呼び出しと、アルバムと、犬スタ
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
しばらくお家デート的なのをしていなかったある日、突然俺は紗雪に呼び出されていた。
「なんで呼び出したの?」
「ふふん、見てください!」
そして彼女がドヤ顔で出してきたのは、なにかの手作りっぽいアルバム。
困惑のまま思わず受け取ったてしまった俺は、「え、見ていいの? ってかなにこれ」と首を傾げた。
「見れば分かります! さあ、中を見てください!」
依然、彼女はドヤ顔である。なんだろう、小さい頃のアルバムでも発掘して喜んでいるんだろうか? そう思いながら開いた俺は一瞬で撃沈した。
「どうです?」
「かわいいのごんげ」
見開きになっているアルバム。
その左右にくるみと紗雪の写真が一枚ずつ貼ってあるのだ。しかも同じポーズ、同じシチュエーションで撮ったものである。紗雪のほうはというと、可愛らしい犬耳のついたパーカー姿だったり、パジャマだったりの姿でくるみの真似をして写真を撮っている。
控えめに言って、最高だった。
なんせどちらも俺の好きな人で、飼い犬だから。
「えっと、これもらってもいい?」
「お、いい食いつきですね。いいですよ、これサンプルなので」
「サンプル?」
「ええ、私。犬スタにあげられたくるみちゃんのお写真……全部! 再現してアルバムにしてみようと思っているんです。私も犬スタはじめて写真をアップして……」
「それは却下」
ここで俺の、密かな独占欲が顔を出した。
紗雪のこんな可愛い姿を不特定多数に見せる? そんなこと許可できるわけないだろ!
「えー……なんなら、学祭で作って売ろうかと……」
「君、意外ととんでもないこと企むよね。ダメだよ」
「むー……せっかく作ったのに……」
「もうあるの!?」
こくん、と紗雪が頷く。
そうか……もうあるのか。
「なら、俺が全部買い取る。だから売ったり画像をアップするのはやめとけ」
「はあい」
こうして俺の中の平穏は保たれたのであった。
彼女の可愛い姿を他人に見せるなんてとんでもない!!




