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テアトルム  作者: 灰呶ゆう
人魔冒険者編
14/21

第十三話 大妖道魔館

今より昔か未来かもわからぬ刻。

大陸より遥か彼方に位置する聖地と云われた森の中。

過去に大魔導神ディオス・オブ・マギアと呼ばれし存在が居たとされる地でもある。


廃れた館の一室で鳴子なるこの音がした。

パチ…パチ…タン…タン…カラカラ

朝日が差し込む窓の内で目を閉じそっと音を聴く。

廊下へ響くその音が一周まわって返ってきた。

窓枠から降り椅子に腰を下ろす。

コンコンと戸が鳴り1人の女が部屋に入って来た。


「も〜こんなところに居たんですか()()


そう私に話しかける彼女の顔を見るたび改めて実感する。

あぁ私は本当に死んでしまったんだなと。


「かなり広い洋館だというのに…よく見つけられたね」


部屋にふわっとした声色が響いた。

女は戸を閉め、私の前に座った。


「カランカランって音がしたんです。こんな廃墟でそんな音を鳴らすの師匠くらいでしょ」


「なんか無性に鳴らしたくなったのよね。これ」


そう言って鳴子を女に見せた。


「なんです?これ」


「鳴子と言ってね。私の祖国の楽器で、木片同士をぶつけて音を出す。作りたてで色は付いて無いんだけどね」


私はフフンっと得意げに音を鳴らした。


「ちなみに鳴子(これ)の本来の色ってなんだと思う?」


「えっと...意外と金色だったりして...」


「えっ!?すごっ!それ私が昔に自作した鳴子の色だよ」


「へぇ~それで、本来の色は何なんですか?」


「赤と黒だよ」


「へぇ~なんで金色にしたんですか?」


「・・・」


鳴子をそっと女に渡して立ち上がる。


「そろそろ行こうか」


「あっ!今はぐらかしましたね」


そう言って女も立ち上がった。

私は戸の前へ行きドアノブを掴んだ。

パチッと音がして手を離す。


「痛っ!」


私はその場に座り込んだ。


「大丈夫ですか?」


弟子の女にそう言われた。


「静電気…バチッて来た…」


「え…そんなことで腰抜かしたんですか?」


「だって〜!んも〜なんか萎えちゃった…やっぱ明日にしていい?ここ出るの」


「えっ?普通に殴りますけど?」


「…やっぱり今日にしようか」


戸を開き廊下へと出る。

薄暗く微かにコォォォという音が聞こえる。

しばらくして玄関ホールに着いた。

玄関を抜ける外へと出る。

館の正面を向いて立つ。


「最後に()()して行こうか」


私はそう言って手を合わせた。


雲海うんかい逆巻き 天地てんち割れ えん咲き乱れ 礼華らいか舞う 解道かいどう2番 蒼焱閻来そうかえんらい


足元から縄のようなものが現れ身体に巻き付く。

ボウッと音を立てて縄が下から燃え上がる。

上に行くにつれ炎はあおくなった。

その炎は一つの意思を元に動き出す。

炎は身体より離れ洋館を取り囲む。

炎は円状に成り館を通って行った。

炎が通った先から館は淡い光に包まれ消えていく。

身体に巻き付いていた縄が炭となって崩れ落ちた。

ほんの少しして館の姿は無くなり、その跡には体の透き通った少女が立っていた。

私はその少女に近付いて話しかける。


「長い間…この地を護ってくれてありがとう。もう役目は終わりだ…今は休み、再び必要とされるときを待つといい」


少女はコクンっと頷き、姿を消した。

弟子の女が私に話しかけていた。


「今の家仙女ハウスフェアリー、随分と大人しかったですね」


「この館は400年以上前からあるらしいし、きっと他の家仙女ハウスフェアリーよりも精神年齢が上だから落ち着いてるんだよ」


私はそう言ってを進めた。


「ほら行くよ!陽が落ちる前に着くには急がないと!」


「そうは言ってもどこに行くんですか?」


「えっ?どこにって…決めてないの?」


「師匠こそ何も考えてなかったんですか!?」


「早く出たいって言われたから…てっきり行き先も決めてるんだと思ったの」


「だって…ネズミが出たんですよ!ネズミが!」


「あれ?それはおかしいね。家仙女ハウスフェアリーが管理していたんだから虫や動物は居ないはずなんだけど」


「えっ…」


女に寒気が走った。

小刻みに震えながら私にしがみついて来た。


「随分と寒そうね。暖かい国に行こうか」


「いや!別にそういう訳じゃ…」


私は女にニコニコっと笑いかけた。


「もう…なんでも良いです」


「この辺りだとトリックポヒが近いかな」


女が言った。


「トリックポヒ?」


「1年中暖かい国なんだけど、孤児や老人のための施設があって、怪我人とか病人を無償で診てくれる病院もあるらしいよ」


「国民に優しいんですね」


「…いや、どうだか。そういうことを実現できる国は…それだけ搾取される人間も多いからね」


女は首を傾げた。


「それって税金が多いとかですか?」


「いや…そういう訳でも無いんだけど…ダメだね。上手い説明の仕方がわからないや」


「えぇ…」


「まぁ…行って自分の目で見てみると良い、良くも悪くもいい経験になるはずだから」


女は一歩前へと踏み出し私に詰め寄った。


「まさか…1人で行けとか言いませんよね?」


私は少し微笑み、女の頭に手を当てる。


「そんなこと言わないよ」


女は安心して胸を撫で下ろした。

私はその様子を見てアハハっと笑った。


「なっ…なんですか!!」


少し赤面になった女がそう言った。


「いやぁ〜可愛いなって思って」


そう言った瞬間、私の腹部に女の拳が突き刺さった。


「ゴホォッ!!!」


私はお腹を抱えて崩れ落ちた。

ゼーッゼーッと息を漏らし女を見上げる。


「酷くない!?」


「酷くないです!!」


女は私から視線を逸らした。


「人の心をもて遊ぶ師匠せんせいの方が酷いですよ…」


「えっ…?なんて?」


「なんでもないです!!」


私は立ってズボンに付いた土埃を払った。


「あらためて…行きましょうか」


私はそう言って女の前に立った。

女は後ろで、まったくこれだから…とぶつぶつ言っていた。

私は気にせず話しかけた。


「目指すはトリックポヒ!急ぐとは言ったものの気楽に行こうよ」


そう言った2人は歩き出した。

曇り空に一筋の光が差し込み太陽が出てきていた。

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