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"もりびと"とは

「お父さんの一族は精霊の守り人(もりびと)なの」


 そう言った母の言葉を、陽はまた訳のわからない単語が出てきたな、と思いながら話を促すように頷く。


 話によるとこうだ。


 シオンの説明の通り、魔力を使うのには精霊の守護が宿った媒体が必要となる。媒体自体は使用者自身がよく手に馴染んでいるものや波長の合うものになるので千差万別で、使用者が自分で用意する。その後、その媒体に精霊の守護を宿らせるためにはまた、使用者に合った精霊にしてもらうことが必要だ。もし、違った合わない精霊に守護をしてもらうと、魔力が十分に使えないのだとか。そして、精霊の守り人は精霊と親和性が高く、魔力とどの精霊が合っているのかがわかる。そのため、精霊の守護は精霊の守り人と言われる者に依頼して、宿らせてもらうのがセオリーらしい。しかし、守り人は精霊士のように精霊を媒体にして魔力は使えなく、魔力の使い方は他の人たちと変わりがない。そして、精霊の大きさは力の強さを表しているらしい。


 この話を聞き終えた陽がはたと思う。母は確かに父の一族と言ったのだ。それではなぜ母は精霊が見え、契約をしているのか。はたまた契約はしていないのか。そう思い、母に尋ねる。すると、母は少し考える動作をしたあと、陽を見て


「お父さんと結婚するときにある儀式をしたの」


と言った。その先を聞こうと思い先ほどと同じよう頷いて待ってみたが、教えてもらえないようだ。父には時が経てば教えるなどと、強者のようなことを言われて陽が少し吹き出しそうになったことは内緒だ。


 そして、陽はシオンの言っていた魔法学校について聞こうと思ったが、先ほどから隣に座りながらずっとそわそわしている兄が気になりすぎた。なので、兄にトイレかと思い聞くと、兄は満面の笑みで答えた。


「陽!誕生日おめでとう!」


 あ、そういえばと陽が思っていると、父と母がおめでとうと言ってくれた。陽にとっては、誕生日よりも、精霊の方が衝撃的すぎて完全に抜け落ちていたが、今日は自身の16歳の誕生日なのだ。陽は覚えていてくれたことに嬉しく思い、少し照れながら感謝の言葉を口にする。それを見たシオンが忘れていたわけではないなどと言いながら、慌てて祝福してくれる。陽はあまり気にせずにシオンにも礼を言い、本題に戻る。


 魔法学校についてだ。実は守り人の話を聞きながら、自分は血筋が精霊と関係あるのならば特に行く必要はないと考えたからだ。しかし、父と母はどうしても行きたくない限りは行ったほうがいいと言った。行きたくないと言うのが陽の本音だ。理由は幼なじみで親友の蓮見結菜(はすみ ゆいな)と今の高校に決めた。それに、高校に入ってからできた友だちも多くいる。しかし、父と母が行った方がいいと言うのであれば、仕方のないことだと陽が考えていると


「通わなくても、通信制で授業を受けたら?」


と口を兄が挟んだ。陽は通信制というものがあるのかと驚いたが、父と母も驚いた顔をしていた。なにせ、より高い水準で家系の学習だけで偏りの出る部分をなくすために最近導入されたらしく、父も母も知らなかったらしい。そんなご都合主義があっていいのかと思いながら、陽は聞いていた。兄いわく、魔法学校に行くには寮生活になるらしく、陽と離れずにできないのかといろいろと調べてみた結果、ヒットしたのだとか。この男、執着的というかなんというか…。


 父はとりあえず現当主である祖父に聞いてみないことには決定はできないと告げ、スマホを片手にリビングを後にする。


 父がリビングを出た後、兄は陽にプレゼントを用意したから、夕飯の時に渡すと意気揚々に言った。そして、母も本日の夕飯について確認していた。この家では、誕生日の日には夕飯は全員で集まり、誕生日の人の好きなものを食べるという習慣がある。ちなみに、陽が今年お願いしたのはコロッケだ。陽は母の作るコロッケがこの世で1番と言っていいほど好きなのだ。だから、陽の誕生日にはほとんどコロッケが出てくる。少しいいレストランに行ったこともあるが、結局戻ってきてここ数年はコロッケをお願いしている。

 そんな話をしていると、祖父と話を終えたのか、父がリビングに戻ってきた。


「通信制でも十分な学習ができるように対応をしてくれるとのことだ。」


そう父が言い、それを聞いた兄がガッツポーズをしていたが、父がその代わりと続けた。どうやら条件付きのようだ。


 その条件とは、1つ目が学科の試験を定期的に行うというものだ。そもそも、学校ではわからないと次に進むことすらできない。そのため、試験などは行わないらしいが、通信制では理解度が把握しきれないので、それのチェックのためにも定期的に試験を行う必要があるのだ。

 2つ目が夏休みなどの長期休暇には一定の期間は学校の方で過ごす。実技を主に見てもらうためらしい。それもそのはずだ。元々力が強く、家庭学習では制御ができないから学校に通うのだから、実技をしないと意味がないのだ。


 父の言ったその条件に兄は少しがっかりとしていた。よほど陽と一緒にいたいと考えているのだろう。しかし、陽としてはそれだけでも十分すぎるくらいの譲渡であった。それに、長期休暇も全て潰れるわけではないようで、陽は安心した。父と兄に礼を言い、祖父にもお礼のメールを送っておいた。祖父からの返信は早く、


"わからないことはじいじに聞いてね(^ ^)"


といつも通り甘々のメールであった。花山院家は男家系であるので、女の子である陽にはみんな甘々なのである。だからこそ、陽には受け流すという能力が後天的に身についた。このメールにも動揺することなく、ありがとうとだけ返すほどに。

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