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テアトルム  作者: 灰呶ゆう
人魔冒険者編
16/21

第十五話 盗賊

遡ること2時間前……


「そういえば魔闘値まとうちって何?」


先頭を歩いているソフィアに対して、僕は尋ねる。


「説明が難しいんだけど、対象の魔力が有する能力を測って数値化されたものって言うか~」


「簡単に言うと戦闘力と同じだよ!」


ネフィが間に割って入ってきた。


「ん〜なんとなく分かった気がする」


街道をしばらく歩いていると、ボロボロな服を着た男達が立ち塞がる。


「お前ら何だ?」


ソフィアが尋ねた。


「何だ?って言われてもなぁ。盗賊だ!としか言えねぇよなぁ」


ソフィアの問いに答えた者の後ろに居た男達は、その言葉を聞いてゲラゲラと笑う。


「ネフィ…ベルのこと頼むわね」


そう言って、ソフィアは盗賊たちの前へと出る。


(うわっ…ソフィア…思ったよりも頭にきてるよ…)


そんな事を考えていると僕の頬を何かが掠める。

驚き振り向いてみると、岩に先ほどソフィアと話していた盗賊のカシラと思しき人物が刺さっていた。


盗賊達は見た目こそ貧相な割に実力は相当で、中には高額の懸賞金がかかっている者も居た。

しかし、盗賊達と相対するは人類最強の一柱。

当然勝てる訳もなくボコボコにされる始末である。


立ち上がる盗賊が居なくなった時、カシラが刺さった壁に近づき足を掴んで引っ張る。

ソフィアは頭を掴み耳元でこう言った。


「お話…聞かせてもらえるわよね?」


カシラは血だらけの顔を縦にブンブン振った。


「よろしい」


ソフィアは手を離した。

ドシャッと音を立ててカシラは地面に落ちた。


「戦いに慣れていない…かと言って素人という訳でも無さそうだ」


「あの〜」


「ん?何?」


「あんさんら何者っすか」


ソフィアはネフィの方を見てから答える。


「なんだろ?通りすがりの美少女…かな?」


「は?」


「えっ…?私なんか間違ったこと言った?」


ソフィアは僕の方を向いてそう尋ねた。


「いや…僕に聞かれても」


「まぁそうよね」


ソフィアは目線をネフィへと変える。


「うえっ!?」


「ネフィは?何かある?」


ネフィは赤面になり、指をいじりながら答えた。


「いや…ソフィアは可愛いけど、美少女って言うよりは美女って言うか…ほら、私よりも胸あるし…」


その言葉を聞き呆然とするソフィア。


「…ごめん。何の話?」


「へ…?だから、私たちが通りすがりの美少女か?って話でしょ?」


「いや…何者かって聞かれた時のベストアンサーを聞きたかったんだけど」


「あっ…そっちの方か」


ネフィはスンッと真顔になった。

どうやら正気に戻ったようである。


「普通に冒険者って言えば良いんじゃない?」


「なるほどね」


ソフィアはカシラの方を向き、自身の胸に手を当てて答えた。


「冒険者だ!」


「………」


どこか自慢げに答えたソフィアを沈黙が襲う。


(何だろう…この支離滅裂な感じ)


そう思い、ふとネフィの方に目を向けた。

すると、そこにはからになった酒瓶がゴロゴロと転がっていた。

そして僕は思い出す。

昨日の夜…ソフィア達がお酒を呑んでいたことに。


「ソフィア…もしかして酔ってる?」


「ん〜?そんな事ないってぇ〜!!」


そう言いながら1人でくうを殴る。

その風圧でバキバキっと音を立てて一本の木が倒れた。


(あっ…重症だ。幻覚か何か見えてるわこれ)


もう一度、酒瓶の方を見る。


(さっきよりも酔っ払いとして完成している(?)もしかしてこれって…)


だらだらと汗が出る。

僕はを呑んだ。


(後から突然現れる…遅延性の酔い!!)


辺りを見渡した。

ネフィは丸まるようにして寝ていた。

ソフィアは倒れた木にもたれかかる形で寝ていた。


僕は頭を抱えながら


「終わった…マトモな奴が居ねぇ」


と思わず言ってしまった。


「おいおい!これってもしかしてチャンスなんじゃないかぁ?」


盗賊達が騒ぎだした。


「お前らぁ!!あのガキ倒して!身包み剥いで!とっととずらかるぞ!!」


おう!!」


カシラの言葉で盗賊達が襲ってきた。


「…馬鹿が」


「囲め囲め!」


「魔物相手とは違って魔力による強化をしなくて済むのは有り難いな…」


「は?何言って…」


僕は目の前の男の足首の辺りを思いっきり蹴り、よろけたところを下から平手で顎を殴った。


「魔物と違って急所が分かりやすくて、皮膚も硬くないから楽だと言ったんだよ」


「テメェ!!調子に乗りやがって」


次々に襲いかかってくる盗賊をヒラヒラと避けながら歩く。


「当てたいんなら、もっと重心落とせよ。お前らの攻撃…()()()()()


「なんだとぉ!」


「僕の身長を考えろって言ったんだ…よっ!」


横にあった木に手をかけて相手の顔を蹴り上げる。

ここで僕はふと気付く。


「やめた…」


「なんだ怖気付いたかよ」


「違うわ!戦意の欠けた奴等と戦っても虚しいだけだし意味が無い」


「お前ら…下がってろ」


「お…おカシラ!」


(おカシラって呼ばれているコイツ…さっきより張り詰めるようなプレッシャーを感じさせるな)


「さっきの女…ソフィア・ローズだろ?テアトルムの」


「ん?ああ、そうだ。よくわかったな」


「やっぱりか…となれば」


カシラは剣を振り上げて攻撃を仕掛ける。


「お前もそのよわいにしてはかなり強い…同年代じゃ敵ナシだろうな…ただ…ソフィア以外は脅威になりえねぇ」


剣は僕の腕を掠め、その場にボタボタと血が垂れた。


(今の攻撃…素早く重心の下げるのと同時に前へ出ることで動きに緩急をつけたのか…)


「ふふふ…やるね」


「そりゃ、お前より長く生きてるからな」


「…さっきまで手を抜いてたのか」


「天下のテアトルム様とまともに戦えるとは思っちゃいなかったからな」


「なんでこんなことしてるんだ?」


「生きるためだ!盗む…それ以外に俺たちには道が無い」


「だからって…」


「この街の領主が変わった時から、俺たちは職を失い住むところを追われたんだよ!!」


「それなら、こんなことせず領主相手に戦えよ」


「は?何言って…」


「こんな所で盗賊やっても何も変わらない。しばらくの間は良いかもしれない…だけど!それじゃいつか限界が来るし、いつまで経っても日陰者だろ!縛られた人生に何の価値がある!!やらない後悔よりやった後悔の方が何倍も価値があるんだよ!ダメ元でも、その領主とやらに立ち向かうべきだ!」


「それが出来たら苦労はねぇよ!!向こうは質の高い傭兵を雇ってるし人数だってこちらの数倍ある!勝ち目のない戦いにコイツらの命賭けさせてたまるかよ!!」


「だからって…このままで良いのかよ!!」


「チッ…」


カシラは僕に向かって小袋を投げつけた。


「痛っ!」


「即効性の酔い覚ましだ。酒に飲まれて戦えないなんてことにならないように常備してあるんだよ」


「えっ?」


「ったく…なんで…お前みたいなガキに絆されてるんだろうな」


カシラは後ろを向いた。


「お前ら引き上げるぞ!」


「良いのか?」


「まぁな…おい!ガキ!名前は?」


「何度もガキって言うな!名前ならルーベル・フロースウッドだ!!」


「そうか、覚えておこう…」


そう言って盗賊達は立ち去っていった。


「まったく何なんだ?ほんとに。ところで…酔い覚まし(コレ)どうやって使うんだ?」


ソフィア達の前へと歩いて行く。


「中身…錠剤っぽいし口の中に放り込むか」


毒かもしれないが、おそらく平気だろうという軽い気持ちで薬を放った。


しばらくしてソフィアが目を覚ます。

ネフィはまだ寝ていた。


「頭いたい…」


「大丈夫?」


「ん…ここどこ?」


「サンクヴァイドの近くの街道だよ」


「えっ!?いつの間に」


「ソフィア達、お酒の酔いが回ってたんだよ」


「待って…何か思い出せそう…」


その瞬間ソフィアの脳内に溢れ出す記憶…

ソフィアは赤面になり、その場に崩れ落ちる。


「何してんだ私…」


ソフィアが僕の方を見た。


「ベル…その顔の傷なに?」


「いや…さっきまで居た盗賊に付けられたけど大丈夫だよ」


「ふーん」


そう言ってソフィアは立ち上がった。


「ちょっと待ってて」


ソフィアが目の前から忽然と姿を消した。


「え?」



ーーーーーーーーーー



「おい!」


突然背後から声をかけられる。


「なんだ?いきなり」


男は振り向いた。

そこには、少し前まで横になっていたはずのソフィアが立っていた。


「なんで…お前がここに」


ソフィアは殺気ダダ漏れのまま話しかける。


「よくもベルの顔に傷を付けてくれたな」


「悪かった!頼むから見逃してくれ!!」


「ほう?お前に選択権があるとでも?」


「クソッ!!さんか…」


風魔法 『風来華ふうらいか


盗賊の一人一人に風が纏わりつく。

ソフィアが手を上に挙げるのと同時に空間が歪んだ。




ーーーーーーーーーー




ネフィが起きた。


「あれ…?いつの間に寝たんだろ」


ネフィは自分の隣に転がっている酒瓶を見た。


「もしかして…またやっちゃった?」


視線をベルの方へとやる。

そこにはコクコクと頷いてるベルの姿があった。

ネフィは赤面になり、その場に崩れ落ちた。


(やっぱりソフィアとネフィって似てるよな…何がとは言わないけど)


「……まだ子供なんだから少しは手加減しなさいよ!」


「ムチャ言うなよ!手加減なんかしてたら殺されてたわ!」


後ろの方からソフィアと盗賊達が現れる。


「そもそも…なんなんだアイツは!ルーベルとか言うやつはよ!あの歳じゃ考えられない異質な強さ!!俺たちを前に一歩も引かない度胸!!そして無慈悲かつ躊躇の無い圧倒的暴力!!!」


「そこまで褒められるとちょっと…」


僕はここぞとばかりに話に混ざった。

盗賊のカシラは僕に指を差した。


「褒めてねぇよ!お前のせいで災難ばかりだ!!」


ソフィアは盗賊のカシラの方に手を置いた。


「それはそれとして、私に何か話すことあるんじゃない?」


「あっ…はい……」


盗賊達はソフィアの前へと並んだ。


「すいませんでした!!ねぇさん!!!」


盗賊たちは土下座をする。

僕らは呆気に取られ茫然ぼうぜんと立ち尽くす。

そんなことなど気にも留めず、話を始める。


「あっしら元々こんなんじゃ無かったんですよ!あんのバカ領主のせいで収入が減るわ減るわで、暮しに支障が出るんで有志を募って、この街道を通る人達から荷物を奪って売っ払う仕事をしてるんすよ」


「そういうこった。俺たちはその仕事に頼りきった生活をしている…長くは持たないのも承知の上だ」


「でも…それって自暴自棄になったようなもので仕事とは言えないんじゃないかな?」


盗賊のカシラにネフィがズバッと言った。

その言葉を聞きカシラは泣き崩れる。


「あっ!ひでぇ!!おかしらに正論を叩きつけるだなんて、ナメクジに塩を投げつけるのと同じだぜ!」


「はぁ…なんでこんなことに……」


ソフィアがため息を吐く。


「それで…あなた達、これからどうするの?」


「ん?ああ、とりあえずサンクヴァイドに行くつもりだ」


「それまた、なんで?」


「どこぞのガキのせいでよ。久しぶりに熱が入っちまったからな…有志を募って領主を討つ!!そんで身を隠すなら標的に近い方が何かと都合が良いからだ」


「ふーん、領主をねぇ〜」


「お前はテアトルムだったな…それなら少なからず領主とも繋がりがあるはず…ここで消すか?俺たちを」


お互いの視線がバチッと交差する。

周囲に緊張が走った。


「べつに…しないよ。そんなこと」


「へ?」


「面倒ごとには首を突っ込みたくないし、それに今はそれどころじゃないからね。こんなこと言うのもアレだけど領主の命なんざ…どうだって良い」


「は…ははは…」


(汗が止まらねぇ。こうも急に周囲の空気を変えれるものなのか?自分の一挙手一投足すべての所作に置いて自らの命が犯される要因のなりうるだろう…この場の主導権は完全にあいつ…ソフィア・ローズだ。俺たちの命はあの女の掌上しょうじょうにある!!)


ソフィアはその場で立ち尽くすカシラを尻目にベル達の方へと歩いた。


「ネフィ、ベル、行くよ」


「えぇ!?あの人達どうするの?」


ネフィが後ろを見ながら言った。


「私たちには関係ないよ。領土内での問題は領土を治めるものが行うべきだ。私たちが勝手に加担するわけにはいかないんだよ」


「そっか…そうだよね」


「そんなに?」


「いやさ…久しぶりに仲間意識の強い人を見たなって思って」


「そうね…」


盗賊達と出会った場所から数分歩く。


「ようやく見えてきた!あれが商業都市サンクヴァイドだよ」


重厚感のある鉄製の門に高さ数十メートルの城壁。

その街の中心には城と見紛う巨大な屋敷が建っていた。


「想像の数百倍デケェ…」


「まぁ、国内でも有数の商業都市だからね」


そう言うとソフィアは門の右側に立っていた衛兵に声をかける。

何やら話し込んでいたが、衛兵にカードのようなものを見せて、少し微笑みながらこちらへ戻ってきた。


「なんか良いことでもあったの?ソフィア」


ネフィが尋ねた。


「いや〜衛兵にさ、自分はテアトルムだから通せって言ったらね、全っ然信用してくれなくてさ。仕方なくギルドカード見せたんだけど、カード見せて照会させた時の顔ったら面白いったらなんのって」


ソフィアは笑いながら門を通った。

僕はソフィアとネフィに引っ付くようにして門を越えた。

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