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いつもより人気のない電車。窓の外を見ると、沢山の車が列をつくって並んでいた…


休みの日の電車って空いてるんだな…



コマキと四人用のボックス席に二人で座り、くだらない話をしながらそんな事を考えていた。



途中、売店でお菓子とジュ-スを買い、違う電車に乗り換えた。



『ねぇ、蒼太?』


『ん?』


『……何でもない。』



コマキには何処に行くのかは伝えていなかった。多分、少し不安なのかな…


コマキの驚く顔が見たくて、最高のサプライズを準備していた。


外の景色は地元の景色から都会へ。都会から自然が豊富な景色へと変わっていった。







『やっと着いたぁ!』


俺は電車を降り、両手を上げ背伸びした。



『え?ここは何処?』



少し動揺するコマキ。



『ん?俺の親父の故郷なんよ!』


『え?……まだ早くない?』


『はい?何意味わかんねえ事言ってんだよ!』



コマキが驚くのも分かる気がする。山の中にポツンと建つ無人駅。こんな所に駅があるの?って思わせるくらい静かな所にあった。線路沿いにはフェンスもなく、今にも動物が出てきそうな雰囲気。ホントの田舎って感じ。子供の頃、親父と良く来たな。今も昔も変わらなかった。



俺は無人の改札を抜け、駅の外に出た。




『え!蒼太、切符は?』


『あぁ、その箱に入れときゃいいんよ!』



戸惑いながらも改札をくぐるコマキ。そして駅の外に出ると…



『わぁ〜!凄いねぇ、なにもない!』


『でしょ?でも好きな場所なんだ!』



地元も田舎だけど、ここはもっと田舎だ!まず、家が少ない!車もたまに軽トラが走ってるくらいでほとんど見かける事はない!





『蒼太?何処行くの?迷子とかないよね…』



不安そうに問い掛けるコマキ。



『大丈夫だよ!俺の地元みたいなもんだから!ほら、あそこだよ!』



俺は笑顔で指差した。



『え!』



コマキは又しても驚いた顔をした。俺が指差した先に見える物は、大きな建物だった。山の上に建つ大きな旅館。



『親父の兄貴が経営してる旅館だよ!すげぇっしょ!』


『めちゃ凄くない?っていうか……泊まるん?』



またしても驚いた顔を……。



『はぁ?コマキ、泊まりたい?泊まるんなら泊まれるけど。』


『泊まる泊まる言わないでよ!』


『あははっ!何、照れてんだよ!可愛いですねぇ!』とちゃかし、急いで逃げる様に走った。



『もぉ!蒼太のバカ!』



顔を真っ赤にし、俺を追い掛けるコマキ。結局捕まり、荷物を持たされた…







田舎道を二人で歩いていると、畑の畦道で休憩しているお婆ちゃんが俺達を見つめていた。



『こんにちゎ。』



コマキはニコニコとお婆ちゃんに話し掛けた。



『こんにちは。』



お婆ちゃんも優しそうな笑顔で挨拶。


挨拶されたのが嬉しかったのか、お婆ちゃんの横にしゃがみ込みお喋りし始めた…



『大変ですねぇ。』


『いつもしてるから平気だよぉ。テレビに出てる人かい?』



コマキは目をまん丸にし、俺に振り返った。そして…



『ち、違いますよぉ!遊びに来ました。』


『そうかい、べっぴんさんだったもんで。何もない所だけどゆっくりしてってね。』


『はぃ!お婆ちゃんもお体気を付けて下さいね。』




コマキはお婆ちゃんに手を振り、笑みを浮かべながら帰ってきた。



『お婆ちゃん好きぃ。』



幸せそうなコマキ。



『コマキ…お婆ちゃん子なんだな!』


『うん!』




相当嬉しかったのか、会うお爺ちゃんお婆ちゃんに声を掛けるコマキ。その度に上機嫌になっていった。



意外な一面を見せたコマキ。今まで一緒にいて初めて知ったコマキの素顔。連れてきて本当に良かった。心底思いながら先に進んだ。



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