挑戦と、デザートと、フルーツポンチ
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「やあ、紗雪。今日は俺のほうからデザート作ってきてみたんだけど」
「わ、私が話しかける前に……犬飼君が……!?」
なぜ驚く。確かにいつもは紗雪から話しかけてくるのがお約束だが。
「え、えっと……デザートって……?」
「ほら、最近水曜は紗雪がお弁当、作ってきてくれてるだろ? だから俺からもなにか用意したいなって思ったんだけど……紗雪は自分でお弁当用意してるしさ」
だからデザートのほうを自作してきたというわけだ。
作ってきたのはフルーツポンチである。あまり複雑なものはまだ作れないため、試しに作って持ってきた感じになるが……そのうちプリンとか、女子受けするだろうマカロンとかに挑戦してもいいかもしれない。
「……」
あれ、嫌だったかな?
そう思って紗雪を見たら、感極まって泣きながら天を仰いでいた。ええ……まるで尊い推しカプイラストを見つけたときのオタクみたいな拝みかたである。そこまでするか???
「一生大切にします」
「いや食べてよ?」
「大事に保存しなくちゃ……」
「いやだから、ちゃんと食べてよ? 食べ物なんだから」
「なら、もう犬飼君以外のフルーツポンチ食べない」
「それはちょっと愛が重い」
「写真撮ってアルバムに残します」
「それならおっけー。喜んでくれるのはいいけど、食べてくれないと俺も悲しいからさ」
「ふぁい」
そして今度は、完璧な写真を撮るのだと長時間粘る幼馴染の姿を見ることになったのだった。
食べるために作ったんだから早く食べて……。




