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凍り付く様な空間。そんな静まり返った沈黙を破ったのはコマキだった…
『…蒼太?』
うっすら笑みを浮かべ、ソッと俺の手に触れた。
『……やっぱり…分かっちゃうよね…。』
え?何…いきなり…
コマキは蒼太と向き合い、目を見つめながら話し始めた…
『今日…全部話そうって思ってた…。でもね?やっぱり…勇気なくて…。怖かった…。もし、蒼太に嫌われたらどうしようって…そんなん思ったら…笑うしかなかったんだぁ…。』
俺は黙ってコマキの話に耳を傾けていた。
『私…』
私?
『蒼太の事、諦めようって思ってたんだぁ…。』
俺の目を見つめながら話すコマキ…。頑張って笑顔をつくっていても、大きな瞳には今にもこぼれ落ちそうな涙が…
『蒼太の好きな人…綾さんなのかなって…。いつも仲良さそうに話してるし…見ないフリしてても気になっちゃう。クラス違うから……綾さんには勝てないかも…って。』
コマキから見た蒼太と綾の関係はまるで交際している様に見えていた。そんな二人を見ていたコマキには、辛く切ない一時でもあった。そして…
『な、何…』
『蒼太と綾さんがキスしてるの…見ちゃったの…』
え!
……あ!あの時か…。誰もいなかったと……。だから、コマキ泣いてた?遥も言ってたよな…確か…
コマキと屋上で喧嘩っぽく別れた時、落ち込んでた蒼太にソッと口付けを交わした綾。偶然見てしまったコマキは現実を目の当たりにし、泣きながらその場を走り去っていた…
その瞬間、コマキの瞳から大量の涙がこぼれ落ちた。
『信じようって頑張ったんだよ?でも、そんな時…三橋君に告白されて…』
『み…あの三橋?』
『でも…蒼太の事……』
途中で喋るのを止め俯くコマキ。そんなコマキの頭を優しく撫で…
『…それは違うよ?』
俺は優しく微笑み、頭をグシャグシャに撫でた…
『綾はただのクラスメートだろ?それにあれはただの事故……そう、事故だから!それに、コマキの事、嫌いだったら一緒にいないだろ?どれだけの時間、俺の隣で過ごしてたんだよ…。少しは俺の気持ちを知れ!』
蒼太のシャツを握り締め、ピクリともしないコマキ。俯き、声を殺しながら蒼太の答えをジッと待っていた。
『コマキ?』
『……?』
俯いたままピクリとするコマキ。
『俺は…お前の事が………』
そう言ってコマキの顔を強引に俺に向かせた。あまりの行動に驚きの表情を隠せないコマキ。そんなコマキの表情は、我慢出来ず涙でグシャグシャになっていた。
『蒼…』
俺は、コマキが何かを言おうとしている唇にソッとキスをした。そして、強く抱き締め……耳元で静かに囁いた…
『コマキ?一回しか言わねえぞ?』
声を殺しながらも我慢出来ずに流れる涙。そして、蒼太と離れたくない…。コマキの気持ちが抱き締める力の強さを物語っていた。
『…初めて逢った時から…俺は好きだったよ……コマキの事。だから…ずっと一緒にいようね…』
次の瞬間、コマキは思い切り泣いた…。浴衣が鼻水と涙でビショビショになるまで泣き続けた。今まで不安のまま共に過ごしてきた時間、やっと両想いになれた実感を…喜びを全て蒼太にぶつけた…
そんなコマキを強く抱き締め、頭にキスをした。そして、聖夜の最高のプレゼントは…二人に…幸せな時を与えてくれた……
永遠の喜びを…