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テアトルム  作者: 灰呶ゆう
魔物の楽園編
13/21

第十二話 再会…そして始まるBBQ

悪魔デーモンとの戦いにようやく終止符が打たれた。

空は明るく、すっかり日が出てきている。


ベルは握り拳を地面に叩きつけた。


「クソッ!!倒せなかった...」


疲労が溜まっていたためか、その場に仰向けになる。

皮膚がヒリヒリと痛み、全身が燃えるように熱い。

ゴホッ!ゴホッ!と咳き込むたびに口から血が吐き出される。


「あの野郎…なにか仕込んでたのか?気持ち悪いし吐きそうだ……」


(自分の体の中から魔力を感じなくなってる…魔法で治療ってのも無理そうだな)


遠くから足音が聞こえてくる。


(誰だろう...ソフィアやダルムスってことはないだろうし...)


「あっ!生きてた!」


「なんだ...カナンさんか」


「なんだって何よ!」


「ソ…ソフィア達は?」


「はぁ…全く…他人のことより自分のこと!お父さんからの連絡で、あんたが悪魔デーモンと戦って重症だろうから戦闘が終わったら治しに行ってやって欲しいって」


「ダルムスさんはどうやって連絡したんですかね。こんな何にもない森で」


「普通に通信機持って行ってたから、それで連絡したんだと思うけど」


カナンは軽く笑いながら話した。

ベルの側で医療具を広げる。

脈を測り終えると、ため息を吐きながら話し始める。


「…これは毒なんて生半可なものじゃないよ。内臓がズタズタだ…放射線でも浴びたかい?被爆している」


「被爆…?」


(エピデミアが核攻撃でもしてきてたのか?戦いに夢中であんまり覚えてないんだよな…)


「…治るんですか?」


「私を誰だと思ってる…2時間…いや…1時間で身体を元通りにしてあげる」


「1時間!?」


「そっ!1時間。時間かかるんだよ。被爆した部分を取り除くのが。スキル全開にしてもそのくらいかかるんだ」


(そんなにかかるだなんて…)


「施術中…激しい痛みが襲うはずなんだけど、不幸中の幸いか体を酷使しすぎたせいか痛みの信号の通り道である後根神経節こうこんしんけいせつが麻痺していて使い物になってない。おそらく、そこまでの痛みは感じないと思うよ」


「えっ…それはそれで大丈夫なんですか?」


「うーんとね。感覚障害が起こるけど後で治せるから大丈夫!大丈夫!全くもって問題なし!」


カナンは持ってきていた魔法陣の描かれた大きな紙を広げ、ベルを持ち上げ魔法陣の中心へと放り投げる。


「んじゃ、治療を始めるね!」


「えっ!?そんないきなり」


ベルが突然の宣告に驚き戸惑っているのにも関わらず、カナンは無視して始める


スキル発動 『治癒天使ヒーリングエンジェル


自身の内側から膨らんでいるのかと錯覚するほど内から外へ圧迫されるような感覚がする。

時間が経つにつれて目や口から血が出る。

まるで体から絞り出されているように止まらない。

体中の臓器が壊され作り直されていく感覚。

感覚といっても実際に感じているわけでは無い。

ただ唐突に理解させられるのだ。

火は熱く氷は冷たい。

それは、誰もが分かりきったことであり、世界におけることわりの一例と言えるだろう。

()()もそれに近い。

理屈どうこうでは無く、そういうものと割り切るほか無いのだ。


どれほどの時間が経ったであろうか...体の周りには血だまりが出来ており力が入らない。


「ふぅー!終わったよ!!」


「...…ありがとうございます」


「もう喋れるなんて凄まじい体力ね。普通なら施術時の疲れで数時間は話せないんだけど」


微かに向こうの方から聞こえる音を聞き、ロクに動かせない顔を横に向ける。

そこには、ダルムスとソフィア。

そして見たことのない少女が一緒になって歩いていた。


()は体力が尽きたのか、それとも、安心感からか、意識が途絶えてしまった。



ーーーーーーーーーー



「……だから!ベルの魔闘値まとうちが私やダルムスさんを超えていただなんて信じられないって言ってるの!!」


「なによ!研究所の測定機が故障してるとでも言いたいわけ?」


「だって、まだベルは6歳なんだよ?魔法について何も知らなかったし、森で助けに来てくれた時も魔力は朧げで弱く、スキルのお陰で魔法を行使しているようだった。普通に考えて私らの魔闘値まとうちを超えているなんてこと有り得ないのよ」


カナンはソフィアの肩に手をかけ話した。


「あのさ…『魔力は歳月に比例するのでは無い才能に比例するのだ』って昔、私に言ったの貴女あなただったでしょ?魔法は努力した分より強く精密な魔法が使える。ただ、魔力量に関しては生まれ持った才がほとんどで努力だけでは報われない壁であるって。何度も魔法を行使し努力をすれば多少は魔力が増える。しかし、いきなりソフィアや父さんを超えるのは異常だけど。これは紛れもない事実なんだよ!」


「私はただ…ベルが自分の身に合わないほどの強大な魔力を持ってしまっていたら、あの年齢…あの未熟な肉体からだでは耐えられないと思ったの。でも…ベルのお陰で今ここに居られているのも事実よね」


そう言い終えるとソフィアはベッドで横になっているベルの方へと目を向ける。

ソフィアと僕の目が合う。


「あっ……おっ!起きてたんだ〜!!いっ…いつから?」


「ソフィアがベルの魔闘値まとうちが私やダルムスさんを超えていただなんて信じられない!って言ってた辺りから……」


ソフィアは、あぁーっ!!と言いながら顔を手で隠しその場にしゃがむ。


「……ごめんね。嫌な思いさせてごめん。別に妬んでいた訳じゃないのよ。ただ…今までのベルからは考えられない程の数値で、その…なんて言うか…まだ幼いにも関わらず私やダルムスさんを超えたことがどうしても信じられなくて」


ソフィアはうつむいた顔を上げる。


そこには…がらにも無く大粒の涙を流すベルの姿があった。


「えっ!?なんで泣いているの…ごめんね。私の所為せいだよね…」


「いや…ソフィアの所為せいじゃないよ。エピデミア……あの悪魔デーモンと戦った後は満身創痍まんしんそういで、感傷に浸る暇も無かったんだけど。さっきのやり取りを聞いてたら、だんだん悔しくなってきちゃって…あの場で仕留めきれていたら、今後も彼らが起こすであろう問題は起こらなくなっていただろうし、悪魔デーモンにもっと深く傷が付けられたのなら、ソフィアやダルムスさんの怪我が軽く済んでいたかもしれない。そう考えていたら、時間が経つごとに後悔の念にさいなまれてしまって…」


ベルが涙を拭い前を向くと、そこにはボロボロと大粒の涙を流すソフィアが居た。

ソフィアはベルをそっと抱きしめる。


「私たちだってロクに戦えなかったんだから…一人でそんな気負う必要は無いよ」


医務室は静かになった。


「ほらっ!え!!」


突然、ダルムスがベルとソフィアの間に割り込んで言った。

ダルムスの手のひらには焼かれた肉の乗った皿があった。


「お前さん、ここ最近なにも食ってないって言ってただろ!」


「ちょっと!!お父さん!?ベルは怪我人なんだから!そんな消化に悪いもの食べさせられる訳無いでしょ!!!」


研究所の一角にある医務室に、カナンの怒号が響きわたる。

流石のダルムスも娘には弱いようで、黙って部屋の隅に座り込んでしまった。


そんな光景を目の当たりにして、思わず笑いが溢れてしまう。


「なんか.......いろいろと考えていたことがどーでも良くなっちゃった。肉...みんなで食べましょうか」


ベルがダルムスに微笑みかけた。

カナンが手を左右に振りながら話す。


「いやいや、体調大丈夫なの?」


「多分!ダイジョーブです!!」


僕はニカッと笑いそう言った。


「多分て...まぁ元気なら良いんだけど」


僕とカナンさんの間に気まずい雰囲気が漂っていると、扉を軽くノックして、バンッ!と音を立てて部屋に少女が入ってきた。


その者は森でソフィア達と歩いていた少女。

背丈は150cm後半といったところで、薄いベージュ色のワンピースを着用している。

髪色は黒で、キツネのようなネコのような耳を持っていた。

手には、俗に言うアサシンナイフのような物を持っており、ナイフから血が滴っている。


「頼まれていたレッドリーフ5体の討伐終わりましたー!!」


「おっ!もう終わったのか。頼んでから1時間弱…腕を上げたなぁ!」


ダルムスのその言葉に少女は嬉しそうに返答する。


「私だってもう立派な冒険者なんですから!いつまでも子供扱いでは困ります」


「えっ!?ちょっと待って。ダルムスさん…森で疲労困憊ひろうこんぱいになっていた()()()に仕事を頼んでいたんですか?」


ソフィアは怒り口調でダルムスに訊ねる。

その眼差しはキツく目は据わっていた。


「にっ…肉が足りなくなりそうだったんでな……」


ダルムスは少し冷や汗をかきながら少女の方を見る。


「まぁ…私も体を動かしたいと思ってたところだったから引き受けただけで、別に無理矢理じゃないからね」


その言葉を聞きソフィアの顔は和らぐ。


「…それなら良いのだけど」


少し照れたソフィアが後ろの方に顔をやる。


そんな会話が続く中…僕はというと……


(どうしよう…すんごい話についてけない。まず…あのケモ耳の少女(おんな)誰だよ!誰か説明してくれよ!!)…と、まぁそんなことを考えていた。


「ん?ソフィアの後ろに居るきみは…ルーベル君だっけ?」


「合ってますけど…」


「自己紹介!してなかったよね?私はネフィ・シルヴィア。ソフィアとは同じ冒険者ギルドに勤めていて、ランクはCだよ。元々商人の護衛任務で森に入ったんだけど…まさか悪魔デーモンが居るなんてね!」


ネフィはベルの前まで歩き、頭を下げる。


「本当にありがとう!!」


ベルは戸惑った様な顔をネフィに向ける。


「えっと…急に言われても何のことやら」


「ソフィアに聞いたんだよ。きみ悪魔デーモンを追いやったってさ。お陰でみんな助かったんだ。きみは私らの命の恩人だよ」


ネフィはベルの手をギュッと握りしめて、そう話した。


「さて!役者も揃ったことだ!肉食うぞ肉!!」


ダルムスの声にびっくりした様でネフィの尻尾がピーンとなっていた。


「お肉焼くならメインフロアのデッキがスペースあると思うから、そっち使いましょ」


カナンの提案に一同は賛同し、机や椅子、鉄板などを運び込む。


「あとは肉だけか…ネフィー!悪いけどベルと一緒にお肉取って来てくれる?」


ソフィアは何やら赤い石を鉄板の裏に取り付けながら、ネフィに頼む。


「わかったー!んじゃ、ルーベル君行こっか!」


「はい!」


僕はネフィに連れられ外へと出る。

そこには……

体長3mほどの巨体を持った。

赤黒い魔物が5匹横たわっていた。

全体的に巨大なイノシシといった感じで、豚鼻に鋭く尖った牙を持っている。

それぞれ首に、二箇所ずつ切り傷があり、お腹が裂かれ内臓は取り出されていた。


「これが…レッドリーフ…」


「見るの初めてなの?」


「はい…」


「ふーん、そっか。じゃ、食べるのも初?」


「そうですね、今までロクに肉なんて食べてきませんでしたし」


その言葉を聞くと、ネフィは少し考える様な仕草をとる。


「うーん、大丈夫かな…」


「何がです?」


「レッドリーフって少し癖が強くて、お酒とかと食べるぶんには初めてでも平気なんだけど、その歳じゃお酒なんて飲めないしね。少しお腹に負担かかると思うけど平気かな?って思ったんだよ」


「えっと…いっかい食べてみて、平気そうならってことにします……」


「うんうん、それが良いと思うよ♪」


「ところで…お酒って何歳からなんですか?」


「基本的に10歳くらいから平気だよ!魔力も安定してきて内臓が強くなるからね」


(魔力か……いまだに身体の内から魔力を感じない。もしかして、もう魔法使えないのかな…)


黙り込み神妙な顔をとる僕に対してネフィが話しかける。


「さぁ!レッドリーフ(こいつら)運ぼうか!!」


そう言うと、ネフィは腰に着けていたナイフを抜きレッドリーフに向ける。


暗技 風魔法 『断風たちかぜ


切先から風が出る。

その風が通った場所から竜巻のような気流が逆巻く音がする。


次の瞬間、レッドリーフの肉が削がれ、ボトボトと骨と皮だけが落ちてきた。

肉は風に包まれ上空を漂っている。


「すっご…」


「じゃ、少しだけ肉を持ってもらおうかな」


ネフィは空中にある肉の一部を素早く切り取り木箱の中に入れる。


「それ持って行って」


「はい!」


僕はそう言うとソフィアやダルムス達の待つデッキまでと歩くのであった。

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