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教室に入るといつもの様に騒がしく、アチコチからマジナイの話題が飛び交っていた。
俺は、荷物を担ぎながら席に向かった。すると、席には綾が座っていた。
『おぅ、おはよ!』
ドカッと荷物を机に置き、綾に話し掛ける。
『おはょ、蒼太…朝見た?』
『マジナイだろ?すげえなぁ!』
『はぃ?違くてぇ……』
あれ?俺はてっきり朝の特集の話だとばかり思っていた。
『なになに!深刻系?』
そこに隆弘が交じってきた。
『え?……春菜が見たんだけどぉ…春菜!』
春菜を呼ぶ綾。場所を教室の隅に変え話し始めた。
『今日の朝ねぇ、なんかぁ渡辺と三橋が仲良さげに歩きながら話してんの見たんよぉ!』
春菜は何故か楽しそうに話していた。
『……んぁ?そうなんだ…』
まぁ、俺には関係ない話だよな!
『渡辺ってどの渡辺だよ!』
隆弘の雰囲気が急変した…
『えぇ?隆弘…何?怒んないでよぉ!なんか怖くない?』
『いいから言えって!』
おぃ…隆弘…落ち着きなさい!そんな感情剥き出しにしたら春菜…可哀想でしょ?
渡辺って名字なんていくらでもいる。そんな事を思い、余裕かましていた…
『ん…隣のクラスだったかな?コマキちゃんだよ!三橋も同じクラスで結構カッコイいんよ!』
……マジ!
『何かぁ、見ててむっちゃいいなぁって…。あれ、隆弘?』
隆弘は何も言わず教室を飛び出した!
『隆弘!』
俺も後を追う様に走り出した…
向かった先は…隣!
『おい!三橋いるか?』
Bクラスで怒鳴り散らす隆弘。
『隆弘!どうしたん?』
慌てて止めに入る静。いきなりの出来事で少しアタフタしていた。
『シ-はどいてろ!』
静を強引に引っ張り、教室にいる一人一人を見回した。
俺が来た時には、クラス中の生徒が隆弘を見ていた…
『蒼太!隆弘止めてよ!』
静の慌てぶり…普通じゃない!
『隆弘、いいから…』
『良かねえだろが!かなりムカつくぜ!三橋出てこい!』
このままでは取り返しつかない事になる…
俺は隆弘の腕を掴み…
『隆弘!行くぞ…』
俺は静に呟いた。
隆弘と気持ちは同じだった。ただ…こんな事をしても、何も解決はしない…
隆弘は俺の気持ちを察したのか、ため息を吐き落ち着きを取り戻した。
『三橋って…どれ?』
睨む様に一人一人見る隆弘。
『お前に用があんだよ!必ず探し出すからな!』
隆弘は、そう言い残し教室を出て行った。
教室に戻ると、さっきまで騒がしかった教室が静まり返っていた。
隆弘は席に着き、外を眺めていた。
俺も隆弘の横に立ち…
『隆弘…ごめんな?』
俺の為に敢えて悪者になった隆弘。そんな隆弘に謝るしかなかった…
『三橋って奴、ゆるさねぇから!』
『……隆弘?もういいって。ホントいいから…』
『……蒼太はそれでいいんか?』
『……。』
『後悔するぞ…』
隆弘の行動…とても良い事とは思えない。でも、仲間を思う気持ちからくる怒り。
俺は、ヤバいって思ったけど嬉しくも思えた。
ただ、気になったのはさっき教室にはコマキの姿は……なかった。