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コラボノストア   作者: 鈴藤美咲
トト様、ご来店です。
20/26

かぜはやんだ〈ぎん、ギン、銀〉

学園ラブコメです。

でも、ほとんどギャグです。


※人物像の設定、物語の展開はコメディーを狙った為に無茶で見苦しいものとなっています。

(トト様、ごめんなさい)


 時代は、たぶん日本の昭和。

 某県、某市の田園が広がる地区にサクラダファミリーを思わせる校舎の中高一貫校があった。


 サブタイトルを含めて、何処か危なっかしい予感がする。


 ロトくん、キミにはいつも迷惑をかけてすまない。


「諦めている。さっさと物語を始めろ」


 学ラン、着せるけど良いかな?


「ぐずぐず、もたもたするな」


 第2ボタン、ください。あ、行っちゃったーー。



 ★◯★◯★◯★



 1ヶ月掛けて、綴らせた恋文だった。

 辞書を捲り、想いを伝える文字を探した。ただ読ませるのではなく、クロスワードパズルを取り入れて文字を並べた。


 わたしのありったけの勇気を、届ける。

 お口のにおいを確認して、薔薇の香りのポプリ袋を制服に擦り付ける。


 あの人が、川下りをしながらやって来た。舟が接岸したのと同時に、わたしは叫んだ。


 ーー今すぐ、よんでください。


 確かに、あの人はよんだ。舟を漕ぐ竿の先端を空に向けて魔法陣を表し、白山羊を召喚させた。


 わたしの想いは、白山羊によって噛み砕かれてしまい、100%片想いをはっきりと突き付けられてしまったーー。



 ★◯★◯★◯★



 頭にくる夢を見てしまった。二度寝したから寝坊をしたのではない。


 加藤奈那子は山女魚の塩焼きを咥えながらロッククライミングをしていた。学校への近道は岩壁を越えるのが一番だと、加藤奈那子が咄嗟に思い付いた行動だった。


 岩壁を登り詰めたら、急下降。加藤奈那子はバンジージャンプを決行する。

 着地して、あとは学校の校門を潜り抜けるのみ。曲がりくねった路を駆け抜け、遭遇した慌てん坊のサンタクロースにローリングソバットを喰らわせ、加藤奈那子は校内に潜入するのに成功した。


 ナイル川のように長い渡り廊下、3,333段の階段。加藤奈那子は全速力で挑む。しかし、あとわずかで教室に辿り着く垣根の曲がり角で事態は急変した。

 人が、いた。加藤奈那子は「あ」と、驚いて、堪らず立ち止まった。


「おっと、ごめん」

 青銀の髪で翠玉の瞳の少年が、加藤奈那子の頭上を飛び、着地して振り向く。


「ぜんぜん、なんともない……。えっ?」


 〔3年S組〕


 加藤奈那子は、少年が羽織る学ランの襟に付いている小さな記章に、驚きが隠せないさまとなった。


 S組の生徒を、初めて見た。

 全世界より多分野で活動している尖鋭者の子女が集められて、極秘の育成を受けているS組の生徒を、(なま)で見た。


 きぃん、こん、かぁん、こぉおおん。


 ソプラノ声楽曲での、鐘が聞こえる。

 ヤバい。ホームルームの後に始まる、一時限目は漆黒の教師、羽住(はずみ)六右衛門(ろくえもん)の授業だ。


 加藤奈那子は「ちっ」と、舌打ちをする。

 興味深い相手と会えたばかりで退散するのは惜しいと思いつつ、自分のクラスの教室へと弾丸のように駆けていったーー。



 ★◯★◯★◯★



 加藤奈那子は2時限目の授業中に、遅刻寸前で遭遇した少年のことで頭がいっぱいになっていた。


 綺麗な青銀の髪、澄みきった翠玉の瞳。そして、色白な肌。

 今朝見た夢に出てきた男の子にそっくりだ。でも、フラれた。あ、しまった。名前を聞きそびれた。


 つい、ときめいてしまった……。


 加藤奈那子は寝に落ちた。顔面を机の上に貼り付かせ、よだれを垂らしていた。


 きんこんかんこん、きん、こん、かんっ!!


 “闘えっ! 歌が上手い者たち”(アナログ放送)を真似た授業の終わりを告げる鐘が鳴り、加藤奈那子は覚醒をした。


 何だか、頭髪がごろごろしている。

 寝癖を直そうとして掌を置いた、ふわりとした暁色の頭髪には白いチョークが無数に絡まっていた。


 やったのは、あいつだ。解答を黒板に書くを何度もやって、その度に白いチョークを持ち去ったのだろう。


 3つのしもべを引き連れて、何かと因縁を吹っ掛ける。自分の席の後ろにいる、あいつの仕業だ。


 加藤奈那子は机の上に並べた白いチョークを1本ずつ折り、黒板へと移動するとチョーク置きにぶちまける。


「加藤さん、学校の備品を乱暴に扱うとはいけませんね」

葉汐はしお様のおっしゃる通りですわ。ね、羅伊らい様」

「そうですわ、玲衣れい様。あら、いやだ。加藤さんったら、制服が白まみれになってて見苦しいですこと。露依ろい様、丁度よくお水が入っている器がありますから、洗い流して差し上げましょう」


 何をするにも一緒。クラスメイトの四人衆が加藤奈那子を囲んでいた。


 ーーひそひそ。また、加藤さんいびりが始まった。


 ーーこそこそ。から葉汐はしおだ。あいつ、加藤を敵のようにしているからな。


 教室内で、囁かれる声に加藤奈那子は耳を澄ませる。こんな状況下であるにも関わらず、誰一人止める気はない。


「露依、おやりなさい」

 唐葉汐は教壇の上に置かれている、花瓶を指差していた。

「露依様、葉汐様の言うことが聞けないのですか。ねえ、羅伊様もおっしゃってください」

「そうそう。わたくしも、玲衣様と同じですわ。さあ、露依様」


 何なんだ、この異様な情況は。


 加藤奈那子の制服を水浸しにするを巡り、四人衆が言い合いをおっ始めた。


「平等に、抽選でいきましょう」

「あみだくじですわっ! 葉汐様」

「いえいえ、羅伊様。じゃんけんを致しましょう」


「駄目よ、玲衣様。葉汐様からご指名を受けた、わたくしがーー」

 露依は「はっ」として、掌で口を塞ぐ。


 ぽん、ぽん、ぽん。


 露依の肩に次々と掌が押し込まれた。


「やるの? やらないの?」

 加藤奈那子は「じろり」と、露依を睨み付ける。


 露依の、花瓶を持つ手が震えていた。ひらり、ひらりと1枚ずつ舞い落ちる、花の弁。とぷとぷと、花瓶の中で波打つ水が滴になって、露依の頬に跳ねる。


 とん、とん、とん。


 肩に指の感触がする。葉汐様達だと、露依は振り返る。すると、露衣は「ひっ」と、か細く悲鳴を上げる。


 ざわざわと、教室内がざわめいていた。


「あ」

 当然、加藤奈那子も呆然となった。

 今朝の、あいつだ。ぶつかりそうになった自分を軽々と飛び越えた、青銀の少年がいる。


「下っ端に手を汚させて自分は清楚を装う。ガラパゴス、おまえこそ狸そのものなのだ」


 風がやむように、教室内が静まった。


「何故、俺をじろじろと見つめるのだ」

 視線を浴びる少年は、顔をしかめた。


 加藤奈那子のクラスメイト達は口籠るをしていた。ぼそっと、呟くものならば唐葉汐から矛先を向けられるのを恐れたのであった。


 唐葉汐から怒りを買った者はセコい嫌がらせを受ける。あの、加藤奈那子もその一人だ。


 そう、彼等はわなわなと唇を震わせている唐葉汐も見ていたのであった。


「よくもわたくしの名を弄くったわね。あなた、お覚悟はよろしくて?」

 唐葉汐は腕捲りをして、指の関節を「ばきっ」と、鳴らす。


「来いよ、ガラパゴス」

 青銀の髪に翠玉の瞳の少年は、黒の詰襟学生服の上着を脱ぎ、翠のトップスをあらわにした。


 闘いが始まるのか。加藤奈那子とクラスメイト達は、息を呑む。


 きんこんかんこん、き……。ごほごほ、かん、こぉ、はうわっ! きぃ……。はぁあっくしょいっ!!


 咳き込み、舌を噛み、くしゃみを連発する授業が始まるを告げる鐘の音がした。


「さらばだ、ガラパゴス。もし、また会ったら、今度こそ決着を着けよう」


 少年は、脱ぎ捨てた学生服の上着を羽織り、教室から去っていく。


 ぞろぞろと、生徒達は席に着く。しかし、加藤奈那子は脚を止めた。床に、生徒手帳が落ちていた。加藤奈那子は拾い、表紙を捲る。


 〔3年S組 織本銀次郎〕


 あいつの落とし物だ。加藤奈那子は、そっと頁を閉じるーー。



 ★◯★◯★◯★


 S組は、強者が集うクラス。そして、生徒は誰なのかは一切公表されていない。


 加藤奈那子が通う《暁の風学園》内で語り継がれている謎だった。

 もし、S組の生徒の顔と名を知ったらどうなるのか。S組の教室内が学園内の何処にあるのかさえも知らない。だから、生徒手帳を返せない。


 放課後、外はすっかり日没となっていた。


 加藤奈那子は居残り授業を受けていた。

 英語の小テストで平均点以下の為“単語を覚えるまでは帰れま10”という、ペナルティーを課せられたのであった。


 加藤奈那子は漆黒に染まった帰り道を歩いていた。およそ1時間掛けての下校は日課だが、空腹で足元がおぼつかない。小石に躓き、転倒をして膝を擦りむく。気になる大樹の幹に激突して額に裂傷を負う。


 まだ、学校に居残っていた方が安全だった。

 力尽きて緑の大地に寝そべる加藤奈那子は、満天の星を見上げていた。


 ーーわん、わん、わんっ!


 腹の虫が吠えている。

 腹式呼吸をする加藤奈那子は空腹のあまり、思考回路が寸断されていた。


 ーー待て、食べるのは止めとけ。


 腹の虫の食欲は阻止されてしまった。

 もう、終わりだ。加藤奈那子は泣き崩れても涙を拭わなかった。


 ……。まてや、コラ。


 腹の虫が何で、犬の鳴きをする。それに『止めとけ』は気に入らない。


 加藤奈那子は星空から腹部へと目を凝らした。

 白いまんじゅうのようなプードル犬が猫背になってお座りをしている。


 加藤奈那子の頭の中で「ぷつり」と、弾ける感覚がした。そして「がばっ」と、プードル犬を羽交い締めにすると、仁王立ちになった。


 辛子とポン酢で食べる。


 プードル犬は加藤奈那子によって、肉まん扱いされてしまった。


 ーーぎゃん、ぎゃん、ぎゃんっ!


 さあ、噛み砕かれなさい。


 加藤奈那子はプードル犬の頭に向けて、口を大きく開いていた。


 ーー本物は、こっちにある。だから、そいつを食べないでくれっ!


 加藤奈那子は「ちっ」と、舌打ちをする。


「すまなかった」

「飼い犬を散歩させるのにリード無しがどれだけ危険かを教えただけよ」


「ああ、飼い犬がお前みたいな奴に喰われるのにな」

 プードル犬の飼い主が、加藤奈那子に肉まんを差し出す。


 加藤奈那子は肉まんをばくばくと、頬張った。そして、指先にくっつく肉まんの皮を「ぺろり」と、舌に乗せる。


「ふう、ごちそうさま」

 加藤奈那子は肉まんの包み紙で鶴を折っていた。そして、掌の上に乗せる折り鶴に「ふっ」と、息を吹き掛ける。


 折り鶴はひらりと、宙を舞う。すると、プードル犬の飼い主が指先で折り鶴の羽を挟む。


「腹一杯になったか?」

「勿論よ」


「そうか」

「あんた、織本銀次郎だよね」

「何故、俺の名を?」


 加藤奈那子は鞄から一冊の生徒手帳を抜き取る。


「キミが、これを?」

「ちゃんと大切に扱いなさいよ」


「ああ、ありがとう」

 プードル犬の飼い主は、織本銀次郎は羽織るジャケットの裏ポケットに生徒手帳を仕舞う。


「あんたはS組よ」

「つい、一般クラスがどんな日常を過ごしているのかと見たくなった。でも、誰かを助けるのに理由はない」


「そう、なんだ」

「言い方が悪くなるが、偶々だった。だけど、俺はーー」


 織本銀次郎はズボンのポケットに掌を入れる。そして、抜いた。


「あら、綺麗ね。ブローチ?」

「おまえに、あげる」

「どうして? 見たまんま、大切な宝物なのでしょう」


「いつ会えるかはわからない。それを見て、俺を思い出してくれるだけでもいい」


 加藤奈那子は「ぼっ」と、顔を真っ赤にさせた。


「俺も約束する。おまえを、忘れないと」

「う、うん」


 加藤奈那子は織本銀次郎と掌を重ねる。


「あ、あのね。ちょっと、お願い事を頼まれて」

「ああ、いいとも」


 加藤奈那子は織本銀次郎と目を合わせ、瞳を閉じる。そして「ほう」と、甘く息を吐く。


「おまえ、肉まんを食べただろう」

「意地悪」


 翻した織本銀次郎は、プードル犬を繋ぐリードを固く握りしめ、緑の大地を駆け抜けていった。


「これ、銀次郎にそっくりね」

 加藤奈那子は、掌の上に乗せる“銀の狼”の象にそっと、口づけをしたーー。







登場人物。

加藤奈那子→カナコ。

織本銀次郎→ロトくん。

唐葉汐→カラバッジオさん。

他→ラガン三姉妹さん。

名前だけ言われて実際には登場しなかった、羽住六右衛門→ハロルドさん。



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