3 独り
かあくんはひとりぼっちの病室でたくさん泣き、怒り、恨み、悲しみ、諦めないぞと誓いました。
看護師さんが安静にというのを無視して隠れて筋トレを始めました。このままだと引退させられてしまう。追われるような入院生活。
しかし、ある日、突如ちぎられるような痛みに襲われ、緊急手術。
内緒でやっていた筋トレで更に翼を痛めてしまったのです。
かあくんは心の内に閉じこもってしまいました。
退院はできましたが、やはり満足にとぶことはできません。リハビリに通うように言われましたが、頭の中にもやがかかっているようでちゃんと話を聞けたのかどうかもわかりません。
家に着いた時、体はぐったり疲れていました。入院生活のせいもあったんでしょうが、ひとっ飛びの道のりがひどく長く感じられました。
飾られていたトロフィーも賞状も盾も全部しまって、かあくんはひきこもりました。でも、かあくんだってこのままじゃいけないとわかっていましたから、気分転換にと外にでかけようともしたのです。
しかし、大人気の選手だったことが災いしました。一歩外に出るやいなや、ご近所さんにごにょごにょ噂され、新聞記者に辛いことを聞かれ、ある時なんか
「怪我なんかしやがって!」
とファンの誰かに石を投げられることもありました。
もちろん、気遣って差し入れをくれたり、優しい言葉をかけてくれる方だっていなかったわけじゃないんです。でも・・・
もう、かあくんはだれとも口を聞きたくなくなってしまったのです。




