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『早く行けや!うぜぇんだよ!』
『い〜や〜だ!』
隆弘の腕にしがみつき、離れようとしない沙耶。
こんな関係を長々と静には見せたくはなかった。
とりあえずこの場を離れるか!その場にいろよ…静!
隆弘は強引に沙耶の手を払い、バイクに跨がった。鍵に手を添え、静の方を見る。すかさず目で合図し、一気にエンジンを掛けた。そして、アクセルをおもいきり吹かした!
ブオン!
『ちょ…どこいくの?隆弘!』
あまりの強引さに驚きを隠せない沙耶。
そして、茂みでジッと見つめていた静。
隆弘?どこいくの?おいて行かないで?えぇ!?
静は置いて行かれると思い、急いで飛び出した。……沙耶達の前に!
ブオンボボ〜!
隆弘?何で行っちゃうの?
静が飛び出した時にはすでに走り出していた!隆弘の背中を目で追い、自然と後ろを振り向いた。そこには腕を組んでジッと見つめる沙耶がいた。
『アンタ誰なん?』
『え?』
沙耶の機嫌の悪さがハッキリと分かる顔付き!静は蛇に睨まれたカエルの様に固まってしまった。
静に歩み寄る沙耶。徐々に影に包まれていく沙耶の顔は悪魔の様にも見えた。
『アンタ誰なん?アンタのせいで隆弘行っちゃったじゃん!』
『……誰って…』
怖くて怖くて…
あまりの恐怖に足がすくむ。そして、しゃがみ込んでしまった。
隆弘…助けて…
沙耶ともう一人の女が歩み寄る。そして、後ろの方で男達が笑っていた。
…怖いよ
その時!
『おい!』
いきなりの激痛が静を襲った!
沙耶が力いっぱい静の髪を引っ張っていた。
『痛い痛い!私は何もしてないでしょ?』
『うるせぇ!何かムカつかねぇ?コイツ!』
『痛い!』
『痛いじゃねぇし!お前は隆弘のなに?』
隆弘…隆弘…隆弘…
痛みを必死にこらえ、隆弘の助けを待つ静。蹴られ、叩かれ、泣きながらも隆弘を信じ続けた…
痛い…痛い………
意識が徐々に遠のいていく…。そして、そのまま横に倒れ込んでしまった。
チャリン…
『あ!何これ!』
静が倒れたと同時に落としてしまった物。それは…
『可愛いじゃんこのシルバーアクセ!』
隆弘からもらった大事なプレゼントだった。
だ…ダメ……それだけは……
意識が朦朧とするなか、沙耶の服をつかみ取り返そうと抵抗する静。
お願い…返して…
『そんなに大事か?こんなの捨ててやるよ!』
と茂みの中へ投げ捨ててしまった!
飛んでいく大切な宝物をただ目で追うばかり…。やがて闇の中へと消えていった。
『あ…ぁぁぁ!』
『ざまみろバカ!』
『何で!?何でそんな事すんの?』
泣きながら怒りをあらわにする静!沙耶を睨みつけ、叩かれても蹴られても……抵抗し続けた…
『離せよ!』
抵抗する静を強引に突き飛ばす沙耶。
その時だった…
『お前等……何してんだよ!』
皆が一斉に振り向いた先には、怒りに満ち溢れた隆弘が立っていた!