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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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内通者

 お風呂で昔話を聞いた次の日の朝、ユリス、ルノアール、フィーヤはスッキリとした表情で天使と悪魔のメイド…エルとデルの元へ向かった。



 エルとデルは廊下の向こうから歩いてくるユリス達を見ながらエルが言う。



()()()、おはようございます」



 エルの挨拶にスッと目が細くなるユリス達。



(フェイナ様はフォローしてくださったのですね…)



 エルはユリス達の雰囲気が昨日とは別物になっているのを感じて心の中でフェイナに感謝する。



「お客様じゃないです、ユリスです」


「私はルノアールです」


「私はフィーヤです」



 そしてデルがエルの代わりに軽く頭を下げて応答する。



「…大変失礼いたしました、ユリス様、ルノアール様、フィーヤ様。何か御用でしょうか?」


「昨日の続き、私達の訓練に付き合ってもらいたいんだけど」



 デルもユリス達の目を見て何とか立て直したのを感じて言う。



「左様でございますか。…では、地下の訓練場でお待ち頂いても宜しいでしょうか?わたくし達もすぐに準備して向かわせて頂きますので」



 デルがそう言うとユリス達は背中を向けて地下の訓練場へと向かって行き、その三人の後ろ姿を見届けた後、エルとデルは準備をしながら話す。



「デル、どう思います?」


「やる気は感じられましたが実力は何も変わりません。なのでもう一度心を折りにいきます」


「そうですね…では戦闘用の装備に着替えて向かいましょう」



 装備を整えたエルとデルはユリス達が待つ地下の訓練場へ向かって行く…。





 ■





 ユリス、ルノアール、フィーヤは訓練場で準備運動をしながらエルとデルが来るのを待っていた。



 各々の武器の感触などを確かめていた時、地下の訓練場に二人の人影が入ってきてユリス達は言葉を失った。



 言葉を失う原因となった二人の人影、天使と悪魔のメイド達の装いがいつもと違い、言葉を失ってしまうほど凛として美しかった。



 いつもはフリルを適度にあしらった白と黒のメイド服を着ている二人はユリス達の知らない服を身に纏っており、エルは黒の軍服をモチーフにした装いで太ももまでの黒い編み上げのブーツを履き、素肌が見えているのは顔とホットパンツとブーツの間の部分のみ。



 手にもしっかり革の様な手袋をつけて腰には真っ黒の刀を下げ、その持ち手部分には軍帽が引っかかっている。



 デルはエルとほとんど同じ装いで、唯一違うのは白色を基調にしている事だけだった。



 いつものメイド服でも凛としている彼女が装いを変えただけで、こうも見栄えが違うのかと思いながら見つめているとエルが話しかけてくる。



「大変お待たせ致しました。わたくし達は本気でユリス様、ルノアール様、フィーヤ様を殺すつもりで心を折りにいかせて頂きますのでよろしくお願い致します」



 そう言われた瞬間、さっきまでの言葉を失ってしまうほど美しく見えていた二人が死そのものに見え、空気が一瞬で重くなったと感じるユリス達。



 一瞬身体が震えたがすぐに収まったユリス達はエルとデルを睨んで言う。



「そう簡単には折れないよ。死なない為にこっちも殺すつもりで戦うから」


「私も簡単に折れるつもりはありません。腕が無くなったって死ぬまで足掻きますから」


「目指した背中が見えるまで絶対に折れたりなんかしない!」



 ユリス達の言葉を聞いてエルとデルは微かに口端をあげてすぐに無表情になり軽く頭を下げて開始位置まで歩いていく。



「デル、これからの訓練楽しくなりそうですね」


「エル、それじゃあどちらが悪魔かわかりませんよ」


「あなたはようやく悪魔らしい表情になりましたけどね」



 ユリス達に背を向けたエルとデルは凄惨な笑みを浮かべていた…。





 ■





 一人の女性が寝ている部屋でフェイナとサクラバ・シンジは話をしていた。



「そうか…この人が神託で言っていた『白黒の眠り姫』か…」


「そ。見惚れないよーにねー」



 フェイナが冗談で言うと顔を真っ赤にしてサクラバ・シンジは抗議してくる。



「ばっ!…確かに綺麗な人だけど俺には心に決めた人がいる…」


「はいはい、聖女さんねー」



 図星だったのか更に顔を赤くして黙ってしまう。



 フェイナは女性の枕元に腰を下ろし、顔にかかっている前髪を優しくどかしながら問う。



「聖女さんの具合はどうなの?」



 サクラバ・シンジは誤魔化すように咳ばらいをしてフェイナに応答する。



「ああ、今は大丈夫だな。数日すれば起きるはずだ」


「そっか、まぁ目を覚ましてすぐ行動するわけじゃないからいいんだけどさ。でも聖女が行方不明になったらファーレン聖教国はかなり慌てるんじゃないの?」


「そうだな…多分、今頃大慌てだと思う。だけど俺はナナ様さえ無事であれば国なんてどうでもいい」


「ふーん、まぁいいんじゃないかな?守りたいモノがブレないのは強い証だよ。なんか異変があればうちの仲間が報告してくれるし。それで聞きたい事が色々あったんだけど?」


「ん?答えられる範囲だったら何でも答えるぞ」


「んじゃあさ?シンジ君って魔王に殺されたんだよね?能力って奪われたの?」



 サクラバ・シンジは当時の事を思いながら顎に手を当てて数分思案して口を開く。



「…いや、能力は奪われてもいないし、劣化もしていない。魔王が自ら俺の目の前に来て能力を奪って行かないのはあり得ない…考えたんだが、もしかしたら相手の能力をコピーする事が出来る可能性と、俺の能力が奪えなかった可能性、後考えられるのは…奪われたが、ナナ様に蘇生されたおかげで能力が魔王から抜けて俺に戻ってきたか…」



 フェイナはサクラバ・シンジの返答を聞き、アエリアを見つめながら考えを伝える。



「んー…多分コピー説が強いかな。能力が奪えない条件が不明瞭すぎて戦術に組み込むことは絶対に出来ない。蘇生されて奪われた能力が戻ったなら、魔王は奪った力が無くなった事を自覚するはず。素性を隠していたとしてももう一度奪いに来るはずだしね。ならコピー出来る能力として考えていけば最悪な事態も想像しやすくなる」


「なるほどな…」


「じゃあ、聖女さんが神の魔法を使った時のリスクは何なの?」


「記憶が混濁してしまうんだ。酷い時は消える」


「あら…じゃあさ、その記憶が消えるのは古い順?新しい順?」


「ランダムだと思う。一昨日の事を覚えていて、昨日覚えていないとか、昔はこうだったけど何でこうなったのかわからないとか言ってたから」


「んじゃあさ?今寝ちゃってるのは何で?」


「一気に魔力を使ったせいだな…睡眠で空になった魔力を回復させていると思ってくれれば」


「おっけー。私達の仲間みたいに何年もって訳じゃないなら大丈夫だ。じゃぁ…」



 フェイナは一息ついて問う。



「次の質問だけど、何故、今の今までシンジ君と聖女さんは生きているの?」



 サクラバ・シンジは何故、生きているのという質問に心臓が跳ねあがってしまう。



「…え?どういう事?」


「だってさぁ、おかしくない?神の魔法を使える聖女、神の声を聞ける聖女だよ?魔王が欲しがりそうな能力じゃん?コピーしたらオリジナルはいらないよね?逆に自分と同じ能力なんだから脅威になる可能性あるよね?なら何でさっさと殺さないの?それにシンジ君はその聖女を守る盾役、魔王だったらシンジ君は邪魔な存在だよね?なら何でシンジ君は殺されていないの?というか、何でシンジ君は聖女さんの傍に居る事が出来るの?魔王からしたら今回の様にシンジ君が聖女さんをどっかに隠しちゃう事もあるよね?シンジ君が魔王も手を出しにくいほど強い存在ならわかるけど、ユリスとルノアール、フィーヤに負けたよね?ていうか、そんな力があるならとっくの昔に倒してるもんね?敵の可能性もあってしばらく放置して、聖女さんと二人っきりにしたりしたけど何も行動しないし、その事についてはどうなのかな?」


「それは…」


「それは?」


「俺は魔王に喋れ『ここまで私達に魔王の情報を流している時点で喋れない様にされているとか、つまんない嘘ついてみろ?あんたがあの聖女の事をどう思ってんのか知らないけど、聖女を殺すよ?』…」


「だんまりね。『アル、聖女を殺して。終わったら私の目の前にいるシンジも』」


『わかった、すぐ行く』


「ちょ!ちょっと待てよ!!ナナ様を殺したらお前達の仲間は目覚めないかもしれないんだぞ!?」


「悪いけど、うちの眠り姫を目覚めさせるのは優先順位低いの。別の方法を探すからどうでもいいわ、聖女なんて」


「っ…」


「最後のチャンスをあげる。喋る?喋らない?」


「…わかった…喋るからやめてくれ…」


『アル、殺さなくていいから聖女の近くで待機しといて』


『わかった』


「それじゃあ喋ってもらおうかなー。んで?目的は何なの?」


「…俺は魔王側のスパイだ…」


「ふーん?で?」


「…魔王に聖域にいる時のナナ様の監視をしろと言われた…監視をする俺を生かしているというよりは使っている…聖域には魔族は入れない、無理に入ろうとすれば死ぬ。魔王はきっと入れるだろうがダメージは受けるはずだ。それに教皇という立場上、聖域に立ち入ってダメージを受けている所は見せられない、だから俺がその影武者をやったりしていた…」


「ちょっと疑問だったんだけど、聖域っていう便利なものがあるのに何で聖地セルファスを覆わないの?」


「聖地は昔からある場所だ。ナナ様が作ったわけじゃないから広げたりは出来ない。出来て維持ぐらいだが…今はナナ様もここにいるからきっと聖域は無くなってる」


「あっそ、聖域の事とあんたが殺されない理由はわかったけど、何で聖女は殺されないの?」


「俺がスパイとして動くからナナ様の命だけは助けてくれって頼んだ…多分それだと思う…」


「それはないね。あんたなんていくらでも替えが利くし。魔王が義理堅くあんた如きの約束を守ると思ってんの?ちゃんちゃらおかしいわ」


「…」


「なら別の理由だよねー…まぁあんたは聞かされていないみたいだし、詳しくはわかんないけど。それで?何で聖女をここまで連れてきたの?」


「どっちに転んでも聖女が助かると思ったからだ」


「なるほどねぇー、私達が魔王を倒せればそれでいいし、土壇場で裏切って私達の情報を魔王に流せばスパイの面目躍如だもんねぇ。んで?私達の情報は何処まで流してんの?」


「いや…何も流してない…」


「ふーん、まぁ信用なんてしないけどね。あんたは魔法も魔道具も使えない部屋で監禁させてもらうからよろしくね。後、無理に部屋から出ようとしたらその首が落ちると思っていいからね?」


「…わかった、だがナナ様だけは…」


「あんたが変な事しなきゃ何もしないよ」



 フェイナはサクラバ・シンジを拘束し、王都リライアが攻め込まれた時に使用した捕虜用の牢屋に閉じ込めた後、聖女とアルメラがいる部屋まで移動していく。



「アルー、お疲れ~。さっきの話は全部イヤリングで聞いてたでしょ?」


「聞いてた。やっぱり思った通りだった」


「んねー?まぁ、シンジの言ってる事が本当なら多分神託の部分から私達に関する情報は漏らしてないと思うけど…まぁ漏れてたとしてもこの屋敷なら安全だし、現場の状況はエルリとルエリが見てくれてるから大丈夫だし、不安要素が一つ消えた感じだね。男がいなくなったから聖女もちーちゃんの所に連れてこ?」


「わかった」



 アルメラはベッドで寝息をたてている聖女を横抱きで抱え、フェイナと一緒にアエリアが眠る部屋まで移動していく。



「でもさー、アクエリアの時みたいに洗脳とかしないんだねー魔王って」


「多分、聖女がいたからだと思う。聖女なら簡単に治せちゃうから」


「あー、その可能性あるかも。後はちーちゃん似のこの子が起きればねー」


 ズン…


「まぁさっきの話通りなら魔力が回復すれば起きるはずだから、明日にでも目が覚めてると思うけど」


「でもさぁ?じゃあ何でちーちゃんは起きないんだろうね?魔力ポーション110本飲んだって言っても、あれから一年だよ?なんか別の要因あるのかなー…ちーちゃんまで記憶が消えてたらヤダな…」


 ズン…


「忘れたらぶん殴って思い出させればいい」


「アルはちーちゃんの事になると割と暴力的だよね?」


 ズン…


「…ねぇウェイナ?訓練場からの揺れが凄いけど、エルとデルにあの装備の使用許可出したの?」


「んー?あの装備ってー?」


「ほら、軍服の」


 ズゥン…


「あー、『神軍(しんぐん)の白衣と黒衣』?エルとデルが訓練行く前に許可取りに来てたよー。もち許可出した!」


「本当にいいの?」


「それだけあの子達に死んで欲しくないって事だよ~。あの装備を着た二人と数分戦えればもし魔王がヤバかったとしても逃げるのは問題ないと思うしー」


 ズン…ズン…


「…その前に屋敷が壊れないか心配なんだけど。この揺れかなりヤバい気がするんだけど」


「…バックアップ組と連携取ったらやりすぎてないか見に行ってくる…」





 ■





 様々な魔法陣が描かれている窓が一切ない暗い部屋の中、数人の人影が一つのテーブルを囲み、話し合っている。



「聖女と人形が姿を消しました」


「いつからだ」


「昨日、神殿での奉仕が終わった後、聖域に移動した所はこちらで確認しています。ですが、深夜に人形が何者かに襲撃されて転移魔法で連れていかれたと報告があり、何名か犠牲にして聖域の中に聖女と人形がいるか確認に行かせましたが姿が見当たらず、本日も確認させましたが姿はなく、聖域も聖女がいなくなった事で機能が停止しております」


「その人形を監視していた奴の頭は覗いたのか?」


「はい、人形を連れていったのはこの三名です」


「兎の獣人、小娘二人…何としても人形を探して聖女が何処にいるか、勇者か天使、どっちの手の者か頭を覗け。手段は選ばなくていいが聖女は無傷で捕らえろ。人形は情報を取ったら殺しておけ」


「わかりました」



 応答した人影が音もなく立ち上がり、部屋から出ていく。



 そして部屋を出ていった者と話していた人影がテーブルを蹴り上げ、粉々にする。



 他の人影は避ける事もせずその場にただ居るだけだった。



 テーブルを蹴り砕いた人物が椅子に腰を掛け、不機嫌そうに鼻を鳴らし、愚痴る。



「フン…どいつもこいつも使えん…何故、たった二人の人間すらまともに監視出来んのだ。事の重大さはわかっているのか?」



 低く、重い声を更に不機嫌そうな声色に変えて脚を組み、何も発言しない人影をぐるりと睨みつけていく。



 人影はようやく反応を示し、口を開く。



「我が王よ。既に王は十分なお力を備えられております。そろそろ行動を起こしてもいい頃合いだと愚考いたしますが、いかかでしょうか」


「ほぉ?ガルダンリー、何故キサマがそう思ったのか言ってみろ」


「我が王は様々な能力をお持ちになっておられます。既にこの世界の人種など足元にも及ばない…ですのであの個体如きで王が一々悩まずに済むように今すぐにでも人種を支配する行動に移ってはいかがかと。もしご命令頂けれは早急に準備する事も可能でございます」



 王と呼ばれた者はガルダンリーという者の話を聞き、俯きながら息を吐いた。



 その音を聞いたガルダンリーは王を見つめていると王の口が開き、言う。



「ガルダンリー…キサマは何もわかっていない。あの個体がどれほど重要な物なのか、全く分かっておらん。あの個体は()()()()()だ。既に人種が我の足元に及ばないのはわかっている…だがな?人種如き、今更どうでもいいのだ。我は人種を支配した先を見据えている」



 ガルダンリーは問う。



「我が王…先を見据えている…とは?」



 王は更に呆れたと言わんばかりに息を吐き捨て、言う。



「神だ。あの個体は神の依り代、我が人種を支配すればいずれ邪魔をするはずだ。だから我の手の届くところに置き、神が降りた所で始末する。この世界での依り代は現在あの個体のみ…神殺しはその一度で成る。だから神をも殺せる力が必要なのだ。今、神が降りていないあの依り代を殺してしまえば別の依り代を用意する可能性もある…だから神ごと殺す為に新たな依り代を作らせない為にもあの個体が必要なのだ。わかったか?ガルダンリー」



 ガルダンリーは首を垂れながら言う。



「そこまで考えが及ばす申し訳ございません。でしたら私の駒も使い、居場所を突き止めるよう全力を尽くさせていただきます」


「さっきも言った通りだ、すぐ探せ」


「かしこまりました」



 そしてガルダンリーも部屋を出ていく。



「まったく…今ここにいるキサマ達には別の仕事を与える。今だに見つかっていない忌々しい天使の国を早急に探せ。どれだけ我を待たせれば気が済むのだ?今まで以上に力を注げ」



 残りの人影は言葉もなく、首を垂れてから部屋を出ていく。



 部屋の中は王のみになり、その王は一人きりの部屋で呟く。



「絶対にあの神に復讐してやる…!俺をこんな残酷な世界に連れてきたあの神を絶対に殺す…!」

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