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はじめまして

 少女がはっと目を覚ます。何の夢を見てたっけと思いながら少女は時計を見る。23:56と表示されたそれを見てよかったと小さくつぶやく。少女は0:00にくるメッセージを自身のベットの上で寝転がりながら待っていたのだ。すると、時計は0:00になり日付が変わる。それと同時にお誕生日おめでとうというメッセージが彼女の通知を埋める。少女はなるべく早くに返信をしたくて、眠たい目を擦りながら起きていたのだ。こんなにもたくさんの人に祝われて感謝しかないななどと思っていると、


「こんにちは、我らの愛し子」


そう言って少女の部屋にどこからともなく現れたのは、白い肌に水で作られたようなワンピースを纏い、長い水色の髪をなびかせ、この世のものとは思えないほど美しく笑う女。

 彼女は"水の精霊"というらしい。正確に言えば、人がそう呼ぶもの。この現代日本において、これほどまでに非現実的なことはあるだろうかなどとぼんやりと思っている少女、名を花山院(かさのいん) (はる)だ。陽は現在、花の女子高校生を謳歌しているごくごく一般家庭に生まれの人間だ。だからこそ、自分は疲れているのかなどと思い目をこするが、水の精霊はそこにいる。そんな陽をみて、水の精霊は


「私に名をくださいな」


という。陽は訳がわからず、とりあえずベットに座る。そして、じゃあ、と言い少し考えた後


「シオン」


と答えた。あまり理由など考えずに音だけで決めたから、怒らないだろうかと陽は思っていた。しかし、それを聞いた水の精霊はとても喜び、陽の手を取り礼を言う。すると、触れた手の先から白い光の糸のようなものが出てくる。そして、光の糸が陽とシオンの周りをくるりと一周すると糸は消える。そんな様子を陽はぽかんとしながらその場に立ち尽くす。陽とは対象にシオンは満足気にその場でくるりと回ってみせ、


「よろしくねご主人様!」


と、満面の笑みで言った。それを聞いた陽はシオンが何を言っているのかわからず、は?と言いシオンを見上げる。

 シオンの説明によると、シオンは陽と契約を結びたくて、陽が生まれてこのかたずっとそばにいたが、普通の人間には見えず、陽もまだ見えない時期であったらしい。しかし、陽が16歳になったことでシオンが見えるようになったのだとか。そして、シオンに名を付けたことで、契約が成立したらしい。なんだそれは、などと陽は思いながら話を聞く。陽は


「そもそも愛し子ってなに?」


とはじめに言っていたことを思い出し、シオンに聞く。するとシオンが嬉しそうに


「愛し子とは我ら精霊が自ら力を貸し契約を結ぶ人間のことです。」


と答える。そして、人は精霊士というみたいですけど、と続け、陽はまた訳のわからないことを言っている。そもそも、"水の精霊"や"精霊士"と人が呼ぶなどと言われても、現代日本を生きる私において言ったこともないし、聞いたこともない。そんな、ことを当たり前のように話さないで欲しい。それに契約とか、勝手にしないでほしい。これはあれか?最近流行りの異世界転生か?でも、私は自分の部屋にいる、、などと考えていると、


「ご主人様の住む日本国というより、この地球において言われていることですよ。」


とシオンが答える。陽が世界規模なのか驚いたあと、はたとする。シオンに心が読めるのかと聞くと、口に出ていましたとシオンがにこにこと笑いながら答える。陽はバカにしてるのかと思いながら、シオンを見る。


 陽は昔から、考えていることが口に出てしまうクセがあるのだ。歳を重ねるうちに直そうと努力をし、今では頭を冷静にすることで口に出してしまうことは格段に減った。しかし、この状況で冷静になどできなかったようだ。


 そんなことを考えていると陽ははっと思う。先ほどシオンが言った言葉だ。シオンは確かに地球で言われていると言った。少なくとも、この16年間という人生で陽はそんなことを聞いたことはない。陽はシオンに日本ではそんな一般常識はないと言ったら、シオンが一般常識ではないからだと答える。またも、頭にはてなを浮かべる陽を見て、シオンが説明を続ける。



 要するにシオンが言うには、この世には魔力というものが実在する。魔力は人間が創作物で書くようなものと考え方は基本的に同じらしい。現在では創作物として物語などに出てくるが、火のないところに煙は立たないらしく、実際に魔力を扱う者もいる。魔力自体は全人類が持ち合わせている物だが、それが開花するかなどついては人それぞれらしい。小さい頃から開花する者もいれば、大人になってから開花する者もいる。もっと言えば、生まれて死ぬまで開花しない者もいて、大体の人間がそれに当てはまるらしい。力の大きさや種類も人それぞれで、全く違うという。また、昔から日本に伝わる妖などと他の国で伝わっている妖精など形などは様々だが、全て元になっているものは同じらしい。

 昔は魔力というのは身近にあったが、力を持つものを恐れた人間による魔女狩りがあったり、科学技術の発展により魔力というものが薄れてきてしまっている。だからこそ、魔力などないという世の中になってしまっている。しかし、こんな世の中でも魔力を開花させる者がいる。いわゆる現代でいうところの、霊力などがある者がそうだという。そのような能力は基本的に血筋が関係しているため、自身の家系で教育などを行う。しかし、そのような家系の生まれでない人間もいる。その者たちや血筋の中でも特に強く家庭内での教育を行えないものは国立の魔法学校に通う。魔法学校はこの地球に何ヶ所かあり、そのうちの一つが我が国、日本だ。


 そして、魔力は杖など人それぞれの媒体を使い、それらに魔力を乗せることで扱うことができる。また、媒体は精霊の守護をもらえることで使うことができる。その中でも、精霊士は精霊本体を媒体とすることができる。そのため、精霊の守護を媒体としたものより格段に大きな力を使うことができる。だからこそ、精霊士などと名前がついているんだとか。また、精霊士は貴重で人数がとても少ないらしい。シオンも陽以外の精霊士を知らないという。


 説明を聞き終えた陽は、


「じゃあ、私もその魔法学校とやらにいかなきゃいけないわけ?」


とシオンに聞く。シオンは親に聞けばわかるから今は寝ろとだけ言った。陽は親に聞くとかどういうことだと思ったが、時刻は夜中の1:00になろうとしていたため、眠たくてその通りにする。


 そんな陽の頭を我が子を見るかのように目を細めたシオンが撫でる。

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