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帰りの電車。
隆弘は俺の横に座り、窓の外を眺めていた。
ピピピッピピピッ…
三三七拍子かよ…
隆弘は徐に携帯を取り出した。
『ん?』
やる気の無さそうな返事。俺は黙って隆弘の会話を聞いていた。
『だってしょんないっしょ?』
何がしょうがないのかわからない。
でも表情を見てれば相手が誰なのか…検討はつく。
最初はムスッとしていた隆弘。話してる内に笑顔に……
幸せそうでなによりです…
あれ…話終わった。顔が緩んでるぞ!
話が終わったと同時に地元の駅に着いた。俺達は荷物を担ぎ降りる事に……
『な!言っただろ?』
電車を出た瞬間ハシャギ出す隆弘。
歩きながら話す事に…
『はぁ?意味わかんねえよ!』』
『女に簡単に頭下げんなって事!』
あぁ…
その割には随分な喜びようで!
改札を抜け、歩き慣れた道を歩く…
『仲直りしたん?』
『だってしょうがねえだろ?泣いて謝るんだから!』
おぃおぃ…明日言っといてやるから…
『そ、そっか…良かったな!』
俺が原因で喧嘩になった二人。喧嘩はよくするって言っても、あまり気持ちの良いものではなかった。仲が戻って良かった。
何故か隆弘の足取りがヤケに軽い…
『蒼太…わりぃ、これから仲直りデ-トして来るわ!帰り気ぃ付けてな!』
『おい!』
『あ!蒼太に言いたい事があったんだ!』
『ん?』
さっきまでヘラヘラしていた隆弘…。急に真剣な表情に!
『お前、最近すっげぇ腑抜けだよな!いい加減にしとけよ?昔のお前に早く戻れや!』
隆弘は話が終わると同時に拳を振りかざし……
ゴッ…
隆弘の拳は俺の右頬に命中!
転びはしないまでも踏ん張るので精一杯…
んの野郎……な!
『じゃなぁ!蒼太なら余裕だぞ!』
と捨て台詞を吐き、俺に指を差しながら笑い、逃げる様に走り去った…
あの野郎…痛っ…
久々に隆弘の拳をくらったな。アイツのパンチが一番効くぜ!憎しみとか悪意とか、そんなんじゃない。暖かな…心のこもった拳。隆弘なりの愛情表現だ。でも、もうちょっとスマ-トに行こうぜ…
お陰で目が覚めたよ…。