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文化祭!②

教室から廊下へと出ると、保護者やら他校の生徒やらが楽しそうに歩いており、さすがは文化祭と言うべきか、いつもの風景とはだいぶ異なっていた。あと今気がついたが2組はどうやら占いらしい、なんつーか無難だな。名前も占いの館とかそのまんまだし。




「あ、蒼井君!」

「……」




何となく廊下を眺めていた所、取り巻きの女子を連れた南つばさが2組の教室から出てきた。つか、前から思ってたけどこいつの周りにいる取り巻きの女子達も可愛いよな。



「ね蒼井君、どう? 暇なら占いやっていかない?」

「いや、いい」




そう言った所、俺の塩対応が気に入らなかったのか、すぐに取り巻きの女子が、




「ちょっと蒼井、冷たくない? つばさ可哀想じゃん」




すると、それを見た南つばさが珍しくやや慌てた様子で、




「あ、別に良いから楓。いつも蒼井君とはこういう感じだし」

「え、そうなの?」

「うん全然、だから気にしないで」




なんか知らんが、南つばさが場をおさめてくれた。




「ってことで蒼井君またね! お互い文化祭楽しも!」

「あぁ」




と、そう言って南つばさとその取り巻きは離れて行った。生意気に見られたのか、南つばさの取り巻きを少し怒らせてしまったようだ。さすがは学校のマドンナ、口の聞き方には気を付けた方が良かったのかも知れない。モブキャラにしては出過ぎた真似をしてしまった。なんて事を考えていたら案の定、スマホが震えた。勿論、南つばさからだった。




『悪かったわね、さっき』

『いや別に』

『私も悪かったけど、あんたももう少し上手くやってよ』

『上手くってなんだよ』

『みんな学校での私しか知らないんだから、あんな返事したら、つばさ可哀想ってなっちゃうでしょ?』

『今後は気を付ける』

『学校以外の私は、あんたと圭ちゃんにしか見せてないんだから、頼むわよ』




改めて思うが、学校のマドンナってのも結構大変なんだろうな。色々周りに気をつかって。察するに俺の知らない、南つばさの苦労があるのだろう。さっきみたいに周りが勝手に軋轢を起こしたりする事も場合によってはあるのだろうし、考えただけでも疲れてくる。まあ良い、今は映画だ。俺は踵を返して、4組の方へと歩いて行く。すると運良く丁度、映画上演の時刻らしく、4組の生徒が懸命に呼び込みをしていた。




「タイムレスサマー……ね」




4組の教室の前にはデカデカとした看板が張り出されている。キャッチコピーには、男女8人の抜け出せない夏とうたわれていた。確か4組の演劇部の奴が台本を書いたんだっけ。なんか、結構ハードル上げてる気がするけど、大丈夫か? 看板のポスターも夏の田んぼ道の風景のみと、全然作品がイメージ出来ない。結構お堅い話なんだろうか。けどまぁ一応、真夏に言われてるしな……。見るしかないか……あんまり期待せずに。俺は渋々入り口の受付で上演料の100円を払い、教室へと入った。




「おお……」




中は薄暗く、プロジェクターが用意されていた。俺は一番端の後ろの席へと座る。観客は男女半々くらいか? 一人で見にきたのは俺くらいだけど。そしてすぐに上映時間になったのか、カーテンが完全に締め切られ、プロジェクターに映画が映し出された。





★☆★☆★☆★☆




「難解だったな……」




上映終了後、係りの生徒の案内に従い俺は教室を出た。薄暗い中にいた為か、視界がチカチカする。




「あ、恭二。見てくれたんだ早速」




教室から出ると真夏がいた。制服姿に呼び込み用の看板を持っている。




「あぁ。まぁ昨日言われたしな」

「どうだった?」




真夏はやや苦笑しながら聞いてくる。




「いや……だいぶ難解だった」

「ふふ……そうだよね。私もそう思う」




同じ高校に通う男女8人が突然田舎に飛ばされて、そこにいたカミサマという女から「私を楽しませたら元の世界に返してあげる」との事で、男女8人が協力するストーリーだった。




「結局のところ、全員の心が一つになったからカミサマは楽しめたって事か?」

「そうだと思う……多分」

「多分って真夏も出演してたじゃねえか」

「まあ台本通りに演じただけだしね」




物語の序盤、ループ物の要領で毎日一回だけ、カミサマと会う事が出来るのだが、足踏みの揃わない8人は一向に楽しませる事が出来ない。しかし映画のクライマックスで最後、8人全員での大縄跳び100回を見せた所、カミサマは満足して全員元の世界に帰ってこれたってオチだった。




「ちゃんと撮影で全員、千葉まで行ってきたんだから」

「マジかよ。真夏も案外頑張ってんな」

「でさ、私の演技は?」

「上手いんじゃねぇの。普通に見れたし」

「まぁ、恭二よりは上手い自信あるかなー」

「言ってろ」




クスクスと真夏は微笑み、その綺麗に結われたポニテが揺れる。控え目に言っても真夏の演技は上手かったように思える。なんつーか与えられた役も実際の真夏に近い所があり、自然だった。まぁクラスメイトが書いた台本のようだし、当の本人をベースにしたのかも知れないが。




「恭二は午後からどうするの?」

「午後は……まぁクラスの手伝いとか」

「へぇそうなんだ」



圭として参加するなんて言えないし、誤魔化すしかない。




「私も、呼び込みの当番終わったら3組の見に行くね」

「あんまり期待すんなよ」

「お、事前にハードルを下げるなんてクラス想いじゃん」

「違ぇよ。真夏が変に期待してるからだっつの」

「見てるねぇ恭二。私の事」

「見てねぇよ、何となく分かるだけだ」

「え怖い、あはは」




なんて真夏に終始いじられてると、他の呼び込み当番の生徒が大きい声で呼び込みを始める。




「じゃあ私も呼び込みしよっかな」

「ああ。じゃあな」




そう言って真夏は俺から離れて行った。何気なくスマホを確認すると、圭アカウント宛に南つばさから、メッセージがきていた。




「早く圭ちゃんに会いたい〜」


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