宿屋の風呂は銭湯だった。
異世界で、旅館に銭湯。
広いお風呂は掃除が大変そうですね。。
3人は美味しい料理に満足したので、今後のことについて話し合うことにした。
一「さて~とりあえずうまい飯も食えたことだし。どーするよ?」
斉「とりあえず風呂には入りたいな・・・」
玉「さっき横のお客さんが喋ってたんですけど、ここのお風呂大きいんですって。」
一「へ~銭湯みたいな感じかな?」
斉「だとしたらほんと日本だな。まぁ後で行ってみようぜ。」
玉「二人はいいですけど私は一人です~(泣)」
斉「お?なんだ一緒に入らないのか?(笑)」
玉「当たり前です!セクハラ!ド変態」
一「だいぶ辛辣だな。」
斉「先輩に向かってその口の聞き方は許せないな。」
玉「斉木先輩はデリカシーって言葉をきちんとイチから学んだほうがいいと思います!」
一「そうだな。それについては同感だ。」
斉「二人してひどいぞ・・・・」
一「まぁ冗談はさておき、風呂入った後はどうする?」
玉「今日は疲れたのでもう寝たいです。。。」
斉「たしかにな・・・色々有りすぎて今日は疲れたぞ。。。」
一「そうだな。今日は風呂入って解散するか。明日はどうするんだ?」
斉「まずは俺の身分証明書を変更する!(怒)」
玉「あのままでいいのに~(笑)」
斉「いやだめだ!てかお前のも変更しろ!ちょっと悪ふざけがひどいぞ。」
玉「まぁノリで作ったのは事実ですけどね。あれが毎回自分の身分証明書となるのはきついですね。」
一「俺だけまともな身分証明書だったからなぁ・・・んで、証明書の変更なんてそんなにかからないだろ。後はどうするんだ?」
玉「ギルドに登録してみたいです。」
一「なるほど。ギルドか・・・たしかにこの世界について知るためにもなにか組織には入っておいたほうがいいよな。」
斉「後は俺ら3人だけじゃなくて、もう少し別の奴らとの交流もしたいしな。流石に魔法使い3人だけのPTじゃいつか終わりが見えてるからな。」
玉「ってことはこのメンバーは解散ですか?」
斉「まだそうとはいってねーよ。もしかしたら新しいメンバーが入ってくるかもしれねーぞ。」
一「そもそも1PT何人までが普通なんだろうね?ぶっちゃけ俺らのPTは全員後衛なんで、前衛のPTと組まないと意味ないよな。」
玉「そういった話も明日ギルドで聞いてみましょう。」
斉「まぁ、あーいうとこに行くと、たいてい新人は絡まれるのがお約束だからな。それだけは覚悟しておけよ。」
一「よくあるテンプレ的展開ってやつだね・・・実際起きたらどう対処しよう。。。とりあえずギルドの中に入るだけでもなかなか大変そうだ・・・」
玉「とりあえず今日はお風呂入ってよく寝て、明日に備えましょう!」
一「そうだな。じゃぁ解散で。おつかれー」
斉「おつかれ~」
玉「おやすみなさい。」
3人は一旦自室に引き上げた。
一ツ橋は自室に来て風呂の準備をする。
「さて・・・準備するとはいったが・・・ぶっちゃけ手ぶらで異世界に来てるから着替えも持ってきてないぞ?部屋になんかあるかなぁ?」
部屋の中に入ると、まず玄関みたいなとこが目に入る。
下駄箱もついているようだ。
「異世界でも部屋に入るときは靴脱ぐんだ…完璧旅館だな」
ホテルだと靴のままだったりする。それはそれで落ち着かない。
やっぱり一ツ橋は日本人なのだと実感する。
奥には布団もきちんと整えられていて、部屋の隅にはランタンらしきものが準備されている。
いつでも寝れる準備はできている。
洗面台までついていた。
「トイレはさっき食事食べたところにあったから、そこに行けばいいとして・・・」
色々部屋を物色していると、日本の旅館みたいにたたまれたバスタオル数枚と、浴衣というと少し語弊があるが、寝間着みたいな上下の揃いがサイズ別に用意されていた。
また、歯ブラシのようなものや、ひげ剃りのようなカミソリ、洗顔用シャンプー、櫛、ブラシなど、旅館に揃っているものはアメニティグッズが一通り揃っている。ドライヤーは流石にないが、十分だ。
「ほんとこの宿のレベル結構高いんじゃないか?」
トイレは別だが、もうなんの不満もない。
異世界に来てだいぶ不便な生活を強いられると思っていたが、全くそんなことはなさそうだ。
これで大浴場まであるんだろ?飯までついてこのレベルで3000円とか超良心的な価格じゃん。
日本だったら最低でも8000円ぐらい取られても文句は言えないレベルのサービスの充実度だ。
ほんとこの異世界よくわからんよなぁ・・・和食は出てくるし、旅館顔負けのサービスだし。。。
「お、そろそろ20時になるな。」
ここの着替えと、タオル持って佐伯のところに行く。
一「斉木~風呂いくぞー」
斉「お~わかった。ちょっとまっててくれー」
一「わかった~」
少し待っていると、斉木が部屋から出てきた。
斉「おまたせ。風呂向かうぞ。んで?どっち?」
一「あっ・・・そういえば場所聞いてなかった。」
斉「まじかよ・・・まぁそういう俺も聞いていないんだけど・・・」
すると目の前に数人これから風呂へ行くであろう集団にぶつかった。
客A「お、あんたたちも風呂に行くのか?」
一「ええ。今から行こうとしていたのですが、どこが風呂かわからなくてロビーに聞きに行こうとしていました。」
客B「なんだ、だったら俺達と一緒にこいよ。ここの風呂はめちゃくちゃでかいんだぜ!」
客C「私達は何回かここのお風呂に行ってるので入り方などレクチャーしますよ!」
斉「それはありがたい。」
一「ありがとうございます。では一緒に行きましょうか・・・」
男5人でてくてくと浴場に向かって歩き始める。
ロビーとは反対方向に浴場はあるみたいだ。
3人はテンション高めに色々説明してくれた。
客A:アルブ(以下ア)「おう。そういえば自己紹介がまだだったな。俺はアルブ。横の2人と一緒に冒険者をやっていて、俺がリーダーだ。職は騎士だ。」
客B:イーゴ(以下イ)「俺はイーゴだ。アルブ・・・普通こういうときは、リーダーだけじゃなくてパーティー名とか言うだろ・・・まぁいい。このパーティー"ルイス"の中では俺が最年長だな。職は盾をやっている。」
客C:ウロス(以下ウ)「私はウロス。まだ初心者なので、わからないことが多いですが、改めてよろしくお願いします。あ、職はウィザードです。」
一「みなさんありがとうございます。では私も自己紹介をしないとですね。
私は一ツ橋 結城と申します。職はヘルパーです。よろしくお願いいたします。」
斉「俺は斉木 仁志という。職はウィザードだ。よろしくな。」
ア「ヘルパー?そんな職あるんだな。初めて聞いたぞ?」
イ「ふむ・・・俺も長年この冒険者をやっているが初めて聞いた。名前の響きからしてサポート職なんだろうな。」
一「やっぱりお二人も聞いたことがないんですね・・・」
ウ「斉木さんは私と一緒のウィザードですね。」
斉「おう。俺もまだウィザードについてはよくわかってないんだ・・・お互いに情報交換できると嬉しいぞ。」
ア「それにしてもお前ら変わった服装しているな?出身はどこなんだ?」
一「えっと・・・」
斉「日本っていう東の国だな。」
イ「ニホン?どこだそれは。」
一「・・・私達ここらへんの人間じゃないので・・・」
斉「実は俺らは異世界人なんだよ。」
斉木!!!それ話しちゃうのかよ!
斉木をめっちゃ睨むが、斉木は涼しい顔だ。
ア「異世界人だと~?うまいいいわけだな。それ言われたら何も言えねーわ。」
イ「いや、なんだか目がマジだぞ。異世界人は本当なんじゃねぇのか?」
一「はぁ・・・斉木がバラしちゃったので、もういいますけど、たしかに私達は異世界人です。
この世界とは違うところから来ました。」
斉「むこうには魔法がないから俺たち魔法に関してはからっきしさ。」
一「来ている服はスーツというものですね。向こうの世界では仕事着みたいなものです。」
ウ「なるほどですね~。だから見たことない服装だったんですね・・・
なかなか新鮮な出会いで感動しています!」
イ「まぁお前らみたいな服装はここら変だとめっちゃ目立つからな・・・風呂入っちまえばこっちの服に着替えられるから、そのまま着替えたままにしとけ・・・」
斉「まぁ確かにこの世界でスーツ着ているのは俺らぐらいなもんだな。」
お互いの自己紹介が終わって一通り話が弾んだ後、部屋の設備の話になった。
斉「部屋の中も見たけどさ、この宿結構充実してるよな。」
一「そうそれ思った。日本だったら、普通に8000円ぐらい取れると思うぞ。」
斉「想像以上に設備整ってて俺はビビってる。」
ア「この村の宿はここしかないけど、おれはここの宿のサービスレベルは都市のロニンに負けてないよな。」
ウ「そうですね。あそこはここよりも安くて簡易的な宿もありますけど、ここの宿はサービスの質から考えても安いと思いますよ。」
一「いきなり最初の宿が恵まれてるとか俺たちは幸せだな。」
イ「お前たちの元いた場所もこんな感じの宿なのか?」
一「そうですね。普通に日本の旅館と同じレベルのサービスだと思いますよ。」
斉「部屋入っていきなり布団敷いてあるんだもんな。ぶっちゃけ、獣人ってとこを除けば、ミーヤもチィも日本の旅館にそのまま働けるんじゃね?」
一「確かに。それぐらいすごいってことだ。」
ア「君たちの元いた場所は獣人はいないのかい?」
一「そもそも人間しかいないんですよ。あとはミーヤたちみたいな猫はいますけど、それは動物になってしまって、ミーヤたちみたいに言葉で意思疎通ができないです。」
斉「そもそも猫は2足歩行はしないからな。4足歩行だ。」
ウ「へぇ~やっぱ異世界は色々違うんですね。」
イ「お、ついたぞ、こっちが男湯だ。」
そうして見えてきたのは、銭湯まんまの風景だった。
「男湯」と右側には「女湯」と書かれた暖簾がかかっている。
中をくぐると、下駄箱があってその後に服を脱ぐ脱衣所が完備されていた。
ここにも洗面台が用意されている。
例によってここにもアメニティグッズが並んでいた。
タオルを干す物干し竿も用意されている。
また、一つ見慣れない器具が用意されていた。
丸い筒みたいなものが複数だ。
斉「これはなんだ?」
ウ「あーそれはですね。私もこの村で始めて使ってみましたけど、かなり心地よいですよ?」
一「心地よい?」
ア「そのボタンを押してみな。」
よく見ると丸いポッチが付いていた。
おもむろに押して見る。
ぶぉぉぉぉぉぉ~~~~~~
めちゃめちゃ強風が筒から出てきた。
一「なんだこれ? ドライヤーか?」
ア「ドライヤー?何だそれ。これはな。風呂で髪の毛が濡れるだろ?それを乾かすためのものだ。」
斉「まじでドライヤーだった。。」
ウ「あなた達の世界ではドライヤーというのですね?」
一「形は違いますが似たように髪を乾かす道具ならあります。」
斉「しかしこれ電力なくてよく動くな?」
ウ「これは中に風魔法を呼び出す魔石が入っているんですよ。」
一「なるほど。こういうところで魔法が使われているのか。」
斉「おもしれぇなぁぁぁ。」
ア「お前たちのところは魔法はないのか?」
斉「よくぞ聞いてくれた。俺達の世界は魔法ではなく科学!というもので全て動いている。」
一「電気って言って通じます?この世界の雷魔法みたいなものですね。」
ウ「デンキ?雷ですか。なんかそれをエネルギーにしようとどっかの研究所が頑張っていたのを聞いたことはありますけど・・・ふむ。やっぱり面白いですね」
イ「おーい。お前らもいい加減にくっちゃべってないで早く風呂はいるぞ。」
すでに素っ裸になっていたイーゴに呼ばれて、慌てて俺らも服を脱ぎだす。
風呂に入るだけでもカルチャーショックな出来事が多いなとおもう一ツ橋だった。
人間裸になれば自然と心の壁も薄くなると信じてる。