1の世界 「出会い」
ピピピピ ピピピピ
また同じ朝が始まる
いつも通りの駅で、いつもの電車に乗る
電車の中には数え切れないほどの人達、そんな窮屈な空間に耐えながら、僕はいつもと同じ音楽を何度もリピートして聞いている
ほんとに何も変わらない
ただ、一つ変わったことといえば、見かけない1人の女性がスマホを見るふりをして、こっちを見ている事だった。
いつも同じ電車に乗る僕は、いつも見かける顔ぶれを大体把握していた。だからこそ、初めて見る顔には少し興味があった。
だか女性は僕が興味の目線を送る前に、こちらに、まるで狼が獲物を狙うかのような鋭い視線を送っていた。
僕はなにか彼女にしていたのだろうか、どこかで会ったことがあるのだろうか、
そのような思考を巡らせてるうちに、いつもの駅に到着していた。
降りようとしている時でも、女性は僕にその鋭い視線を送ることを辞めなかった。
電車を降り、会社へ向かう
何ひとつとして変わらない…そう思っていた
だが会社へ向かう途中、どうしてもあの女性が気になる、1度戻ってみようと考えた僕は、行く道を戻り、駅へ向かった。
駅へ向かう道、ふとスマホに通知が入っているのに気づいた。
上司からだった
「拓哉!無事か!」
僕はなんの事かさっぱりだった
何を見て無事だと思っているのか、何も変わらないのに…
「無事ですよ、一体どうしたんですか?」
冷静にLINEを返した、すると、すぐに返信が来た
「お前がいつも乗ってる電車が事故ったんだよ!」
…は?
僕は何を言っているのかわからなかった。
事故?なんで?
ただ呆然とそんな事を考えていると、ふとあの女性の顔が浮かび上がってきた。
あの女性は僕と同じ駅で降りていない、僕が降りた後に事故があったなら、あの女性は電車の中に今もいるはずだ。
そんな事を考えると、いてもたってもいられなくなり、その後は何も考えずにただひたすら走った。
駅に着くと、その駅は封鎖されており、中には入れない状態だった。
チラッと中を覗いてみる。
誰かが歩いてくる。
あの女性だった。
傷一つなく、こちらに向かって歩いてくる
普通事故にあったなら、傷一つ無いなんておかしいはずだ、それに、僕と同じ駅で降りていないなら、なぜ女性はここにいるのか、僕は不思議でしょうがなかった。
目を細めてよく見ると、少し暗かったが、その女性の顔が見えた。
朝は見えなかったが、その顔はとても美しかった。
事故とかもうどうでもいい、いつの間にか僕はその女性に夢中になっていた。
その女性が近づいてくる
僕の頭の中は真っ白だった。
女性は僕に笑顔を見せた
その瞬間、女性は僕にキスをした。