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修学旅行!①

「いやーっ! 清水寺良かったなぁ! 恭二!」

「人多かったな、さすがに」




11月の初旬。テストも終わった俺たちは、京都へと修学旅行に来ていた。




「んで、錦市場ってのはどっちだ?」

「多分あっちだろ」

「うっわ京美人発見! どうする恭二!?」

「いや制服姿でナンパは無理だろ……。つかお前彼女居るじゃねぇか……」

「はは、冗談だっての!」




時刻は丁度、12時くらいだろうか。駅から降りた俺と信道は晴れた秋空の下、錦市場があると思われる方へと歩いていく。まぁ修学旅行と言っても基本的には自由行動である為、俺は必然的に信道と行動を共にしている。




「しっかし、楽しみだよなぁ。恭二の姉ちゃんどんな人なんだろ」

「あんま期待すんなよ、ただのガサツな姉だから」




そう、今日この場に来るに当たり、事前に姉貴に連絡しておいた。すると、姉貴もおそらく真夏から来る事を聞いていたのだろう、休みを取っていたようで、自然と一緒にご飯を食べる流れになったのだ。ちなみに姉貴から聞いた話だと、真夏とは俺らの後の15時に待ち合わせをしているらしい。相変わらずの仲の良さだ。




「あれっ? 蒼井君?」




不意に声をかけられ俺は声の方へ振り向く。すると、南つばさとその取り巻きが2人いた。俺も返事をしようとすると、すかさず信道が前に出て、




「お疲れーすっ! つばさちゃん!」

「あはは、いつもの仲良しコンビだね信道君!」




信道の横入りに南つばさは慣れた素振りで笑った。そして俺達の方へと近づいてくる。





「京都に来ても、相変わらず圧倒的に可愛いっすねつばさちゃん!」

「あはは……信道君も相変わらずだね」




信道の言葉で苦笑いをする南つばさに俺は、




「そっちも錦市場か?」

「うん! お昼だし色々食べようかなって!」

「まぁ無難だよな」




南つばさはよそ向きの笑顔を俺に向ける。いつもの見下すようなこいつの笑みに慣れている俺は、そのギャップに心の奥から笑いが込み上げて来るが、必死に抑える。すると、横にいたこいつの取り巻きのひとりが、





「蒼井君も、錦市場に行くの?」

「ああ」

「じゃあさ、一緒に行動しない!? 良いよねつばさ?」

「え? まぁ大丈夫だけど……」




突然の流れで南つばさも少し困惑している様子だった。ろくに話した事のないこのロングヘアの女子を改めて見ると、さすがに南つばさの取り巻きとあってかかなり可愛い。その女と目が合うとにっこりと微笑みかけられた。俺は返事に迷い、信道に助けを求めたその瞬間。




「じゃあ、みんなで錦市場行くかっ!」

「……」

「いやーっ! ラッキーだな恭二! こんな可愛い子ちゃん達と一緒に行動出来てさ!」



彼女が出来ようが、人の本質というのは中々変わらない物なのかも知れない。けどまぁ修学旅行の時くらいは多少は羽目を外しても良いか。普段、彼女ファーストだしなこいつ。信道の言葉にその言い出しっぺの女子も腕を上げ、同調し喜んで、




「ほら行こっか! 蒼井君」

「あ……ああ」




信道を先頭に俺達は、錦市場を目指して歩いていく。すると並んで歩く格好となった、この言い出しっぺの女子が、




「ねぇ蒼井君ってさ、普段何してるの?」

「いや別に」

「あんまり他のクラスに顔出したりもしてないよね」

「まぁそうだな」

「たまには2組にも顔出してよ」

「いや、用がねぇし」

「えー良いじゃん」




なんだかやけに話しかけてくる。信道の方はもう一人の取り巻きと楽しそうに話している。




「ねぇゆうか。蒼井君、ちょっと引いてるよ」





俺の表情を汲み取ってか、南つばさがこの取り巻きの女にそんなことを言った。すると、その取り巻きの女は、




「え、ごめんね蒼井君っ! 怖がらないでっ」



そう言って、この女は俺の肩に軽く触れてくる。それと同時に甘いシャンプーの匂いも鼻を抜けた。俺はなんだか少し恥ずかしくなって、




「いや……別に……」

「良かったぁ。私、良い意味でも悪い意味でも人見知りしないタイプだから、びっくりさせちゃった?」

「いや……」

「でもさ、蒼井君ってなんかクールでかっこいいよね」




何気なく言われたその台詞に、俺はその取り巻きの女を見つめる。すると南つばさが急に間に割って入り、




「ねぇねぇ蒼井君! 商店街で何食べる?」

「え? ああと……姉貴が来るし適当に……」

「あ、ちょっとつばさ……」




取り巻きの女子が急に割り込んできた南つばさに何か言いたげな様子だが、こいつは俺の言葉に驚いたようで更に、




「え? お姉ちゃん? あの京都に住んでる?」

「あぁそうだよ。そういやこの前、家来た時そんな話したっけか」



その瞬間、取り巻きの女は足を止めて、



「え!? 家? 待って、どういう事二人とも」

「…………」



やべ……ミスった……。急に言われたから圭としての記憶とごっちゃになっちまった……。取り巻きの女もびっくりしており、加えて南つばさも当たり前だが俺の言葉にびっくりしている。俺が慌ててフォローを入れようとした所、先に南つばさが作り笑いを浮べて、




「あぁえっと! 実は蒼井君と共通の友達が居て! その子からたまたま蒼井君のお姉ちゃんの話を聞いたの!」

「じゃあ家来たってのは」

「最近その子の家に遊びに行ったから私……」

「えでも、蒼井君の話しぶりだと蒼井君ちに行った感じだったじゃん」




取り巻き女子の言及に南つばさは俺の方をギロっと睨み付ける。仕方ねぇだろうよ……お前からしたらあの家は圭の家だろうけど、俺からすればただの俺んちなんだから……。俺は南つばさの目力に押されて、




「あぁ、悪い。俺の言い間違えだ。共通のツレから、こないだ南と家で遊んだって話を聞いてたから、それを言いたかった」




今自分がどんな表情をしているのか分からないが、俺はこの取り巻きの女子にそう懸命に話した。すると、この取り巻き女は怪訝な顔付きで、




「ねぇなんか隠してない二人とも」



とだけ言った。南つばさは微笑みを絶やさずに、




「もう何言ってんの、ゆうか」

「いやだって、つばさ妙に慌ててるじゃん。分かるよ私、さっきも何か話に割って入ってきたし」




取り巻きの女子が南つばさに詰め寄る。どうすれば良いのか。




「あっ、いたいた! ほら恭二! こっちこっち!」




聞き馴染みのある声。俺は少し安堵しながらその声の方へと振り向いた。

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