表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ココノツバナシ  作者: 高岡やなせ
怪の公式 編
32/83

会議 ─アンダースカイ─

ここより超能力を語ります。


(* ̄∇ ̄)ノ


いざ、「怪の公式編」、始まり、始まり。

 二十年程前に起こった出来事。


 それは四界(・・)を巻き込んだ大戦があったこと。


 一つは天界。天神皇の守りし世界。天人たちの住まう場所。


 一つは魔界。魔王皇が治めし世界。魔人たちが(たむろ)う場所。


 一つは妖界。妖帝皇の遊びし世界。妖人たちが寝付く場所。


 最後の一つは間界げんかい。治める皇のいない、人間たちが生きる場所。


 それらの者たちが、一年近く戦い続けたということ。


そして──。


 ──と言う、まるで夢物語のようなことを議題(テーマ)の一つにした会議が、二十年程前のある日、ある場所、ある時間にて行われたということ、だ。





 ─────





「そんなことが本当にあったなんて…この目(・・・)で見てなくてはどうにも信じられなかったな。四界大戦などと、お伽噺もいいとこだ」


 二十代半ばの日焼けした褐色の肌を露出させた青年は、皮肉気味に口元をあげて肩をすくめた。


「ええ、ええ。ですから見ていただいたのです。さすがに、さすがに、妖たちの世界までは危険を伴い過ぎるので、こちらでの戦闘のみの観覧になりましたが」


 五十代に見える細身の男は、丸眼鏡をくいっとあげて丁寧に答えた。


「…………その世界って、私でも簡単には行けない場所?」


 簡素な服に身を包む、十代に届かない少女は、無表情な顔を可愛らしく傾けた。


「さぁ、さぁ…どうでしょう。私自身も、そちらへは足を踏み入れたことがないので…しかし、可能性としては…」


 丸眼鏡を光らせる。褐色の青年はそれで充分だと応えるように顎に手を当てた。


「ゼロではない、か。まぁ、当然だな。なにせ、あの軍勢の中にいた東洋の少年は、むしろ自分が率いて向かったように見えたからな 」

「はい、そうです。つまるところ彼は可能性の塊なのです」


 褐色の青年に賛同しながら、丸眼鏡の奥の瞳を閉じた。


「それで…結局、お前は何が言いたい。その娘と俺に、四界大戦あんなものを見せておいて」


 顎で少女をしゃくりながら、記憶の中にある景色を思いだし、不敵そうに丸眼鏡の男に問いかけた。


「私ですか?私は結局のところ、あなた方は普通ですよ、と言いたかったのです」


 二人を平等に扱うように見た。少女はきょとんと呆けた。


「…………普通、なの?私、化け物って言われたよ?」


 特徴的な間の空くしゃべり方。相手の様子を伺うようなそのしゃべり方が、癖になるような生き方をしていたことを彷彿させる。


「胸くそ悪い話だな。この娘が化け物なら、俺はなんだ?本物の異界者(あんなもの)を見てしまったあとじゃ、冗談半分に悪魔などとも言えんじゃないか」


 憤慨したように青年が地面を踏む。びくりと体を震わす少女を見て、ばつが悪そうに頭をかいた。


 その二人を、満足そうに眼鏡越しに見ていた男は口を開いた。


「だから、言いましたよね?あなた方は普通です。普通の〃人間〃なのですよ。それをわかってほしくて、あのようなものを見ていただいたのです」

「…………じゃあ、またみんなと暮らせる?」


 少女の問いかけに、今まで優しい色をしていた瞳を伏せて、男は首を振った。


「申し訳ありません。それは私にもわかりません」

「…………そう」

「ときに正直さは残酷だぞ」


 無表情にもわかる少女の落胆ぶりに、青年の方が溜息をついた。しかし、男は誠実な声色で告げる。


「あなた方に嘘はつきたくないのです。それにもう一つ。私が伝えたいことがあります」


 男の真剣さに含まれる真意がわからず、青年は頭を揺らした。同時に少女も男を見ていた。


「…なんだ。あのあとだ。大抵のことでは驚かんぞ」


 皮肉を込めた言いぐさだったが、青年は男の顔を見て、それ以上は言葉を続けなかった。大人しく待つ。


「驚かすつもりはありません。ただ私は…」


 ────と、真意を語った。


「どうでしょう?これが私があなた方にお伝えしたかったことです。これが私の全てです」


呆れた顔の青年よりも、一つ早く少女が口を開きかけた。


「…………私は…」

「おいっ、娘。そう簡単になびくなよ」


 慌てたように声をあらげた青年に、少女は黙りこんだ。


 その少女の顔が悲しそうに見えたのか、青年は気まずそうに男に視線を向けた。


「疑うのですか?」

「疑う…わけじゃない。あれを見せられて、信じんわけにはいかないからな。むしろ逆だ。お前の話を信じる。だからこそ報酬を聞かせろ、というだけだ。お前への俺たちからの報酬は…〃協力〃と言ったところか。娘、お前も何かしら言っておけ。ただで動くには…」


 男の問いかけに、青年は少しだけ考えてから応えた。そのまま少女にも同じ意思を促し、最後は言葉を詰まらせた。


 少女はまた首を傾げた。


「…………私?報酬?」

「欲しいものだ。なんだっていい。こいつに言うんだ」

「…………欲しいもの…私の…欲しいもの」


 少女は繰り返す。そして小さく呟いた。


 青年は驚き、次に苦虫を噛んだように頭を抱えた。男の方は優しく頷いた。


「では、では、あなたは?」

「俺か?そうだな。軍人上がりのはみ出しものが欲しがるものか…」


 青年は上を見上げてみた。


 空の真下のこの場所で、自分はいったい何をしているんだ、と考えながら、欲しいものを探した。


 そして。


「そうですか。これで私たちは同盟者ですね」


 三人は、同じ道を歩き始めた。





 これが、二十年前の最初の会議だった。


 議題。


①。真意を伝え、了解を得る。


②。互いに同位であることを認め、互いに有益となる報酬を取り決める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ