表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/59


いつ渡そうかな…

コートのポケットの中に忍ばせたプレゼント。静から先にプレゼントされ、少しタイミングを逃したまま園内を歩き回っていた。


閉店間近ってのもあり、客足は徐々に減り始めていた…



『何か…ちょっと腹減らね?』


『あ!空いたねぇ…って食べてないじゃん!』



お互いの驚いた表情を見つめ、そして思わず笑い出す。



我慢……忘れていたってのが正しいのだろう。あまりの楽しさに、空腹すら忘れてしまう。そんな時間はあっという間に過ぎていってしまうものだった。




『何か食いに行くかぁ。』


『うん!』



笑顔で頷く静…

そんな嬉しそうな静の顔を見て思わず微笑んでしまう。そしてそのまま遊園地を後にした。




静の手をグイグイ引っ張りながら駅とは違う方向へと歩き出す俺に戸惑いながらも付いてくる静…



『隆弘?駅あっちだよ?』


『……うん』



静は急に立ち止まり駅を指差した!



『あっち!』



静の表情は心なしか少しこわばっていた……気がした。



『え?……どうした?』


『……駅あっちだってぇ!』


『知ってるよ?どしたん?』


『………』




確かに…

先を見れば一目瞭然!このまま行くとネオン輝くホテル街!


俺がラブホにでも連れ込むと想ったのだろう!



『シー……お前バカチンだなぁ!』


『……だってぇ…』



顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。


静とは付き合って一年以上たつものの、体の関係はまるでなかった。男と違って女はかなりの勇気がいると、周りの女友達やクラスメイトから聞いていた。だから……



『じ…じゃぁ何でこっちなん?』



口を尖らせて怒りだす静は……それでも可愛いと想ってしまう自分がいた。



『くくくっ…バイク!』



思わず笑ってしまった。あまりの純粋さと、少ししてやったという満足感が笑いを込み上げさせた。



『笑うなぁ!』


『あぁ、ごめん。でも、スカートじゃなくてよかったな!』



そう言って徐にポケットからバイクの鍵を取り出した。



『って言うか隆弘…バイク乗ってたんだねぇ…』


『んぁ?だって遊ぶの大抵駅前じゃん。使わねぇっしょ?』


『うん…まぁそうだけどぉ…』



何か煮え切らない静の言葉を聞き流し、自然にヘルメットを手渡した。



『…ありがと』


『ん!』



バイクに跨りヘルメットを被る。そして、キーボックスに鍵を入れようと……




チャリン!




鍵を落としてしまった。その鍵には家の鍵とバイクの鍵。そして、シルバークロスが付いていた。


慌てて拾う隆弘の行動は静からしてみれば面白くなかった。彼女でありながらバイクの事すら知らない。ヤケに自然なヘルメットの渡し方。そして……シルバークロスの存在……



『ちょっと走ろうぜ?』


『……うん』




そのクロスは……どうしたの?




白のビッグスクータの後ろ座席にまたがる静の心境は複雑だった。自分で買ったかもしれない……。誰かから貰った?これを聞いてしまったら終わってしまう…。そんな気がして怖くなってしまう……



『さぁ、行こうか!落ちんなよ?』


『……うん。』




不安…



焦り…




色々な事が頭をよぎる…。楽しかったはずのクリスマスは……どこに行ってしまったの?


バイクに乗った静は、不安を感じながら目的地も分からぬまま走り始めた…




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ