6
帰りたくない…
昼間コマキが言ってた事を思い出す。このエレベーターの中で…
いつも一緒にいるのに、何故か緊張していた。コマキも俯いたまま話す様子はまるでなかった。密室って、誰もがそうなのかな……。そんな事を思いながら最上階へと上がった。
『コマキ?この部屋ってかなり凄いぜ!』
『……うん』
『どうした?』
『…ん?何でもない…』
何か元気ないな…
まぁ、とりあえず部屋に入るか。
最上階に着くとすぐの所にある部屋。慣れた手つきで鍵を開け、部屋の中に入った。
真っ暗だ…
電気もついてない。
カ-テンも閉めたまま。
ありゃ…もしかして、掃除とかは自分でやれって事?
暗くては何も出来ないと、玄関のスイッチに手を伸ばした…
廊下の灯りが頼りだった。その灯りが徐々に暗闇へと…
『ちょっ…コマキ今閉めたら!』
スー……カチャ!
ドアが閉まると同時に後ろから抱き付くコマキ。
『電気……つけないで…蒼太』
小さな声で囁き、静かに…強く抱き締めるコマキ。
俺は動く事が出来なかった。逆に今、動いたら……
頭の中で色々な事が掛け巡っていた。コマキの鼓動。俺は指だけ金縛り。真っ暗な部屋。視力が奪われた時の聴力ってかすかな音も聞き分けらるんだな。今、外は雨が降っている…。そんな事まで分かってしまった。
『このまま…ずっとこうしていたい…』
コマキ…
俺の背中に顔をうずめたまま離れようとしなかった。
徐々に暗闇に目が慣れてきた頃、俺は囁く様に言った…
『コマキ?大丈夫だよ。』
『……ダメ』
俺は優しくコマキの手に触れ…
『壁はもう飽きた…。コマキの顔が…見たいな…』
と囁き、コマキが油断した隙にゆっくりと体を反転させ、壁に寄りかかった。
『な?大丈夫だろ?』
『……うん』
『電気つけても…いい?』
『ダメ!』
まるで子供のワガママだった。何を求めてるのか…サッパリだ!
『……何したら許してくれる??』
子供に優しく話すお兄さんの様だと自分で思ってしまった…
『……キス』
パチ!
『あぁ!つけたぁ!』
コマキは急いで顔を隠し、しゃがみ込んでしまった。
キスと言われて、思わず背中に力が入ってしまった。ちょうどそこにスイッチが……
『ごめん!ってどした?』
『何か…涙出てきちゃって…鼻水も……』
コマキは急いで洗面所に駆け込んだ!
俺も恐る恐る背中を触ってみた……
マジ!
俺のお気に入りのセ-タ-…。涙と鼻水でぐちょぐちょだよぉ…。でも、何で泣いてたんだろ…
俺はセ-タ-を脱ぎ、上半身裸のままリビングへと向かった……
わぁ!