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文化祭!⑥

真夏が俺達の方へと近寄ってくる。やべぇな……。真夏とは圭の姿で結構会ってるし、気付かれるかも……。





「南さんはもう見てくれた? うちのコレ」




そう言って真夏は、手に持っていた看板を南つばさに見せ付ける。すると真夏の綺麗に結われたポニテが目の前で揺れ動く。




「そうそう4組は映画なんだよね! 見たいなぁって思ってたとこ!」

「今、丁度上映が始まったとこだからまた30分後とか良かったら来てよ」

「うん!」




南つばさの笑顔に真夏も涼しげに微笑む。そして横にいる俺へと自然に視線が流れてくる。どうしよう……。ここで目を逸らすのも返って変だよな……。迷ったが俺も変によそよそしくせず成り行きに任せると、真夏と視線が重なった。真夏は少し驚いたような顔を浮かべ小声で、




「びっくりした……。圭ちゃんじゃん」




まぁバレるか……。真夏相手じゃさすがにな……。三人で話して変に目立ってもアレなので、俺は笑顔で返すだけに留める。すると横にいた南つばさが苦笑しつつ、




「さすが片瀬さん。バレちゃったね……」

「えでも最初は気付かなかった、メガネしてるし」

「帽子とメガネだけじゃダメだったみたいだね、あはは……」



なんて南つばさと話しつつも、真夏も空気を読んでか、周りにバレないように配慮している様子だった。真夏は更に南つばさに、




「私は分かったけど、多分普通の人なら気付かないんじゃない? 圭ちゃんメガネのイメージないし」

「そうなの。今んとこバレたのは片瀬さんだけみたい」

「あれ? 恭二とは?」

「今さっき、3組の喫茶店に行ってきたんだけど、蒼井君とは会わなかったんだよね」

「えそうなんだ。恭二、午後はクラスの手伝いって言ってたのに。ってことはサボってるかもね」

「確かに! かなりあるかも!」




女子二人が笑っているため、俺も合わせて愛想笑いをする。まぁ確かにクラスの手伝いをサボってんのは事実か。





「会わなくて良いの? 恭二と」




真夏が気を遣ってか、そんな事を言ってくる。そうだ……真夏の中では俺と圭が付き合っている設定になっているんだった……。俺は目立たないように小声で、




「蒼井君も色々手伝いとかあると思うし、全然大丈夫だよ」

「そっか、圭ちゃんが良いならそれで良いんだけど、恭二もなんか冷たいね」




と、少し不思議そうな顔をしつつ真夏はそう答えた。まぁそうだよな……付き合ってたら、普通は顔くらいは絶対合わせるもんな……。俺が笑って誤魔化すと南つばさも横から、





「私も昨日蒼井君に、圭ちゃんと会うか聞いたんだけどねー、なんかあんまり反応なかったよ。ははは……」

「蒼井君は……私に気を遣ってるんだと思うから、みんなそんなに気にしないで?」




俺は強引にこの話を切り上げた。つか、真夏と違って南つばさは俺と圭が付き合ってるとは思ってないからな……。変にこの話を深掘りして、また妙な展開になる方が面倒だ。俺がそう言い切ると南つばさも真夏も何か察したようで、




「圭ちゃん優しいね」

「蒼井君も顔くらい見せれば良いのにねー」




と、なんだか二人の俺に対するヘイトが少し上がったような気もするが、まぁ仕方ないだろう。そうしないとこの話終わらなさそうだしな……。





★☆★☆★☆★




「あとは先生と玉井ちゃん待ちかー」

「片付けも大体終わったしな」

「なぁ恭二、腹減ったぜー」

「あぁ、俺も」




夕方、窓の外は少し夕日に傾きかけている中、無事に文化祭も終わりを迎えた。俺も信道も自分の机に腰を下ろし、小休止を入れていた。出し物の片付けも済んだクラスメイトは、担任からの解散の指示を待ち侘びているようだった。それにしても圭として南つばさとの初の文化祭もちゃんと楽しめたし、南つばさも結構楽しそうだったし、大成功と言っても良いくらいではないだろうか。ただ、観覧終了の時間になって、南つばさから校門前で見送りを受けた後、しれっとまた隠れて学校へと戻ってきたのは、若干シュールだったけどな……。南つばさにバレないように全力で旧校舎まで戻って女装を解いたのは内緒の話だ。




「あそうだハルさん、恭二の事面白いってさ」




机に座り、スマホをいじりながら信道がそんな事を言ってきた。あーそうだ……俺、こいつの前で圭のモノマネをやったんだったっけ……。その後、色々あってすっかり記憶から飛んでたけど……。やべぇ……思い出したら死にたくなってきた……。



「そりゃあの場面だけ見ればそうなるだろ……」

「まさか恭二にあんな必殺モノマネがあったなんてな……。さすが兄弟、軽々俺を超えてきやがる」

「超える気なんてはなっからねぇよ……」



ただただ、信道の無茶振りに対応しただけだしな……。つか実際の所、圭の声はモノマネっつーか本人だし……。




「みんなお待たせー!」




溌剌とした声。クラス全員が教室の入り口へと自然に目を向けると、我らが学級委員の玉井だった。すると、隣にいる信道が、




「玉井ちゃん! さすがにもお待ちくたびれたぜぇ」




信道の悪態に玉井は、申し訳無さそうに顔の前で手を合わせながら、教卓の方へと歩いて行き、そこから信道へと再び視線を移して、




「ごめんごめん! 備品のチェックが終わらなくってさ」

「先生はどしたん?」

「先生たちはまだ色々あるみたいで、今日はもう解散で良いって!」

「おおっ! って事は?」

「今から打ち上げ!」




その玉井のセリフに、クラスメイトは一斉に立ち上がりカバンを担いだ。食いまくるぞー、やら信道うるさいやらの喧騒が一気に部屋中に広まる。




「じゃあ恭二! 俺らも牛丸に移動すっか!」

「…………」




打ち上げか……。どうすっかな……。俺は教卓の方でクラスメイトとはしゃいでいる玉井を見た。

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