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帰りたくない…



昼間コマキが言ってた事を思い出す。このエレベーターの中で…



いつも一緒にいるのに、何故か緊張していた。コマキも俯いたまま話す様子はまるでなかった。密室って、誰もがそうなのかな……。そんな事を思いながら最上階へと上がった。





『コマキ?この部屋ってかなり凄いぜ!』


『……うん』


『どうした?』


『…ん?何でもない…』



何か元気ないな…

まぁ、とりあえず部屋に入るか。



最上階に着くとすぐの所にある部屋。慣れた手つきで鍵を開け、部屋の中に入った。




真っ暗だ…




電気もついてない。

カ-テンも閉めたまま。

ありゃ…もしかして、掃除とかは自分でやれって事?


暗くては何も出来ないと、玄関のスイッチに手を伸ばした…


廊下の灯りが頼りだった。その灯りが徐々に暗闇へと…



『ちょっ…コマキ今閉めたら!』



スー……カチャ!



ドアが閉まると同時に後ろから抱き付くコマキ。



『電気……つけないで…蒼太』



小さな声で囁き、静かに…強く抱き締めるコマキ。


俺は動く事が出来なかった。逆に今、動いたら……



頭の中で色々な事が掛け巡っていた。コマキの鼓動。俺は指だけ金縛り。真っ暗な部屋。視力が奪われた時の聴力ってかすかな音も聞き分けらるんだな。今、外は雨が降っている…。そんな事まで分かってしまった。




『このまま…ずっとこうしていたい…』



コマキ…



俺の背中に顔をうずめたまま離れようとしなかった。




徐々に暗闇に目が慣れてきた頃、俺は囁く様に言った…



『コマキ?大丈夫だよ。』


『……ダメ』




俺は優しくコマキの手に触れ…



『壁はもう飽きた…。コマキの顔が…見たいな…』



と囁き、コマキが油断した隙にゆっくりと体を反転させ、壁に寄りかかった。



『な?大丈夫だろ?』


『……うん』


『電気つけても…いい?』


『ダメ!』



まるで子供のワガママだった。何を求めてるのか…サッパリだ!



『……何したら許してくれる??』



子供に優しく話すお兄さんの様だと自分で思ってしまった…



『……キス』




パチ!




『あぁ!つけたぁ!』



コマキは急いで顔を隠し、しゃがみ込んでしまった。



キスと言われて、思わず背中に力が入ってしまった。ちょうどそこにスイッチが……




『ごめん!ってどした?』


『何か…涙出てきちゃって…鼻水も……』



コマキは急いで洗面所に駆け込んだ!


俺も恐る恐る背中を触ってみた……




マジ!




俺のお気に入りのセ-タ-…。涙と鼻水でぐちょぐちょだよぉ…。でも、何で泣いてたんだろ…



俺はセ-タ-を脱ぎ、上半身裸のままリビングへと向かった……




わぁ!





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