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いざ別荘へ!①

夏休みが終わり、2週間が経った三連休の初日。




「ほら、着いたわよ」

「はー、着いたね圭ちゃん」

「運転……ありがとうございます。ママさん」




ママさんの車から降りると、木漏れ日が視界に降り注ぎそれと同時に、涼しさを感じた。




「久しぶりだなー。軽井沢」

「私は……初めて……」

「凄い?」

「うん……」




そう、俺たちは軽井沢に来ていた。あのバイトの後、すぐに楓さんが調整したようで、次の日にはもう、アナウンスがされていた。参加費は1,000円であり、現地集合、現地解散。食材やお酒代などの諸々の雑費は会社からの補助のようだ。正直、参加費1000円程度であれば俺でも全然出せるレベルなので出しても良かったのだが、未成年は無料との事だった。




「あら、もう始めてるわね。楓さん」

「お肉の……良い匂いがします……」

「私も今日は久しぶりに飲もうかしらね」




ママさんも気合いを入れている。薄手のブラウスに、ツイードのスカートと上品な出立ちは相変わらず年齢を感じさせない。俺は少しだけ伸びをしてスマホを鏡に髪型を手櫛で整える。





「圭ちゃん大丈夫? 疲れた?」

「ううん。お肉いっぱい食べようって考えてた」

「あは、意外。好きなんだ、バーベキュー」

「うん。焼き肉大好き」




ママさんの車の横には、大きなワンボックスの車が停まっている。俺は南親子の車に乗せてきてもらったが、他の社員の方々はみんなこの車に相乗りで来たようだ。ちなみに今日の俺のコーデは花柄のワンピースに白のスニーカーだ。あんまり、アウトドア向けな服装がなく、強いて言えば、一回も履いてないスニーカーがあったなと思いこのコーデにした。また髪の毛も今日は結ばずにロングヘアをアイロンでゆるふわに仕上げ、ヘアアレもサイドに白い控えめなリボンで決めてみた。




「まずは、荷物を置いてこよっか」

「うん」




俺たちは、バッグを背負い敷かれた石畳に沿って歩いていく。チラチラと木漏れ日が降り注ぎ、安らぐ。都会っ子だからな俺。こういう大自然は正直結構テンションが上がる。そんな事を思っていると、別荘が見えてきて、同時に前の庭で、バーベキューをしている楓さんの姿も見えた。




「ほら圭ちゃん。これ、うちの別荘」

「凄いね……ゆちゃん……。大きい……」




大きな吹き抜けのガラス窓が印象的な、白い木造の建屋。別荘ってのが正直よくわかんねぇけど、別荘の中でもかなりでかいんじゃねぇのかこれ……。




「ほら入って入ってー」

「うん」




木で作られた玄関の扉を南つばさが開けてくれる。俺は中へと入り、靴を脱いでリビングへと足を踏み入れる。




「うわぁ……広ーい」

「久しぶりだなぁ、ここ」




リビングだけでも30畳はあるんじゃないだろうか。リビングの一方は前面がガラス張りになっており、庭と軽井沢の穏やかな自然が映っている。あ、楓さんこっちに手を振ってる。そして、部屋の奥にはキッチンも備えられており、料理も出来そうだ。それにふかふかなソファも部屋のあちこちに置かれていた。




「ほら、つばさも圭ちゃんも早く荷物を置いてお庭に行きなさい」

「あ、はい」



後ろには、いつの間にかママさんがいた。




「圭ちゃんはこっちの寝室よ」

「すみません……」




ママさんに案内されたリビングの横にある寝室。ここが俺の部屋とさせてもらえるみたいだ。良かった、鍵も掛けられる。俺は持ってきたバッグを床に置いた。つかベッドでけぇな……。これクイーンサイズって奴じゃねぇのか……? 逆に落ちつかねぇ……。




「圭ちゃん、やっぱり一人が良いの……?」

「えーっと……」




背後から、南つばさに声を掛けられる。声色からしてやはり少し寂しそうだ。俺が返事に困っているとママさんが、



「ほらつばさ。そう言って圭ちゃんの事困らせないの。親しき中にも礼儀ありよ」

「別に困らせるつもりはないんだけど……その……」




やはり南つばさは不満なようだ。俺はぎこちなくなりながら、




「ごめんねつばさ……。私……一人じゃないと寝れなくて……。あとやっぱり、すっぴんもちょっと恥ずかしいし……」

「全然気にしないよ」

「うん……つばさは気にしない子って分かってるんだけど……やっぱり恥ずかしくて……わがままでごめん……」



気まずいなぁ……。でもしょうがねぇんだよ……。さすがにすっぴんだと男っぽくなるし……。バレるわけにもいかねぇし……。俺の最大限の誠意に南つばさは、




「うん分かった。圭ちゃんと一泊お泊まり出来るだけで嬉しいし、一緒に寝るのはもっと仲良くなった後に取っておこ」

「ごめんね、つばさ」




南つばさは、俺に微笑みかける。良かった……。なんとか乗り切れたようだ……。すると、南つばさの白いニットシャツの肩口から、下着の紐が露わになっていた。おそらくバックを肩に背負って知らぬ間にズレたに違いない。うわ……ピンク……。なんか見たらダメな気がする。俺は少しだけ視線を逸らす。




「ほら、つばさ。早く荷物置いてらっしゃっい」

「はーい」




ママさんの忠告に南つばさはその黒いダブルのミニスカをはためかせながら、二階へと上がって行った。あのスカート、フレアっぽいシルエットで可愛いな。後で、どこで買ったのか聞こっと。




「ごめんね、圭ちゃん。あの子しつこくて」

「いえ、なんか可哀想な事しちゃって……」

「大丈夫よ。あと、お風呂なんだけどどうする?」

「みんなが寝た後に、こそこそって入らせてもらえると……」

「20分くらい歩けば温泉もあるわよ。夜中はやってないけど」

「男として来た時の為にとっておきます……」

「ふふ、じゃあお風呂のお湯も溜めておくわね」

「ありがとうございます……」




ママさんは楽しそうにして、部屋を後にする。自分の荷物を置きに行くのだろう。つか気を遣ってくれるのは凄くありがたいんだけど、ママさんって絶対に俺の女装の事、裏で楽しんでるよな……。凄くイジられてるように感じる……。





「圭ちゃんOK?」

「うん」




南つばさが部屋の扉越しに顔を出した。よし! まぁ夜の事はあるがとりあえず肉だ。食いまくってやる。腹が出てもバレないようにワンピースを着てきたのだ。爆食いしてやる。





「圭ちゃん、遠慮なく食べて良いからね」

「うん。お肉好きだから爆食いする」

「え爆食い? 面白い」

「ゆちゃんも爆食い?」

「うーん、どうだろ。でも普通に食べるかなー」

「焼いた玉ねぎの奴あるかな……」

「あーあれバーベキューっぽいよね。私も好きー」




そんな事を言いつつ俺たちは玄関で靴を履き、庭へと出て行った。

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