの人間が!!」
「お前が私たちをどう思ってるのか分からないけど、テアトルムはそんな綺麗な組織じゃないよ…」
「私は…私は…」
女はその場に崩れ落ちた。
「ねぇ…もしかして止めて欲しかったの?」
「そういう訳じゃ…」
「あのさ、殺すにしろ殺さないにしろ必要なのは覚悟だけだよ」
ソフィアは女の前へと近づいた。
「まぁ、無理に殺さなくても良い。どのみちロハスは絞首刑だろうから」
ソフィアは、はぁーっとため息を吐き女の頭に触れた。
「甘えるなよ小娘…今までにどんなことをされたのか分からないけど、あれだけの殺気放っておいて何を今更…躊躇してるの?こんなところで燻って言いわけ?お前にとってあの男は邪魔なんでしょ?たった数十年しか無い人生を縛られてままで良いの?」
「わ…私…殺します。あの男をこの手で」
女はソフィアの袖を掴みよろよろと立ち上がった。
「そう…それで?その先はどうするの?」
「えっ?」
「殺して終わりじゃないでしょ。自分がこれからどうやって生きるのか何を成したいのか、それも考えた上での殺しよ」
「特に何もありませんよ…今のこの状況を終えられるのなら何も望みません…」
「あっそう?何もないのなら私の知り合いのところで働かない?ちょうど人手が足りて無いらしいから」
「…良いですよ。それが私の存在意義となるのなら」
「ちなみに…さっきテアトルムの人間を聖なる者という風に言っていたけど、あながち間違いじゃないよ。私たちは平等を掲げて動いているからね。ある者には慈愛を、ある者には憎悪を、人を愛すその手で同じように命を摘み取る。それこそがテアトルムにおける絶対的理念」
「…この世に真の善人は居ないという訳ですか」
女はクスッと小さく笑った。
「お前も人生の線引きをしっかりすることだね。壊れたくなければ堕ちたくなければ、どこかで妥協し割り切らないといけないよ」
女は後ろをくるっと向き歩きだす。
「…殺して来ます」
「ストップ!」
ソフィアがそう声をかけ女の足は止まった。
「なんです?」
「今のままじゃ無駄死にするだけだから、私と一緒に行きましょうよ」
「無駄死に?」
「そう。無駄死に」
「ロハスが…あの男がそれほど強いとは思えないんですけど」
「いや…ロハス以外にもう1人居る…しかもかなりの魔力を有している」
ソフィアは後ろを振り向き檻に近づいた。
「そういう訳だから待っててね。アン」
「私…ソフィアがテアトルムとか知らなかったんだけど」
「ごめんごめん。あとでちゃんと話すから」
「まぁ…それなら…早めに戻ってきてよね」
「分かった…それにしてもアンも度胸が付いたね!こんな場所に入れられても泣いてないじゃない」
「だって2回目だよ!誘拐されたの!それに泣いたって変わらないんなら泣かない方が得した気分になるもの!」
「ほんっと…強くなったよ」
「ささっと行ってきてよソフィア。それで私を助けてよ」
「もちろん!何度でも助けてあげるよ。私のお姫様」
「そうやっていつも口説いてるの?女の子のこと」
「人心掌握術って言って欲しいな。口説くだなんて軽い女みたいじゃない」
ソフィアは苦笑いした。
「それじゃ行ってくるわ」
ソフィアはそう言うと女を連れて上へと登った。
壁を押し廊下へと出た。
「そういえば…お前の名前聞いてなかったね」
「名前はありません。あの男を殺すと決めた時に捨てました。そもそも、この屋敷に来てから名前で呼ばれたこと無かったので」
「そっか…それなら私が名前を付けてあげよう!」
「えっ!?」
「そうだな〜周囲に潰されても自分の芯はしっかりと持っていそうだから〜クレイなんてどう?」
「粘土ですか…」
「どう?気に入った?」
「女性に付ける名前では無いと思います」
「たっ…確かに」
「まぁでも、気に入りはしたので…今日から私はクレイですね」
女はそう言ってソフィアに微笑みかけた。
「気に入ってもらえたなら良かった」
ソフィアが足を止めた。
「この先だね」
ーーーーーーーーーー
「どっ…どうしましょう」
広い屋敷の一部屋。
書斎の椅子に座る男がそう呟いた。
「案ずることはない…ここには儂が居るではないか」
ソファーに座り紅茶を啜る男がそう言った。
「まさか…本国より貴方に来ていただけるとは思いませんでしたよ」
「戦争に送る人員のほとんどは、お主らの奴隷を使うことが多いからな。今…ここを潰される訳にはいかんのだ」
「ですが…相手はあの嵐の星。いくら、ガベル少将と言えど真っ向から戦うのは愚策だと存じます」
「ガッハッハ!言ってくれるではないか!ロハスよ」
「それほどの相手なのですよ」
そう言った話をしているとガチャっと音を立てて扉が開いた。
「…ノックもせずに開けるとは、些か非常識では?」
窓際の椅子に座る男はその扉の向こうに立つ、女に向かってそのようなことを言った。
「いや…良い奴隷が見つかったもので少し気が高揚していたようだ」
「それは良かったですよ。ところでその奴隷はどちらに?」
「この子だよ」
そう言ってソフィアはクレイを自分の方へと抱き寄せた。
「それは給仕などの世話役としてしか機能しませんよ?貴女の言う命令もロクにこなせないと思いますが」
「構わない。別に私に尽くして欲しいわけでも無いしね」
ソフィアはソファーに座った。
足を組み溜息を吐く。
目の前の男を静かに威圧する。
「ところでロハス殿…随分と珍しい客人ですね」
「お主がソフィア・ローズか?」
目に前の男がそう尋ねる。
「そういうお前はルドベキア軍部の人間だな?それもかなり上の」
「ソフィアよ。なぜそう思う?」
「お前の持っている煙草…元々は旧帝国時代に作られた物だろう?」
「いかにも」
「その煙草は他の銘柄に比べて中毒性が高く禁止されたはずだ。そして旧帝国領下でそれが禁止されなかったのは現在のルドベキア。ゆえに製造方を知っていて流通させることの出来る国はルドベキアくらいしか無いからね」
「早計じゃな。儂がルドベキアから買ったという可能性を捨てておる」
「お前の羽織っている服の裏地に書かれた紋は大戦後の独立直後に使われていたはず。その時代から軍に在籍していたのなら将校くらいにはなっているだろうと思っただけよ」
「博識だな。儂をひと目見てそれほどの情報を引き出せるとはの」
ガベルは腹を抱えてケタケタと笑う。
ソフィアは腕を組みソファーに深く座った。
「それで…何故お前のような奴が居る?」
「ハッ!分かりきっておるだろうに」
そう言って男は机をガンっと蹴り上げソフィアの目の前へと歩を進めた。
「ルドベキア国王軍少将ガベル・マーレインだ!以降覚えておくといい!!」
ガベルの拳がソフィアへと到達した。
ボゴォっという鈍い音と共にソフィアは吹き飛ばされた。
壁が壊れ奥の部屋まで飛ばされる。
「ガードした上でこれだけ吹っ飛ばされるだなんて…へこむなぁ〜」
ソフィアはスッと立った。
服についた埃を手で払いながら先ほどの部屋まで戻る。
「ロハスのことは任せるよクレイ」
「えっ…」
扉付近に静かに佇むクレイにそのように言った。
「私はこの脳筋の相手しないと…それにクレイなら殺せるよ。実力的にも性格的にも…その一線を踏み出す勇気さえあればね」
そう言ってソフィアはガベルの前に立った。
「お返し!!」
ソフィアはニコッと笑い、拳を突き上げた。
風魔法『風化衝撃』
ガベルとソフィアの間に二重の層が生まれゴォォッと音を立てて弾けた。
ガベルの身は後ろへと飛ばされ、窓ガラスを突き破って外へと転がり落ちた。
「フフフ…やりおる」
ガベルがよろけながら上を見上げる。
見下すソフィアの視線と交差した。
「あれで傷ひとつ付かないだなんて同じ人とは思えないわね。もしかして何かとの合成獣だったり?」
「何を言う!儂は純粋な人間よ!!むしろ儂からすれば、お主らの方が人とは思えんがな…のう?テアトルムのソフィアよ」
ソフィアは壊れた一室から飛び降りた。
「みんなしてテアトルムのって言うけど…テアトルムより冒険者の方が性に合ってるのよね」
ソフィアはそう呟いた。
ガベルは拳を振りかざした。
ソフィアがひらりと避け拳が地面に到達した。
地面が割れ土煙が辺りを舞った。
「うざったいなー!もう!!」
ソフィアはそう言うと自身の周囲に風を集めた。
風魔法 『旋風』
風が渦巻く。
宙に散らばる土を巻き込みガベルの方へと進む。
「ムウ…っ!」
ガベルはソフィアの魔法を身体で受け止めた。
「どうした!どうした!この程度ではまだまだスキルは使わんぞ!!」
(そう言えばコイツ…さっきから違和感があると思っていたけどスキルどころか魔法も使ってないじゃない!)
ソフィアは空を見上げた。
太陽が落ち始め黄昏時になっていた。
「もう少しで陽が落ちそうね…」
ソフィアはそう呟いた。




