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月夜に舞う後宮の第四妃  作者: 栗鼠咲
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第一章終話 帰還

些細なことでもアドバイスをいただけると嬉しいです。

とうとう岩景から帰ることとなった。

劉様が送ってきた増援部隊がそのまま護衛となって天羅宮まで送っていってくれるらしい。

壬莉達は中々不満そうではあったが、桃清妃の命令の為反論はしない。

翌日には岩景を出る。

その前に倫仙に挨拶をしておかないと。

淋珂は泉喬と共に天翔孔へと赴いた。


「いらっしゃいませ、お嬢さん」

「えぇ、ありがとう」

「今度はどの様なご用件で?」

「出発の挨拶にね。明日には天輪へ帰るの」

「そうだったのですか。これからもどうかご贔屓に」


倫仙は手を軽く振る。

しばらくすると馬のいななきが聞こえた。


「お馬と荷車もおつけします」

「泉喬の頼んだ荷物が、入っているの?」

「左様です。それと・・・」

「そうね、分かったわ。また会う事が有ると思うから、宜しく」

「どうぞご贔屓に」


泉喬は相変わらず薬を見ている。

素材になるという冬虫夏草を見せられた時は薬を飲めなくなった。

その時の泉喬の顔と言ったら腹が立つほど楽しそうだった。


泉喬を呼び天翔孔を出る。

宿の前までは馬車を御者が連れて来てくれるらしい。

その他に岩景に何も用はなかった為、淋珂はゆったりと宿に戻り其れからは部屋を出ずに過ごした。

泉喬は観光に行くと言ったっきり夜まで帰ってこなかった。

いつもは桃清妃の部屋の前に立っている筈の壬莉がいなくなっており、代わりに星羅という女官が見張っていたというのが唯一いつもと違うところで、相も変わらず桃清妃は自室でひっそりと過ごしていた。


何ら休養という要素も無く、本当に名目だけの休養旅行だ。

淋珂は寝台に座りつつ思い返す。

桃清妃のおかげでここまで簡単に犯人に近づけたのだろうとは思う。

そしてまだ本当の犯人は捕まっていない。

分かっているのは、地方貴族を存続させられるほどの財力を持った何か、ということだけ。

未だもやもやとした気持ちのまま、とうとう出発の日を迎えた。


泉喬があたりまえのように淋珂の馬車を操り、岩景を発つ。

行きとは違いある程度飛ばして帰った。

護衛として一つの部隊が周囲についている。

そのため、あまり警戒をすることも無く帰ることが出来たのだ。


相変わらず淋珂は馬車の中でぐったりとしていたのだが。


天羅宮に到着したのは4日後の夜。

こっそりと梅花宮へと入った。

明かりも灯さず静かに部屋へと帰る。

久しぶりの自分の部屋に、緊張がほぐれてそのまま眠ってしまった。


朝、当たり前のように起きると、泉喬が寝坊していた。

淋珂が起きてから少しして、「遅れました!」と部屋に入ってきたのだ。

もうすでにほかの女官が淋珂の準備をしてしまい、泉喬は笑いながら淋珂から目をそらし続ける始末。


「岩景で、はしゃぎ過ぎたんじゃない?」

「いやいや、もう4日も経っていますし」

「しかも、馬を操ってたし」

「それは否定しませんけど」


泉喬は不満そうだ。

それからしばらくして、トントンと扉を叩く音がした。

影からして男。

後宮に入ってこれる男と言えば劉様か宦官くらいだろう。

泉喬はゆっくりと扉を開けた。


「初めまして、淋珂様」


目の前にいたのは見覚えのある男。

全身地味な色の衣を纏い、腰に剣を刺している。


「貴方は・・・」

「私は泉稜、王様の許可をいただき参上しました」


泉喬はあからさまに嫌な顔をしている。

それどころか睨んでいる。

今まで見たことも無いくらい睨んでいる。


「泉稜さん、なぜここに?」


泉喬はとても微笑んで棒読みに言った。

相当嫌われているんだろうという事は目に見えてわかる。

淋珂はそんな二人を苦笑いで見ていた。


「失礼、今回私がここに来たのは、一つ伝言をするためです。王様からの伝言です」

{亥瑯から犯人を聞き出した。秘密裏にその家を消すからもう安心しろ}

「との事です」

「え、どういう事?」


泉喬は目を白黒させている。

いきなり何を言い出したのか、という目だ。


「天輪の貴族、斎李示(さい りし)が操っていたことが明らかになったって事です」

「誰、それ?」


いきなり犯人が分かったと言われ、聞いたこともない名前を聞かされた淋珂は固まった。

特に何も気にすることなく淋珂に犯人を報告するのだ。

淋珂が固まっている間に、泉稜はさっさと部屋を後にする。


「おに・・・、いえ、彼はどうしたんでしょうね?」

「ええ、彼は鬼ね・・・」


淋珂は何とも言えない脱力感に襲われた。

犯人を捕まえなければいけないのに・・・。


肩を落としつつ、淋珂は桂花宮を訪れた。

未莉など、桃清妃のそばにいつもいる女官はどうしてか桃清妃のそばにいない。

その代わりに天が桃清妃の近くにいた。


「桃清様、おはようございます」

「ええ、おはよう」


桃清妃は少し落ち着かない様子だ。

少し怯えた様な、少し楽しそうな様子。

淋珂は薄っすらまさかと思ったが、意を決して天に飛び付き投げた。

ただの女官で有る天は、淋珂の技術の前に呆気なく飛んでいく。

その手には包丁があった。

呆気にとられた様にその様子を見る淋珂。

その後、天を(陰)と(陽)に任せて地下へ行く。


「安心して、犯人は捕まっていないから」


桃清妃は落ち着いた声で言った。

その口から発せられた言葉は淋珂を驚かせる。

犯人が捕まっただの捕まって居ないだのと情報に翻弄され続ける淋珂。

淋珂は頭を抱えた。


「劉様は、真犯人の目論見通りに騙されて斎李示を捕らえたの。そもそも真犯人はそんな簡単には捕まらない人間よ」

「亥瑯が、嘘を吐いたの?」

「そうだといいけど、ね」


桃清妃は意味深げに言う。

そんな桃清妃の目は今まで見た中で最も鋭く、何処かを見ている。

四方を土で覆われている為その先に、その視線の先に何が有るのかは分からない。


「天は、こんな子ではなかった筈なのにね」

「そう、なの?」

「もちろん、でも今はもう、ね」

「何があったの?」

「悪~い、何かよ」


話しながら手を握りしめる桃清妃。


「真犯人というのは、私が捕まえられる相手?」

「少なくとも、貴女の仕事を達成するためには邪魔にしかならない相手よ」


桃清妃は淋珂に笑いかけた。


「今回の事件の真犯人を捕まえる、その仕事は変わらずあなたに依頼するわ。だけどね、焦らないでね。私は退屈が嫌いだから私の身に何か危ないことが起こってもいいの、犯人へ近づくための手掛かりになるからね」

「でも最初の依頼は」

「いつも通り、私を守ってね。これは前提、悪~い何かはこれからも私を狙ってくるわ。だから、お願いね」


桃清妃は手を振ると上に上がって行ってしまう。

淋珂はそんな桃清妃はを見送ると、深く息を吐いた。

(陰)が隣に現れて淋珂に頭を下げる。


「淋珂様、桃清妃のお願いを叶えてくださいますか?」

「もちろん、どれだけ時間をかけてでも、ね」


(陰)と淋珂は地下室で決意した。

真犯人がどのようなものであっても必ず捕らえると。

これ以降、後宮は今まで以上の戦場となる。

その事は淋珂にも良く分かっていた。



転婁は一日を木箱の中で過ごした。

隣の箱が明けられて生薬が取り出される。

その流れで開けられるのも厄介だったため、開封に必死で抵抗し宦官が箱から離れた瞬間にその場から逃げ出した。

一面に広がる建造物の塊。

広大な宮殿。


「ここが天羅宮ねぇ」


転婁は顎をさすりながら頷いた。

それにしても、どうして迎えが来ないんだろう。

第一お客さんが都の一貴族ではなく妃だなんて初耳だしなぁ。


転婁は混乱していた。

成り行きで凛という暗殺者についてきたら王城に入ってしまい逃げようにも逃げられない。

でもそのまま城内にいても捕まるし、どこかに隠れるしかない。

どうにか後宮に入っても、宦官と王のみが入場できる男だ。

わざわざ男を捨てたくないが、潜入することほど怖いことも無い。

淋珂に忘れ去られていた転婁は、ひっそりと薬用の倉庫に身を潜めていた。


それから淋珂が迎えに来るのに、10日が掛かった。

単純に転婁の事を忘れていた淋珂に慌ててかくまわれた転婁は、ずっと膝を抱えて梅花宮の倉庫にいた。

それから少しの間、転婁は拗ねて外に出てこようとしなかった。


淋珂には新しい仲間も加わり、本格的に劉様、桃清妃、そして村長に託された任務に取り掛かる。

たとえどれだけ時間が掛かろうと、すべてをやり遂げよう。

続きは書こうと思っていますが、いったん連載をお休みします。

一日おきに更新することを目標にこれからもやっていこうと思います。

これからもどうぞ、月夜を舞う後宮の第四妃をよろしくお願いします。

少ししたら新連載もしようかな、と計画しているので、よろしければそちらを目にしたら読んでいただけると嬉しいです!

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