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生配信!②

「みんな、コメント凄いね……。目が回りそう……。えっまた5万円……! えっと、バイトもあるし定期的に生配信するのはヤダ、ゆちゃん@フォロワー第一号さん……」




嫌がらせだろこれ……。あいつ嫉妬深すぎるだろガチで。てか、もう10万も使ってるし……。コメント欄もカオスな状況になっている。俺は再び、




「あ…あはは……まぁバイトとかもあるけど……機会があったらまたやろうとは思ってるから」




コメント欄でフォロワー達が言い争いしてるように見えるが、俺は気付いていない体で先に進む。



「じゃあ次ね……。お兄ちゃんが女装してて私より可愛くてなって困ってます、なっちゃん@化粧練習中さんって……。えっ」




危ねえ……。危うく本当の方の声が出そうになった……。菜月のやろう……。しょーもない事しやがって……。




「へ……へぇ……。お兄さん女装してるんですか……。珍しい……。それに女の子より可愛くなれるなんて凄いですね……。そのお兄さん努力家だと思います……」




菜月が今頃画面越しで大爆笑している姿が目に浮かぶ。お兄やばっ! とか言って腹抱えてんだろうな、ムカつくな……。




「えーと次、こないだはカツカレー渡してくれてありがとうございました、名無しの権兵衛さん。えっ、カレー? ってあっ……」



…………。

真夏も見てんのかよ……。ピンポイントで俺等しか知らないネタぶちこんできやがって……。つかあいつも、俺が困ってる姿見て楽しんでそうだな……。




「あっ……えっと……リアルの友達ですねこれ……。全然大丈夫だよ……また買い物行こうね……」




瞬間、すぐに携帯が震えた。通知を見ると南つばさからのDMだった。

『圭ちゃんカツカレーってなにっ!? 私その話知らない! 悔しい!』

…………。

なんかもう早速疲れてきたな。




「あ……みんな喧嘩しないでね……。仲良くして……。質問も来てるから……」




なんか、かなりコメント欄がカオスになっている。俺のフォロワーってみんな結構、血の気多い奴らが多いのだろうか……。




「次ね、友達居なくて暗い私だけど、圭ちゃんを見ていつも勇気を貰ってます。影ながら応援してます、猫猫さん」




嬉しいよなこういうコメントは……。こんな俺みたいなのでも、誰かを励ませれるだなんでな……。俺は真摯に、




「え……めちゃめちゃ嬉しい……私も猫猫さんみたいなフォロワーさんから……毎日凄い勇気貰ってるからお互い様です……。こちらこそ宜しく頼みますね……!」




俺の言葉にカオスだったコメント欄が少し穏やかになる。良かった……。




「みんな、私にこんなに聞きたいことあってびっくり……。次ね、今日のコスメ教えて下さい、舞さん」




やっと俺のフォロワーらしい普通の質問がきたな。





「基本全部ドドンキとかで買ったプチプラ使ってます……。デパコスも欲しいけどお金ないので……。あっいや……今のは別に、お金が欲しいって訳じゃなくて……。徐々にデパコスとかも買っていけたらなって事です……」




緊張して、上手く話せねぇ……。だけど、コメント欄は不思議と和やかな方向に戻っていく。




「でも……プチプラでも全然可愛くなれるんで、プチプラがダメって事じゃないです……。JKらしいし……色々選ぶのも楽しいです……」




結婚してくれとかってコメントがやけに多いな……。男の視聴者も結構多いのか? 




「次ね。ダイエットのコツはありますか、カロリー大好きさん。んー、ダイエットはあんまりしてないです……。すた丼とかラーメンばっかり食べちゃって反省してます……」




コメント欄を見ると、?が増えていた。




「あれ? なに……? えっみんな……すた丼知らない……?」




そう……だよな……。JKはすた丼とか行かないよな……。信道との二郎ブームが一段落して、今はすた丼がキテたからつい言ってしまった……。南つばさからもすぐDMがきて、

『すた丼初めて知ったー、がっつり系だね』




「そうだよね……。ごめんね伝わらない事言っちゃって……」




コメント欄を読むと、それが案外喜んでたり褒めてくれている。かっこいいとか、ギャップに惚れましたとか。そんだけ食べてて体型維持できるの凄いとか。




「あ……終わり終わり……そんなにすた丼に食いつかないでぇ……みんな……」




すた丼というワードが意外だったのだろう、以降はすた丼のイジリで持ちきりだった。




★☆★☆★☆★☆




「タコにあげ玉……たこ焼き粉。紅生姜に干しエビか」




夏休みも半分経った、お盆ど真ん中の昼。俺は恵比寿駅から歩いていた。そう、例の南つばさとのタコパの件だ。当初は二人で買い物しようとの計画だったが、あいつも二度手間に感じたのか、住所を教えてもらい(教えて貰わなくても分かるが)俺が食材を買って、訪問する流れになった。



「あいつ、どうせそんなに食わねえよな……」




タコを1パックにするか2パックか迷ったが、1パックにした。ちなみに、ねぎや卵は家にあるとの事で仕入れを免除された。そしてスーパーの袋を片手にぶら下げ南つばさの家まで歩いていく。しかし、それにしても違和感がある。いつもは圭の姿で歩いているこの道のりを今日は恭二としての姿で歩いているのだ。




「暑っつ……。あいつ迎えに来なくて正解だったかもな……」




お盆で都内はめっきり人が減ってはいるものの、暑さ自体は何も変わらない。今日も東京は素晴らしい程のかんかん照りだ。一昨日バイトに入った時も、社員さんの何人かは地元に帰ると言ってうきうきしていたが、東京出身で実家暮らし、親戚も都内にいる俺には帰省みたいなイベントは何もない。少し羨ましく感じはするものの、まぁしょうがない事なのだろう。




「会社的には営業してるんだよな」




そう、お盆でも会社としては営業しており、社員さんの何人かは出社しているのだ。学生の俺らからしたら考えられない事態だろう。そんな事を考えつつ、俺はいつもの橋を渡り歩いていく。




「あぁ、やっぱ明かり付いてる」




会社の窓を見ると蛍光灯の明かりが見えた。みんな頑張ってるんだな。そして歩きつつ漠然とバイト先のビルを眺めていると、ビルの中から一人の女が出てくるのが分かった。




「あれ……?」




前方からこっちに歩いてくるスーツ姿の女性。俺は思わずじっと見つめる。




「か……楓さん……」

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