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いつもの駅に10時。俺はコマキにそう告げた!
絶対に来てない!
こんな早くに来る訳がない!
そんな事を思い、一人勝ち誇っていた。
鼻歌まじりで…心なしかリズミカル。軽い足取りで駅に向かった。
9:30…絶対来てない!
コマキより早く行って『わっ!』って脅かすんだ!
いつも待たせたり、ギリギリだったり。自分でもわかっていた。これじゃダメなんだと…
今日から俺は変わります!
空に手をかざし、太陽を掴む様に拳を握り締めた。思いっきり空気を吸い込み…
おし!
そして、再びリズム良く歩き始めた。
コマキ…どんな服装で来るのかなぁ…
やべぇ…顔が緩む…
そうこうしている内に、駅が見えてきた。
あれ?
駅の改札口付近で小さな子供らしき人が立っていた…
コマキ?…30分前だぞ?ありえないよ…。近づくにつれ、女性である事は確かだ!
歩きながら目を細め、女性を見つめる。
………コマキ!
コマキは30分前から待っていた。改札口前で待っていた。時に腕時計を見たり、ブリキの兵隊みたいに足の関節を曲げずに歩いてみたり…
そして、俺に気付くと大きく手を振り手招き…
『そ〜た〜!』
コマキ……早すぎるよ。俺の計画が…
まぁ、それはさておき……
『よっ!すっげぇ早くない?』
『何か、いてもたってもいられなくなっちゃって……って、蒼太がこんな早いなんて……雨降るかも。』と笑顔のコマキ。
俺は『ちぇっ!』と笑い、コマキの頭を撫でた。
可愛い笑顔のコマキ。いつも制服姿ばっか見ていた俺は久々のデ-トってのもあり、なんだか新鮮な気持ちでいた。
『蒼太、どう?』
『……え?』
『え?じゃないでしょ?』と俺の前で両手を広げ、クルッと廻って見せた。
白いタ-トルネックのセ-タ-にベ-ジュとホワイトの長めのマフラ-。白と黒のチェック柄スカ-トに黒いロングブ-ツ。少し甘い香りを漂わせながら笑顔で見つめるコマキ…
凄く可愛い……
『……。』
今日はキメるって決めただろ!蒼太!
『……可愛いな!』
俺はさり気なく呟き、周りを見回した。
『え?なに?』
本当に聞こえてなかった表情をするコマキ。
『え?……行くぞ!』
『なぁに?今、何て言ったの?そぉたぁ!』
甘えた声を出すコマキ。そして、俺の腕をほぼ強引に組み、引っ張る様に改札口をくぐった…
嬉しそうに、まるで子供の様に喜ぶコマキ。そんなコマキを見ていて幸せな気持ちでいっぱいになった。
今日は俺がリ-ドするんだ!
コマキの勢いに負けず、逆に引っ張る様に電車に乗り込んだ。
今までにないぐらいの積極性。強引な俺に笑顔で付いてくるコマキが愛おしく思えた…