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『早くして下さい!出血がヒドいです!』
『君!何でこんなになるまで放っておいたんだ!』
『………。』
俺は何も言えなかった…。
急いで担ぎ込まれた静。勢いよく閉められた救急車はサイレンを鳴らし走り出した。俺も救急車の後を追い掛ける様にバイクを走らせた…。
赤く光るランプがヤケに眩しく、いつもは何気なく見る救急車が今は……静を連れて行ってしまう。縁起でもない事まで考えてしまう。そこまで追い込まれていた。
病院に着いた静はそのまま手術室へと運ばれ、俺は…待たされた。
深夜の病院は怖い程に静まり返っていて、この静けさが体を引き裂く様な感覚に襲われる。
静……大丈夫か?
助かるのか?
俺と一緒にいたから?
嫌な事ばかり考えてしまう。俯き、祈りながらひたすら待ち続けた。
刻々と時間だけが過ぎていく…。あれからどの位の時間が過ぎたのだろう…
カッ…カッ…
手術室の方から誰かの足音が…
俺はすぐに立ち上がり、足音の方を見つめる。
ゆっくりと歩み寄ってきたのは男性の医師だ。
『…先生…』
『そんな顔するな!とりあえず手を洗って来なさい!』
え!?
言われるまで気付かなかった。真っ赤に染まった手のひらと上着。その瞬間、頭の中が真っ白に…
先生に言われるがままにトイレで手を洗う。そして、ふと顔を上げた瞬間……
泣いている事に気づいた…
俺……大変な事をしてしまったんだ…
いくら擦っても静の血が落ちない。涙で視界が歪みどこを洗っているのかも分からない…。
『…う……うぅ…』
そのまま泣き崩れた…。
鏡に映し出された自分。自分がしてしまった事の重大さに気づいた時にはもう…