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テアトルム  作者: 灰呶ゆう
魔物の楽園編
11/21

第十話 未知との遭遇

ソフィア達を追いかけて森の中を駆ける。

気配を感じ動きを止める。

木陰からガサガサと音を立てて何かが出てきた。

思わず後ろに下がる。

目の前には見知らぬ少女が立っていた。


「ねぇ君…ここってレブドープ樹海だよね?」


少女に尋ねられる。


「えっと…そうですけど…」


「ってことは…ソフィアは向こうの方か……」


灰色の髪に紺色に近い目をした少女。

肩の出ている黒色のメイド服を着用していて黒いヘッドドレスを着けている。

身長は150cmほど。

周囲の景色とは馴染むことのない異様な(よそお)いをしていた。

その衣服は、これほどの広大な森の中に居ながら汚れ一つ付いていなかった。


挿絵(By みてみん)


(誰だろう…ソフィアの言っていた()()()()()に所属している人かな?ソフィアのことを知っているみたいだし)


少女は空を指差し何かぶつぶつ唱える。

ため息を吐きながら前を見る。

少女は僕と目が合った。


「まぁ…いいか…少年よ!教えてくれてありがとう!」


「いや...そんな大したことしていませんけど」


「いやいや、()()にとって初めてくる場所なんだ。本当に、ここが()()()()()と呼ばれている場所なのか確かめたかったのさっ!まぁ、それにしても話に聞いていた景色とは程遠いけどね」


少女はニカっと笑う。


(ボク?この人の一人称…ボクなんだな。いわゆる、ボクっ娘ってやつか。実在してるのか…初めて見た。それにしても普通こんな夜中に一人で来ることあるか?そもそも限られた人しか入れないんだろ?纏っている(?)魔力はソフィアと同等かそれ以上かな…?どうしよう…普通に怪しい…)


目の前に居る少女は味方だと思う。

しかし、敵の可能性も捨てきれない。

このとき僕は色々考えているよりも直接聞いた方が良いのではないかと思っていた。

もし敵だったとしても、いきなり襲われることはないだろうと思った。


「あ...あの!」


「ん?なんだい?」


「お姉さんって何者なんですか?もしかして、ソフィアと同じテアトルムの…」


その言葉を言った瞬間。少女の顔は少しだけ緩み、微笑みながら右手の人差し指を僕の口元に当てる。


「まだ…ナイショだよ♪」


「えっ!?」


突然の出来事に動揺が隠せない。

5mほど離れていた場所から一瞬にして間合いを詰められたのだ。

反射的に動くことも出来ない。

身体が近づかれたことに気付かなかったのだ。

汗が止まらない。

鼓動が早くなるのが分かる。


「ああ、そうだ。少年。名前はなんて言うんだい?」


言葉にならない圧を感じる。

言わないとダメだと直感する。

しかし、こんな怪しい人物に名前を言うわけにはいかない。

仮に偽名を伝えたとしても、この少女には通用しないだろう。

おそらく瞳孔の開き具合、呼吸のタイミング、姿勢、微かな匂い、それらから読み取り真偽を決めるだろう。

多分、心理学のようなことが出来るのだ。

向こうの見せる余裕がそう感じさせた。

先ほどとは打って変わって不気味という言葉がよく似合う。

空気が重く上手く呼吸が出来ない。

息切れが起こった。


「はぁ…はぁ…」


「ん?答えられない理由でもあるのかな?」


「ルーベル…ルーベル・フロースウッド……」


「へぇ…変な名前ね。覚えとくわ」


少女は度微笑み、僕の目の前から姿を消した。

単に、その場を離れたとかでは無く、少女が居たという事実を闇が塗りつぶすかのように森の奥…暗がりへと少女は引き込まれるようにして消えて行ったのだ。


「一体...何だったんだろ」


ベルはしばらくの間考え込んでしまう...しかし、轟音と共に広がる光でふと我に返る。

近くに雷が落ちたらしい。


「今はエピデミアを倒すことを考えないと!!さっき強い閃光と共に爆発が起きてから戦闘音がしないけど...恐らくヤツは生きている!何故だか分からないけど、感覚として分かってしまう!!」


どうすればエピデミアを倒せるのか。

頭の中で必死に考える。


(考えろ!考えろ!ソフィアも生きているとは思うけど、先ほどまで感じていた強い気配は感じないし、なぜかエピデミアの気配が先ほどよりも強くなっている。アイツを倒すには唯一傷の付けられた僕のスキルに賭けるしかない…ただ…今のままじゃ無理だ…)


目を閉じて、すぅーっと息を吸い込む。

ふぅーっと息を吐く。

顔を思いっきり手で叩く。

ジーンっと痛みがする。


「もう…考えるのはやめだ」


(ここからかなり離れた所に大きい力を持った気配が二つ。反対方向に一つか。恐らくそっちの方にはダルムスさんが居るんだろ。二つの気配の内、片方は複数の(いのち)(から)まり(まと)わり()いているようだ...多分エピデミアの奴だろう)な


「アイツの魔力を辿るに50kmくらい距離がありそうだな…普通に走っても間に合うはずがないけど…走らないと…」


力を振り絞り全力で走る。

何故かは分からない...ただ普段よりも速く走れている気がした。

ベル自身は気付いていなかったが体からもわもわ黒い煙が立ち昇っていた。

一歩一歩、踏み出した足が軽やかに感じられる。

走っている最中、岩が、木が、地面が、風が、自分を助けたように感じた。

悪路だったはずの道も自分が通る際は綺麗な道になり、目の前の草木は自然と向きが変わり通れるほどの隙間が生まれる。

ようやく理解した…

万物には意思がある。

この世界、このことわりにおいて意思なきものなど居ないのだと。

()は今、森の意思を知ったのだ。

この世の真理を垣間見た気がした。

気のせいかもしれない。

だが、それでもモノの見方、意識は変わった。

おそらく、これが魔法の元であり、原点なのだろう。

思わず足を止める。

自分の手を見る。


「今だけでいい…チカラが欲しい…」


スキル発動『纏ウ者(マトウモノ)


周囲が闇に覆われる。

少しずつ小さくなりベルの身体を覆う。

黒衣に包まれたまま再び走り出す。

先ほどよりも速く走れた。

初の挿絵投稿!!

挿絵は和田勝(わだマサル)くんが書きました!



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