せっしょく
最近の客はヤバイ。
遊園地で着ぐるみのバイトを始めてまだ1ヶ月だけど、最近のパリピ、マジはんぱねぇ。
正面ゲートから入場してくる集団客を見て思った。
何がヤバイかっていうと、格好が。彼らは全身青いボディペイントの裸の集団だった。映画で例えるとアバターっぽい感じだが、背が低いからファンタジーに出てくるゴブリンと言った方がより近い気がする。そいつらが入園口前広場にどんどん溢れてくる。一番はじめに入ってきた者なんかは暇そうに尻を掻きながら、キョロキョロあたりを見回している。その様子は観光地に出没するツアー客を連想させた。
裸の集団が遊園地に来たっていうのに、あんまり驚かない自分がいる。冷めた感想しか出てこない。随分気合の入ったファンタジーコスプレ集団が来たなと、ヤバイなと。それくらいしか思わない。ちょっと虚しくもある。他にも、日本やっぱ終わってんな、とか考えたけど、そんなのは何年も前からずっと思ってることで今更って感じがする。
この遊園地ははっきり言って過疎っている。近々潰れるって噂もある。実際今日来た客はほとんど皆無だった。だからあんな酷い客を受け入れるのも経営状況を考えれば仕方ないのかもしれない。
なんにせよ!俺がやるべきことは決まっている。ゲートをくぐって入ってきた以上どんなヤバイ奴であっても客は客。ニコニコ笑顔で対応しなければならない。俺は外から見ればピンクウサギのかわいいマスコットだから、中でどんなに笑顔をつくろうが関係ないんだけど、こういうのは気持ちが大事だと、先輩のおっさんが初日に教えてくれた。
握手から写真まで、どんとこい。そう心で呟いて気を取り直すと、俺はゴブリンコスプレイヤー集団に手を振りながら近づこうとした。しかし、途中で足を止め、思わず絶句する。
突然で悪いけど、音楽ライブでタオルをくるくる回すやつあるじゃん?頭の上で振り回すアレのこと。それをちょっと想像して欲しい。それで、もしもそのタオルを人の生首に持ち替えたらどうなると思う?かなりグロいと思う。ちょっとありえないぐらいだ。今、目の前にそういうビジュアルがあった。
血の気が引いた。コスプレの小道具にしてはやりすぎに思う。
やだなぁ。関わりたくないなぁ。
だが、仕事である。それっぽい仕草で歩み寄った。セリフは業務外なので、リアクションで相手に気持ちを伝えなければいけない。可能な限りオーバーな手振りで、
夢の国へようこそ!私はここに住む妖精ラビットちゃん。よろしくね。
という雰囲気を演出し、彼らを出迎えた。すると、一番正面にいたゴブリンコスプレイヤーが俺に目を合わせてきて、
「ヴォエ!」
と鳴いた。