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結局、その後このまま居られても困ると半ば強引に追い出された…



『はぁ~』



どうしてよいのかも分からない。出入り口付近の壁に寄りかかり、ズルズルとゆっくり座り空を見ながら途方に暮れていた。




キ―ッ!




『お父さん、早く!』




目の前に急停止するタクシー。そのタクシーから急いで降りてくる女性とその旦那さんらしき人。


俺は一目で静の両親だと気づいた。




両親も気づいたのだろう。一瞬目を合わせ、すぐさま病院の中へと走り去っていった。




………







外に出てどのくらいたつのだろう。真冬の寒さは全身を小刻みに震えさせた。


手をさすり、息で暖めようと手のひらに息を吹きかける。そして、ポケットに冷たい手を入れると…




そこには…






アクセサリー…





静とお揃いのアクセサリーは今の心境を表現するかのように冷たく冷えきっていた。




『………静。………大丈夫かな』





頼む…無事でいてくれ…





俺はそのアクセサリーを強く握り締め、膝を抱え涙した。そして、何度も何度も繰り返し無事を願った…





『君が隆弘君かね?』





ビクッ!





急に後ろから呼ぶ声。


とっさに振り向くと、そこにはさっきタクシーから降りてきた男性が立っていた。



俺は急いで涙を拭い、すぐさま立ち上がった。





『……はい』





まともに男性の顔を見ることも出来ず俯いていた。見れなかった…怖かったから…


殴られるとか怒られるとかじゃなくて、静の安否が表情に出てるんじゃないかって…





『君が隆弘君か…』




……え?




その男性の声は怒りに溢れてる訳でもなく、悲しんでる訳でもなかった…





『不思議だな……君に対する憎しみが全くといって良い程湧かないんだ。静なぁ…家では君の話ばっかりするんだよ』




……え?

その後、その男性は一人事のように話始めた…





『毎日…君の話ばっかりするんだよ。隆弘~隆弘~ってね。君と出会ってからの静は明るくてな~。こっちが嫉妬するくらいだったよ。』




俺は、さらに深く頭を下げた…




『どんな子か一度家に連れて来なさいって言ってもなかなか連れてこなくてな。あははははっ…』




笑ってる…静は無事なのか?





俺はゆっくりと顔を上げ、男性の顔を…






『…こんな状況で』







『……う……ぅ……』







『………会うなんてな』






大の大人がこんな若造の前で泣いていた。人目気にせず涙を流していた。





『ほ、本当に申し訳ありません!』





俺は土下座した!

額を何度も地面に叩きつけ…


静に、両親に、自分の不甲斐なさに涙した…

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