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やたらとペットの犬(※ コーギー)に張り合ってデレてくる幼馴染の紗雪さん  作者: 時雨オオカミ
『彼女な幼馴染がペットの犬に張り合ってくるんですけど!』

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課題と、休憩と、膝枕

 幼馴染の譲羽(ゆずりは)紗雪(さゆき)は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。


 毎日放課後に俺の家に来ては、なぜか飼い犬のくるみに張り合うようなことをして帰るのだ。


「そうだ、犬飼君。昨日アップしていたくるみちゃんのお写真見ましたよ」


 家でお互いに課題をこなしていると、ふと顔をあげた紗雪が明るい顔をして笑った。彼女の座っている近くには、我が家のアイドルことコーギーのくるみが丸まって眠っている。すっかり彼女に懐いたようで微笑ましい限りだ。


 彼女自身もくるみのことは可愛いと思ってくれているようで、眠っている茶色い背中を撫でている。


 さて、昨日アップした中で特に人気だったのはっと……。


「昨日のっていうと、くるみが膝に頭乗せてきたときのやつだよな?」

「ええ、とっても可愛かったです」


 そうそう、確か俺が座ってテレビを見ているときに、くるみが膝を枕代わりにしてきたんだ。それが可愛かったから、上から頑張って起こさないようにして写真を撮ってアップしたのだった。


 写真を撮ったのも、今紗雪と一緒に課題をしているのも同じ茶の間だから、ソファではなく畳に座布団状態。ま、このほうが勉強してるときに背筋も伸びるし、なにより……その、リビングは両親がいるからなぁ。


 他の部屋といえば、俺の部屋くらいしかないし。彼女とはいえ、さすがにいきなり俺の部屋に招待するのは……こう、まだ勇気が出ない。

 ヘタレだなあなんて自分でも思いつつ、ふっと息を吐く。


 そろそろ、課題に着手しはじめて三十分以上は経つ頃だ。一人ならもう終わっているだろうが、紗雪と雑談を交えているためにもう少しかかりそうだった。


「少し休憩にしましょうか」

「ん? こっちはもう少しで終わるけど……分かった」


 俺が了承すると、紗雪は安心したように微笑む。それから、いつもかけている赤縁メガネを外してこめかみの辺りを軽く指で押さえる。目が疲れたのかもしれない。


「休むなら少し横になるか? 敷物でも用意したほうがよかったかな」

「んー、座布団もありますし、大丈夫ですよ」

「そうか? なら、俺は新しい飲み物を取って……」


 そこで俺は言葉を失った。

 メガネを机の上に置いたまま、突然紗雪が俺の膝の上に倒れ込んできたからだ。その体勢はまるで膝枕……って普通は立場が逆なのでは? 


「飲み物取ってこれないんですけど」

「えへへ、しばらくこうしていていいですか? くるみちゃんが膝枕をしてもらっているのを見て私もしたくなっちゃったんですよ。どうです? 可愛いですか?」

「はいはい、可愛いよ」

「あ、適当に言っているでしょう!」

「そんなことないよ」

「本当ですか?」

「本当だってば」

「ふうん? なら、なんで目を逸らすんです?」


 それはね、紗雪に膝枕してるっていうシチュエーションで死ぬほど萌えてるからだよ、なんて言えるわけないじゃん? 


「あ、犬飼君ったら、顔真っ赤〜!」

「ちょっ」


 無邪気に笑いながら手を伸ばしてくる彼女から、必死に目を逸らすようにして顔を覆う。なんだか、いつもからかっていることの逆襲をされている気分。


「男の膝だから寝心地悪いでしょ。普通に座布団を枕にしなよ」

「やーですよ、この膝はどーせ、いつもくるみちゃんの頭を乗せているんでしょう? 写真に撮った一回だけだなんてそんなことありませんよね! 絶対! だから休憩が終わるまでこのままです」

「こ、このまま? マジで言ってる?」

「マジもマジです。本気と書いてマジと読む〜」


 試される大地ならぬ、試される俺の理性……。

 紗雪は絶対に分かっていない。付き合いたてだし、まだ高校生だしとか俺がめちゃくちゃ自制しているのなんて、きっと分かっちゃいない。


 なんならこいつ、恋人って手を繋ぐ関係のことでしょ? とすら思ってそうだし。


「課題、再開しようよ」

「あと五分! あと五分だけでいいですから!」

「足が痺れちゃうんだけど」

「そのときはそのときですよ。足が痺れてたら休憩時間が延びますね」


 こいつ……めちゃくちゃいい笑顔で言いやがる。


「いいじゃないですか。いつもはくるみちゃんの特等席なんでしょうけど、今だけは私のものってことで」


 分かった、俺の負けだ。


「はいはい、お姫様の仰せのままに」

「ふふ、くるしゅうないですわ〜!」


 そのセリフ間違ってるんじゃないかな。

 やっぱり色々とゆるい思考の幼馴染は、世界一可愛いと思う。


 そんな風にふざけあう俺達のやりとりを聞きながら、くるみは大きな耳をぱたりと動かして、くあっとあくびをするのだった。

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